研磨石
いくつかの研磨した石289
奈良県山辺郡山添村大塩 二双川の斑糲岩質岩を一面研磨しました.前々回の神野山に行ったときに,鍋倉渓でぶらぶらして,新鮮そうな岩石をいくつか見てきましたが,すべてサイズがでかく,表面がかなり風化していて,内部を観察できませんでした.
下流なら円礫が流れているかも~で,円礫でもいいので,転がっていないか下っていきました.鍋倉渓の谷川は月ヶ瀬に合流するらしく,以前に滝巡りをした二双川の上流にあたることがわかりました.
大塩の在所の少し下流で探したところ角の取れた斑糲岩質の転石がいくつかありました.ほかに多いのが花崗岩質のもので,閃緑岩もあるらしくこれらとの見分けが難儀でした.どうにかすると海綿状の風化残留物ができるらしく,それがある円礫が斑糲岩質岩でした.
先ず成形しました.破断面を出すために斫りのハンマーで,丸くなった面をそぎ落としていきました.石の目が分かってその方向に割っていったのですが,変なところにクラックが入っていて,思わぬところから剥離して,木っ端がたくさんできてしまいました.60㎜×45㎜×20㎜の箱にピタリと入る大きさのものが4つできただけでした.ほかは変な方向に割れた木っ端が多く,その一部の平坦そうな面が出ている木っ端を使用して一面研磨しました.
(研磨)
見た目が閃緑岩~斑糲岩質なので石英が入っているいてそれなりに研磨に時間を要すると予想して,磨り始めました.手磨りで磨った感覚は今まで花崗岩~閃緑岩系の岩石を磨ったときと随分異なっていて,かなり柔らかい印象でした.
磨る前は平坦にするのに随分と時間を要しそうな雰囲気の木っ端でしたが,表面の凹凸は磨っていくうちにみるみるすり減って,開始10分程度で平坦になりました.それなら裏面も磨ってみようと,サンゴ~海綿状の風化残留物のある面も磨っていきました.
初めに磨った面より,風化残留物がたくさんついている面の方が,平坦になるまで要した時間が倍近くかかりました.風化して褐色になった斑晶を新鮮な部分まで磨ったのが原因でした.
仕上げをする前に水に濡らした状態でルーペで観察したところ,白色の斜長石の周囲に黒色板状金属光沢の鉱物がかなりたくさん入っていました.磁鉄鉱はありそうなので,ネオジム磁石で引っ付くか,試したところほとんど反応が無く,赤鉄鉱も考えましたがこれだけ入っていると研磨汁に赤色系統の汁が出るはずで,研磨中はほぼ白色でしたので,赤鉄鉱でもありませんでした.
仕上げは初めに軽く800番手のペーパーで擦ったのちに,青砥でしました.白っぽい長石の部分と輝石類の入っている部分が光沢が出てくれました.俄かに緑色味のある粒はそれより柔いらしく,磨り進んでへこんでいました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
顕微鏡下で表面を詳しく見ていたところ,たまたまこの面に入っていなかっただけかもしれませんが,石英が全くありませんでした.中途半端に磨った裏面を改めて仕上げ研磨して,こちらも顕微鏡下で観察したところ,こちらも入っていませんでした.
暗緑色の粒状で,光沢がにわかに油脂光沢をしていて,文献を頼りに消去法で消していったところ,橄欖石でした.色の濃い部分は上の写真の部位だけでしたが,目が慣れてくると,白色の斜長石に混じってかなりの量の橄欖石が入っていました.この石に入っている輝石が単斜輝石が多いと橄欖石斑糲岩ですが,斜方輝石が多いとノーライトになり,肉眼で両者の判別ができませんでした.
標本の名称は含橄欖石斑糲岩質岩にしました.
こちらは鉄鉱類です.ほとんど磁力が無く,研磨汁も赤色系統の色が出なかった.どうもチタン鉄鉱らしい.
顕微鏡で眺めていると,研磨面の中にひときわ光沢の強い部分があって,その部分を拡大して撮影したところ,光沢が強くて強く反射して白っぽく写ってしまいました.強く反射している部分に矢印を浸けて太陽光の下でルーペ観察したところ,ルチルのようでした.この部分のほかにもいくつか似たような部分があって,ルーペで観察したところ,俄かに赤褐色を帯びている微細なルチルを確認しました.周辺の黄緑色部は橄欖石.白色の光沢のやや鈍い部分は斜長石です.