いくつかの研磨した石196
以前の191で紹介した,大黒鉱山の南鉱床の珪岩とマンガン鉱の境界付近を一面研磨しました.北鉱床は川の横で,南鉱床は府道の横,路面から数メートル上の法面に開いていました.鉱石は道の溝のようになったところに少しありましたが,いずれも低品位でした.手の届く範囲で坑道の下あたりに挟まっている,ずっしりとした重いものを選んでサンプリングしたところ,上のサンプルが得られました.鉱体の端っこのような石ですが,コントラストが良く,これを研磨したらいい感じになると思って研磨しました.
サンプルの表面です.やや結晶質で色の濃いパイロクスマンガン石が珪岩中に入っています.
パイロクスマンガン石の部分の拡大です.劈開が確認できました.
(研磨)珪岩が硬いのでなかなか先に進めないだろうと予想して磨り始めました.予想に反して比較的硬度の低い炭マンを挟んでいたので,早く磨り上がりました.仕上げは青砥で充分光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
サンプルのほぼ中央にある角礫状のレンズです.酸で発泡するので菱マンガン鉱のようです.接するピンク色はパイロクスマンガン石.淡いあずき色部はアレガニー石.灰緑色部はテフロ橄欖石です.
もう一つレンズ状の挟みがあって,赤褐色で光沢の鈍い集合で,アレガニー石の色の濃いものかもしれませんが,同定できませんでした.黒色部は母岩の珪岩.ピンク色部はパイロクスマンガン石.淡紅―淡褐灰色は菱マンガン鉱.灰緑色はテフロ橄欖石.
パイロクスマンガン石の脈の部分の拡大写真です.パイロクスマンガン石の脈の中にもレンズ状のアレガニー石様鉱物の集合を挟んでいました.
黄白色のレンズの周囲を撮影したものです.肉眼的に硫黄の量が少ないと思っていましたが,中央よりやや上の黒点を拡大すると黄鉄鉱が入っていました.少ないとは言え,硫黄分のある鉱石の一部のようです.黄灰色―淡褐色―淡桃色は菱マンガン鉱,灰緑色はテフロ橄欖石.ピンク色はパイロクスマンガン石.
母岩の珪岩との境界を撮影しました.珪岩とパイロクスマンガン石との境界から少し珪岩に入ったところに,暗灰色の石英脈が入っているようで,黒色の亜金属光沢を呈する石墨(非晶質の炭素物質あるいは準石墨)が脈に沿って点々と入っていました.
道から近い所為か鉱石があまり無く,全体像が判りませんでした.もっと硫黄分の多い鉱石も現地で見ているのですが,磁硫鉄鉱が多く磨ってみようとは思いませんでした.