鉱物の顕微鏡写真 85
―ショルツ石―
産地:Reaphook Hill, Martins Well,South Flinders renges,Flinders range,
South Australia, Australia.(非売品)
Schorzite ショルツ石
[組成]:CaZn2[PO4]2・2H2O
[結晶]:直方晶系.細長い板柱状,柱面に平行な条線が発達することがある.
ほか,板柱状結晶が複雑に絡み合った粒状や,放射状集合になる.
[色]:無色・白色・灰色・淡黄色.
[光沢]:ガラス光沢~亜ガラス光沢.
[モース硬度]:3~3.5
[比重]:3.11~3.13
[条痕]:白色.
次は燐酸塩鉱物のショルツ石にしました.もともと二次鉱物の系統はやっておらず,特にズリでできるような鉱物は嫌いでしたので,疎遠になっていました.
燐酸塩鉱物の類は初成もあるので海外のも含めて蒐めていました.上の標本はそういうので触手に引っかかってきて購入した標本です.
褐鉄鉱中に白色の放射状が目につき,はじめは異極鉱かと思いました.この放射状になった針状結晶がショルツ石でした.似た鉱物にパラショルツ石があり,こちらは本邦でも産出の記載がありました.17年くらい前に滋賀県の灰山の酸化帯にレンズ状で挟まっている,非酸化の初成鉱物からなる集合を切る粘土脈に沿って,白色鱗片状のパラショルツ石を見ました.褐鉄鉱が腐って粘土のようになった部分を洗うと六角板状のような頭が少しルーペで確認できる程度で,永らく黄銅鉱の標本にしていました.あとでこの産地の精通している知人に,この鉱物がパラショルツ石であることを指摘してくれるまでわかりませんでした.割と珍しいとのことで,名称を変更して持っていました.今は手元にありません.
上の標本は10年くらい前の大阪ショーで購入しました.亜鉛を多く含む堆積物中だとか.褐色の部分の多くは褐鉄鉱とのことです.
以下,顕微鏡下での観察です.もともと褐鉄鉱の粉末が全体にこびりついたような石でしたので,表面を洗ってから撮影しました.
白色放射状部および針状部がショルツ石です.茶褐色部は褐鉄鉱.黒色部は亜鉛の二酸化マンガンの鉱物,カルコファン鉱(Chalcophanite)とのことです.
他の部分の母岩の拡大です.
黒色部はカルコファン鉱.
針状結晶が放射状集合になった部分の拡大です.一部の柱面に無色粒状のコリンス石(Collinsite)が伴っていました.かなり小さいです.
中央やや上の方に緑色がかった繊維状の鉱物があって,フォスフォフィライトかと思って,さらに拡大して観察しましたが,小さすぎて判別できませんでした.
亜鉛と鉄の燐酸塩なのであってもおかしくないだろう.
結晶の頭が確認できる空隙を探して撮影しました.無色の束沸石ににた頭です.
以下はそのほかの鉱物です.
褐色部に感じの異なる頭を持つ鉱物の集合があって,いろいろ検索をかけていると,パラホープ石がヒットしました.同じ亜鉛の燐酸塩鉱物です.
二酸化マンガンの被膜の上に濃緑色の半球状の鉱物が付いていました.産状からロックブリッジ石かと思われますが,この鉱物もかなり小さいので,~様鉱物とまでしか判断できませんでした.
ほかにショルツ石の結晶の上に,小汚い淡赤褐色の細かい針状(見た目は塊状)のメタスウィッツァー石(Meta-switzerite)があるそうですが,褐鉄鉱の粉状のものもあるため区別できませんでした.