京都府の鉱物
重晶石とパイロクスマンガン石
京都府南丹市美山町深見 深見鉱山
以前に,顕微鏡写真で緑マンガン鉱を紹介した時に掲載した標本をリメイクしました.緑マンガン鉱の鮮やかな緑色は黒変して消え,黒く汚い痕跡だけが残ってしまいました.この部分は層状になっていて,鏨をあてて斫ったところ層状にうまく割れてくれました.全体を成形しなおしたあとで,表面のゴミを処理するため,希塩酸で洗いました.さっと上げて,よく水洗いして風乾させました.
改めて標本をつくるために新ラベルを付けて,写真撮影と顕微鏡撮影しました.その一部を掲載します.(非売品)
表面.
裏面.
再度の成形で層状になった部分は半分以下になりました.黒くなった緑マンガン鉱がついていた層状の部分は内部に淡紅色のガラス光沢の鉱物があって,周りが褐色の鉱物になっていました.産状からパイロクロアイト(きみまん鉱)と判断しました.ピンク色のパイロクスマンガン石との境界に,汚い緑色の脈が走っていて,顕微鏡で確認しところ重晶石でした.
ほかのマンガン山ではレンズ状や小塊状になっている重晶石はよく見かけましたが,脈状のものは丹波帯ではここで初めて見ました.褐色の部分(おそらくファイトクネヒト鉱)に接する淡いピンク色の部分は菱マンガン鉱でした.
脈で入っている重晶石の拡大です.灰緑色―暗緑色でやや脂ぎったガラス光沢を呈する部分が重晶石です.
重晶石脈を顕微鏡下で撮影したのちに,ピンクのパイロクスマンガン石の集合のなかに,ほかに何か鉱物は入っていないだろうか,と思っていろいろな面を観察していたところ,黄銅鉱がありました.
黄銅鉱.ピンク色のパイロクスマンガン石と灰緑色の重晶石との境界付近にある石英質の部分に,かなり小さいですが黄銅鉱が入っていました.
黄銅鉱があったので,ほかにも硫化鉱物がその近辺に入っていないか眺めてみていたところ,黒色の鉱物がありました.雰囲気と劈開の感じから閃亜鉛鉱と判断しました.
閃亜鉛鉱.先ほどの黄銅鉱のすぐ近くに黒っぽく変色した部分があって,一部が粗いので確認したところ閃亜鉛鉱でした.かなり小さいです.
現場は国道162号線深見トンネルを北に抜けた西の方に標高665mの三角点のある山(ムシンボウとかサガ山・ホソ山ともいう)の東の谷にあるマンガン鉱山です.山登りの本に坑口だけ沢沿いに開いているという記述があって,おそらくこれのことだろうと思っていました.のちにマンガン山の紹介の記事で,深見鉱山という名前を知りました.7年くらい前に訪問し,坑口の下の河原で2つ程度サンプリングした標本の一つです.
もう一つの標本は淡褐色―濃褐色ガラス光沢のカリオピライト主体でレンズ状の菱マンガン鉱があって,これの中に赤銅色の自然銅が含まれていました.