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ハウスマン鉱 兵庫県丹波篠山市上後川 後川鉱山

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石の話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハウスマン鉱

兵庫県丹波篠山市上後川 後川鉱山

 

 先日,18年前にサンプリングした石を整理していると,後川鉱山のサンプルが出てきました.50㎜くらいのサンプルで,表面の酸化被膜を斫り用の小ハンマーで斫り取って,角を落としました.割れ目にやや鮮やかな菱マンガン鉱が付いていて,ラベルはこちらの名前を記載していました.割れ目の菱マンガン鉱を標本の本題に持ってくるにしては貧弱なので,サイズが小さくなるのを承知で少し刻みました.両端の酸化被膜を斫り落として,内部を確認すると肉眼ではハウスマン鉱で,丹波帯の層状マンガン鉱床で出てくるチョコレート色のものではなく金属光沢の粒状の集合でした.一部にチョコレート色の粒が付いていたのですが,表面をサラッと塩酸で洗っていたので,若干浮き上がって見えていました.チョコレート色の部分は磁石に反応し,マンガンスピネルかヤコブス鉱でした.周りを斫り取って出てきたハウスマン鉱をラベルの表題にして書き換えました.

ハウスマン鉱.兵庫県丹波篠山市上後川 後川鉱山(非売品).左上のやや青みがかった黒色部は取り切れなかった酸化被膜.チョコレート色は微細なガラス光沢の粒で金属味がほとんど感じられなかったのでマンガンスピネルだろうと思います.そのなかの黒色部が金属光沢で,下の方の黒色部もハウスマン鉱でした.顕微鏡観察で粒状の晶癖が観察できました.チョコレート色の部分の中にある白色部は菱マンガン鉱で,あとから入ってきたのか,あとで充填したのかははっきりしませんが,劈開のやや発達する菱マンガン鉱で光沢も強い種類でした.

一部の拡大.黒色粒状がハウスマン鉱で,左上の赤褐色粒状がマンガンスピネルと思われる鉱物です.右上のレンズ上に見える灰緑色部はテフロ橄欖石でした.

チョコレート色部の拡大です.チョコレート色部の中の黒色部はハウスマン鉱で,白色部は菱マンガン鉱です.菱マンガン鉱の多く入っている部分にハウスマン鉱の黒色の粒が進入している部分があって,ここに希塩酸を垂らしゆっくりその部分だけを溶かしたあとで顕微鏡で観察すると表面がガサガサした八面体に近い結晶を確認できました.

 

こちらは断面の拡大です.黒色部はおもにハウスマン鉱でチョコレート色はマンガンスピネル系の鉱物です.俄かに黄色みがかった白色部は若干風化した菱マンガン鉱のようでした.ちょうど中央部にやや紫色がかった赤い粒があって,アレガニー石やリッベ石のような鉱物だとは思いますが,小さいので判別できませんでした.

 

 

 後川鉱山は「シツカワ コウザン」と読み,北東にある弥十郎ヶ岳へ至る竹谷コース沿いにありました.上のサンプルを得たときは林道入口には何もなかったのですが,現在は鳥獣除けの扉ができています.鉱山は林道入口からわずかな距離にありましたが,急斜面の上のようなところで,坑口は確認していません.主に転石で多く見られるのが,ばら輝石とテフロ橄欖石で上のような石はほとんどありませんでした.

 


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