鉱物の顕微鏡写真31 ―褐鉛鉱―
産地:Taoz, Er Rachidia province, Draa-Tafilet region, Morocco.
(購入品・非売品)
Vanadinite 褐鉛鉱(ヴァナジン鉛鉱)
組成:Pb5[Cl|(VO4)3] 六方晶系
結晶は六角柱状・六角短柱状・板状.皮膜状や球状・針状集
合体がある.結晶は脆い.
色:赤橙色・赤色・赤褐色・黄褐色・黄灰色・黄色.
光沢:樹脂光沢―金剛光沢.
モース硬度:3(前後)
比重:6.57-6.88
劈開:無し.
条痕:淡黄色・白色.
次は褐鉛鉱にしました.少し前に北関東あたりから立派な褐鉛鉱
の結晶の産出がありました.燐灰石類の一つで,緑鉛鉱のP(燐)を
ヴァナジウム(V)に置き換えたもので,随分前から上の写真のような
立派な結晶が出回っています.海外産ではモロッコ産のものがよく
見られ,非常に安価なものから高価なものまで取引されていました.
図鑑などでよく紹介されている二酸化マンガンの上に鮮やかな赤色
が印象的で今回もその手の標本を使用しました.
以下,顕微鏡写真.
上の写真の拡大写真.
上の写真の標本の別の部位についている六角短柱状の
褐鉛鉱.黒色部は二酸化マンガンの鉱物.
こちらも同じ標本の別の部位についていたもの.六角柱状の
結晶がよく観察できます.
結晶の色は複数あり,下の写真の標本は黄色柱状をしています.
黄色柱状の結晶.顕微鏡で最大まで拡大した上,カメラの
ズームを駆使して撮影しました.かなり小さなものです.
黄色部が褐鉛鉱.こちらは多少大きいので,顕微鏡の拡大だけ
で撮影しています.黒色の鉱物はKentrolite(ケントロライト)という
鉛(Pb)とマンガン(Mn)の珪酸塩鉱物.ほかに細かい方解石の結晶
を伴っています.
(産地):Big Chief mine, Percha Creek, Hillsboro district,
Siella Co., New Mexico, USA.(購入品・非売品)
次に国産品です.前述したとおり少し前に北関東より立派な
結晶が多産しましたが,筆者は手持ちの標本が無く,以前から探し
ていましたが,今回は色の無い標本を掲載します.
山口県山口市日高鉱山の褐鉛鉱です.(購入品・非売品) もともと
日本産のものはこのような色彩のものが出回っていました.僅かに
褐色味づいた灰色ないし白色粒状のもので,六角柱状をなすものも
ありましたが,輪郭はややぼやけてルーズな結晶でした.鉱床は
銅や鉛亜鉛を稼業した鉱脈鉱床で,鉱山が探鉱をしていた一時期に
産したそうです.褐鉛鉱が乗っている黄色―黄緑色部は同じヴァナジ
ウム鉱物のデクロアゾー石(Descloizite)で,銅置換体のモットラム石
に非常によく似ています.暗色の母岩は珪化した凝灰岩のようです.
こちらも日高鉱山の褐鉛鉱によく似た産状の石です.産地は
福岡県宗像市山田の砕石場だそうです.(購入品・非売品)
こちらの結晶のほうがいくらかシャープです.長さはせいぜい
1~1.5㎜で顕微鏡で拡大しています.下地の黄色球状ないし
皮膜状部は日高鉱山と同じデクロアゾー石です.
こちらは繊維状―針状結晶の集合体です.(恵与品で非売品)
舞鶴帯の斑糲岩・橄欖岩・花崗岩などがみられる複合火成岩体
の近くで産したものです.もともと大山鉱山と呼ばれる銅・亜鉛
鉱床でしたが,そのあとに採石場になりました.採石場を止めた
あとも鉱山のシックナーの残骸が府道の脇に残っていました.
上の写真の石は採石場の入口付近にあった斑糲岩から産した
ものだそうです.俄かに黄色味がある白色繊維状の集合体です.
当地ではほかに辰砂や硫砒鉄鉱・スコロド石・砒灰鉄石などを
産しました.
おしらせ
最近の店舗内商品の入荷をしました.
主に岩石標本で,アプライト・石灰岩・ホルンフェルスなどを追加しました.