鉱物の顕微鏡写真１９ ―閃マンガン鉱―
別アングルから撮影．(非売品)
産地：Uchucchacua mine, Lima dept., Peru.（H社で購入）
Alabandite 閃マンガン鉱
組成：MnS 立方晶系
色：鋼灰色・暗鋼色・黒灰色・暗緑色・灰緑色．亜金属光沢．
空気中で酸化しただちに褐色および暗褐色に錆びる．
形態：自形結晶は八面体．まれに立方体になる．通常見る
形態は塊状および細かい粒状．
条痕：帯緑褐色・暗褐色．
モース硬度：3.5～4
比重：4.05
劈開：３方向に完全．
同質異像鉱物：ラムベルグ鉱
希塩酸で分解．ハンマーの打撃で鼻に突く硫化水素を
発生させる．
変成マンガン鉱床でよく見かける鉱物ですが，塊状や
粒状のことが多く，結晶はほとんど観察できまんでした．
今回の大阪ショーで肉眼で鑑賞に堪える標本を入手
することができました．購買したH社では大きな単体の結晶
を勧められましたが，母岩についていなかったため，こちら
の母岩についている標本を求めました．
上の写真の顕微鏡写真です．
熱水鉱脈鉱床の菱マンガン鉱に伴われる閃マンガン鉱です．
八面体の結晶がよく観察できます．結晶面の表面はやや錆
て青色っぽい色に変色しています．白色部は菱マンガン鉱です．
こちらは結晶群のついている部分とは違う部分を撮影しました．
黒色部が閃マンガン鉱で，淡桃色部が菱マンガン鉱．写真
中央部に映っている淡黄色半透明の部分が，ラベルにホタル石
と記載があり，破面を顕微鏡で観察したところ，顕著な劈開があ
ったことと，紫外線で蛍光したことからホタル石のようです．
本邦の野外でよく見かける産状は，熱変成を受けた層状マンガン
鉱床に於いて，テフロ橄欖石―ばら輝石からなる低品位鉱石のも
のです．灰緑色帯油脂亜ガラス光沢のテフロ橄欖石中に，黒色の
細かい粒があったら閃マンガン鉱としておいてよさそうです．
いつも通り本邦の標本もいくつか挙げておきます．
北海道八雲町館平鉱床の閃マンガン鉱．(OH社で購入)(非売品)
筆者が所持している閃マンガン鉱で最も北の標本です．
稲倉石鉱山や然別鉱山・八雲鉱山の菱マンガン鉱に伴う
ものが有名ですが，鉱脈鉱床の脈石に伴われるもので，
結晶もあまり示さないことが多く，今回はパスしました．
写真中央の斜めに横切る黒色の脈が閃マンガン鉱です．
右端のピンク色はばら輝石，そのほかの灰緑色部は
テフロ橄欖石です．
奈良県吉野郡川上村入之波 引水鉱山の閃マンガン鉱．
8年くらい前の新春交流会で購入．顕微鏡写真．(非売品)
秩父帯の堆積岩中の層状マンガン鉱床より．どこかに熱源が
あるらしく熱変成を受けています．黒色粒状の部分が閃マンガ
ン鉱です．母岩のピンク色部はやや結晶質なばら輝石です．
大阪府豊能郡能勢町石堂鉱山の閃マンガン鉱です．
石堂鉱山を再発見した時にサンプル採取した標本です．
(非売品)
何年か前に再発見した鉱山のものです．正長石と高温
石英の分離結晶で有名な能勢町長谷に近い現場で，付近
は有馬層群の流紋岩および流紋岩質凝灰岩が分布してい
ます．鉱床は流紋岩体に残丘として乗っかったような珪岩
岩体に胚胎するマンガン鉱床．
灰緑色部が閃マンガン鉱で，粒子が細かくなるとこのような
色になるようで，少量のヤコブス鉱を伴っていました．
赤褐色部がヤコブス鉱．ピンク色部がばら輝石です．
鳥取県鳥取市用瀬町大村鉱山本坑の閃マンガン鉱です．
どこかの売り立て会でサンプル購入したものです．(非売品)
鳥取市の南部に少しだけ堆積岩が分布しています．この堆積岩
中にたくさんのマンガン鉱床がありました．この標本はそのうちの
大村鉱山からのものです．
母岩はテフロ橄欖石で，鉱染するように微粒の閃マンガン鉱を
含んでいます．写真は粒の荒そうな部分を探して顕微鏡下で撮影
しました．
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