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美山にて2

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 先月積雪のため行くことを断念した、K鉱山に行くことにした。

 平日にもかかわらずたくさんの観光客が来ていた「かやぶきの里」を経て、

 由良川源流域に向かう。道沿いに見られる無名滝を見ながら奥へ進むと

 谷の入口に着いた。

  長靴に履き替えて、谷に入る。著しく蛇行した淵になっていて、足場は僅かに15cm程度の杣道を辿る。


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入口に位置する淵。上に斜瀑があり、沢登りには面白そうだが、目的が違うので今回は落ちないよう再三の注意を払って無事通過。写真は通過後滝の上から撮影。


 谷に入って一つ目の沢の入口で小さな鉱石一つを拾う。一部にぶどう状の集合が見られる二酸化マンガンだった。二つ目の沢に木馬道の跡がありそうなので、淵を巻こうと試したが細い杣道は淵のところで途切れていた。

 仕方なく、一つ目の沢から詰めていく。しばらくは真っ白に近い層状チャート礫が目立つ。斜面に幾つかマンガン鉱石があり、今回はそれを拾うだけにした。相応の装備が必要と思い鉱山がありそうということだけ確認できたので、

今回はここで中止した。


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斜面で拾った鉱石。割った当初はもう少し淡色でピンク色に近かったが、家に帰るとこのような褐色に近い色に変色していた。パイロクロアイトだったようだ。これに含まれる緑色部は重晶石。


 下流の川原に転がっていると思い、何度か下りられるところを探して下りてみたが、鉱石らしいものはなかった。

 また、前回見た頁岩中の黄鉄鉱ノジュールも上流にあたる探した川原にはみられなかった。


 この日は午後から出てきていたので、時間に余裕が無く帰りもって産地に寄ることにした。佐々里峠経由で黒田に抜ける。峠の陰地にはまだ積雪が残っていた。周山から佐々江方面に採って、久しぶりのJ鉱山に行った。

 道路横付けというのがうれしい鉱山で、約40mにわたってズリが道路沿いにある。林道奥の少し広くなったところで転回し、退避場所に停めた。

 ズリへはいつの間にか杣道が出来ていて、今回はこれを利用。かつては軌道があったズリだが、夏季にはヤブ化する。


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軌道のレール。宙に浮いているが、かつてはこの先までズリがあった。大半のズリは崩れて向いの杉林の中などに鉱石が点々としている。ここの犬釘を幾つか持っているが、全て表面が錆びている。幾つか刺さったままのものが見られるが、とても抜けそうにない。上の坑口のところでも索道に使用した滑車の残骸が残っていて、収集しようかと何度か試みたが、見た目以上に重くズリが急なので止めておいた。おそらくまだ有ると思われる。


 北から坑口が幾つかありその中で一番大きな坑口を覗いてみた。掘り下った坑口のようだが、半分以上崩れていて中の様子がよく分からない。下から抜いているが下の坑口はコンクリで塞がれている。

 この坑口自体の鉱石は坑の周りにたくさん落ちているが、いずれも二酸化マンガンばかりで、採集意欲がそそらないものばかりだった。北の坑口から開いている坑口までは何故か二酸化マンガンしか落ちていない。


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林道沿いの一番大きな坑口。フラッシュを焚いて撮ってみたが奥までよく分からない。この上にも小さな狸掘りの坑口があり、こちらも掘り下りのようだった。写真手前の崩土の中に幾つか品位の悪そうな二酸化マンガンが多く含まれている。



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下の坑口。コンクリで塞がれている。すぐ隣りに小さい沢の堰堤があり、一見するとそれの延長のように見えてしまう。すぐ上に上の写真の坑口が開いている。坑口の間にこの坑から出たと思われる二酸化マンガンがたくさん見られるが、母岩の割れ目を満たしたり薄くへばりついたものが多く、採集する程のものは殆どない。


 ズリに戻って、鉱石探した。殆どが灰色から赤褐色のチャートおよび炭マンを少し含む「かつぎ盤」。二酸化マンガンに覆われてはいるが、手に持ってみると軽いのが殆ど。赤色チャートの重い石で二酸マンガンがたくさん付いている石を探すが見つからない。ブラウン鉱目的からきれいな石目的に変更して探した。

 以前にここのズリでチンゼン斧石(Tinzenite)とばら輝石あるいはパイロクスマンガン石の結晶を採集したことがある。玉岩鉱山のような石英脈を伴ったような鉱石ではなかった。

 今回はヤコブス鉱の筋のしっかり入ったものが見つかった。


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J鉱山のヤコブス鉱。アズキ色部の中に入っている黒い筋がそう。アズキ色部はおそらくリッベ石ないしケリー石が含まれているかもしれない。赤褐色の部分の下の層は黄褐色がカリオピライト、灰緑色がテフロ橄欖石、ピンク色部が菱マンガン鉱と一番下のピンク色がパイロクスマンガン石。


 日暮れが近づいて暗くなってきたが、もう2箇所寄った。J鉱山の手前にある

I鉱山だ。この鉱山はスムギタン(標高758m)から東に派生する尾根の鼻にあり、二酸化マンガンを掘っていたようだ。傍目からみるとただの地滑りのように見える。林道から沢の畔をしばらく辿るとズリの下に着いた。鉱山が二酸化マンガン目的なので、二酸化マンガンしか落ちていないのは当然だが、二酸化マンガンの塊も少なかった。

 坑口はズリの上と、ズリの下に大切坑と思われる坑口が一つあったが、崩れていて原型を留めていない。硬質そうなものを一つ拾い次に向った。


 I鉱山の更に手前の三差路に面する鉱山だ。鉱山名は不明で道と道の出合にあるから「出合旧坑」と呼んでいる。休耕田に近い畑の横から上に登る道が付いていて、車道から僅か高さ3mほどのところに土嚢袋で塞がれた坑口がある。ズリは無いが坑口の前に少しマンガン鉱が溜まっている。風雨でこの溜まりのところから久々に通ると鉱石が上から落ちてきている。

 今回、比較的大きな鉱石を見つけた。この鉱床のマンガン鉱石は準石墨(非晶質の炭素物質)の脈が鉱石を切っていて、この脈中に還元された自然銅を含んでいる。以前に知人を玉岩鉱山に案内し、帰りにここに寄った時に炭マン中に緑マンガン鉱様の鉱物を含んでいることに気付いた。よく見ると珪孔雀石で、

準石墨を含む部分に自然銅が付いているのが見つかった。珍しいものと当時は思っていたが、今回も入っているものを見つけた。

 鉱石は菱マンガン鉱と灰緑色のテフロ橄欖石からなり、赤褐色のカリオピライトを伴っていた。準石墨の脈が鉱石を切っていて、新品の十円玉のような濃集部を伴っていた。菱マンガン鉱中にはこれのほか、当地では初めて見るヤコブス鉱があった。


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出合旧坑のヤコブス鉱。中上部に赤褐色の脈がありこれにヤコブス鉱が含まれている。帰ってから磁力の強い磁石で試してみると磁石をよくひきつけた。他に黒色の脈があるが、準石墨の脈で写真の標本にも自然銅の細かい粒をたくさん伴っている。母岩は上部が菱マンガン鉱のノジュールを含む「かつぎ盤」でそれに接して菱マンガン鉱と灰緑色のテフロ橄欖石に赤褐色のカリオピライトを伴っている。部分的に無色の重晶石を伴っているが、無色透明のため写真ではよく分からない。



 当地でやっと鉱石鉱物らしいものが見つかったので満足して帰った。帰り道に以前在所の方に聴いた「K鉱山」の場所をみたが良く分からななった。終戦後、昭和28年頃まで稼働していたという話を聴いていたが、一面良く管理されたスギ林で坑口らしきところも分からなかった。

 K鉱山の先に位置する展望台も工事中に砥石型粘土岩の裂罅からマンガンノジュールを見つけた場所があったが、工事が終わると被覆されて見られなくなってしまった。ノジュール中の空隙に水マンガン鉱の結晶が唯一採集できたのだが、露頭が被覆されてしまったので、今新しい露頭を探している。

 





 

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