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いくつかの研磨した石197

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いくつかの研磨した石197

 大阪府豊能郡能勢町倉垣和田区 小和田鉱山のテフロ橄欖石―マンガンスピネルからなるマンガン鉱を一面研磨しました.現場は大阪府の北部,京都府との県境にある小和田山(標高611m)から東西に延びる尾根を西に進み,南下した支尾根にある変成マンガン鉱床です.戦時中に操業されていたという.鉱床のすぐ北側に剣尾花崗岩が接していて著しい熱変成を受けています.

 当地は12年くらい前に当方が再発見しました.袂にある神社の鳥居の横に二酸化マンガンの染みがあり,谷を詰めていくと神社がありました.二酸化の染みはここで終わっていましたが,坑口のようなものは無く,北に隣接する石切場のようなところは,花崗岩でした.石切場のような場所から北に張り出した尾根付近まで回り込んでみたところ,急な尾根にテフロ橄欖石やばら輝石を含む石が引っかかっていました.かなり急勾配な尾根でしたが,樹木の枝につかまりながら登って行くと,石垣が見えその上がズリでした.坑口は上下に2箇所,北の延長につついたような跡が2箇所ありました.上の標本はその際にサンプリングした石の一部です.

 

 それから10年以上経って,先日に滝巡りしたついでにカメラを持って坑口を見に行きました.今回も支尾根の突端から尾根に取付いて力任せに登って行きました.何度も「こんなに上だったかな~」なんてつぶやきながら高度を稼いでいきました.対面する釈迦岳の山頂部が見え隠れするころになって,ようやく見覚えのある石垣のところまで来ました.石垣の部分は登りにくいでしたが,木々につかまって何とか越えました.

 

 随分行っていない現場でしたが,ハンマーの跡がたくさんありました.目的の坑口は尾根を少し回り込んだところにありました.

小和田鉱山の坑口.以前はもっと大きく口を開けていましたが,一昨年の台風で崩土がでたのか,今回は見えませんでした.

 

ズリ.

 

貯鉱の跡.

 

石垣があったところ.ハンマーを持っていなかったので,写真だけ撮って下山しました.

 

 一枚目の石は前述通り12年くらい前にサンプリングした石で,大きさが中途半端で,成形すると小さくなってしまうため,割らずに残していた石です.成形していないため,表面が全て二酸化マンガンに覆われていました.研磨し易そうな面を選んで研磨しました.

 

 

(研磨)基本的には全てテフロ橄欖石だと思っていました.手に持った時に明らかにばら輝石からなる集合より重く感じました.予想が当たるかと思って磨り始めました.はじめは表面の二酸化マンガンが削れて,褐黒色―黒色の粉末が出ていました.しばらくすると灰白色―灰色に変わってきましたので,確認したところ予想通りテフロ橄欖石でした.テフロ橄欖石に良く伴われるばら輝石などのマンガン鉱物は全く入っていない石でした.この手の石を磨っていると硫黄の臭いが多少はするのですが,今回はそういう変な臭いはしませんでした.中断して,少しルーペで確認したところテフロ橄欖石の粒がルーペで確認でき,その粒が比較的揃っている感じがしました.あまりほかの鉱物を混入していないので比較的楽に磨り上げることができました.

 仕上げは当初,青砥でしていたのですが思ったより光沢が出てくれず,いつも刃物用に使用している黄色の砥石に替えて磨ってみました.それでも光沢が出ないため,逆に堅い塊状チャートで磨ってみたところ,光沢が出てくれました.前述したマンガンスピネルは途中経過でルーペで観察した時に,黒色―暗褐色粒状で,磁石が多少引き寄せられましたので,ヤコブス鉱と思っていました.ヤコブス鉱と思っていた部分を仕上げ後に,横から強い光を当てて観察したところ濃赤褐色半透明でしたので,マンガンスピネルに同定しました.

 

 

 

(以下,顕微鏡下での観察です)

 

 

 

 

灰緑色部がテフロ橄欖石です.白色脈状部は菱マンガン鉱でした.テフロ橄欖石中に帯赤褐色の粒状の鉱物が入っていて,アレガニー石かと思いましたが,明らかに褐色味が強く,もしかしたら園石かもしれません.

 

粒状の外観が観察できるテフロ橄欖石です.

 

マンガンスピネルの拡大写真です.一部に帯赤褐色半透明の部分があります.共存する黄色部は検討したところ満礬石榴石でした.

 

 

 顕微鏡観察をしていたところ,一つ不明鉱物が出てきました.

 不明鉱物.顕微鏡で最大まで倍率を上げたうえ,カメラのズーム機能で拡大して撮影しました.白っぽく見えるのはテフロ橄欖石.中心のテフロ橄欖石の内部に鮮やかな緑色板状の鉱物が入っていました.顕微鏡下で肉眼で見たときに鮮緑色ガラス光沢を呈し板状であることが,判ったため急遽撮影しました.重晶石かもしれませんが,それより明らかに光沢が強く,色彩もくすんでいなかったので,ほかの鉱物かもしれません.

 

 

 当地で確認した鉱物は,黄鉄鉱・磁硫鉄鉱・輝コバルト鉱・紅砒ニッケル鉱・閃マンガン鉱・石英・アフテンスク鉱・「二酸化マンガン鉱」・ヤコブス鉱・マンガンスピネル・菱マンガン鉱・テフロ橄欖石・満礬石榴石・アレガニー石・ばら輝石・パイロクスマンガン石・ネオトス石など.

 

 

 

 

 

 

おしらせ

 

2020年2月11日(祝)は営業しています.

 

 

 

 


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