顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真138
―石 墨―
産地:Merelani Hills, Lalate mountains, Simanjiro district, Manyara, Tanzania.
(非売品)
Graphite 石 墨
[組成] C
[結晶] 六方晶系.自形は六角板状.鱗片状,鱗片状などになる.
[色] 黒色・灰黒色・黒鉛色.
[光沢] 金属光沢~亜金属光沢.
[モース硬度] 1~2
[比重] 2.09~2.23
[劈開] {0001}に1方向完全.
[条痕] 黒色.
[名称] ギリシャ語の「Graphein」と「Write」から.
[同質異像鉱物] ダイアモンド(Diamond),チャオアイト(Chaoite)
ロンスデイル石(Lonsdaleite)
ほか,酸に不溶.肌にスベスベ感があって,黒色の粉が手に着く.
ひさびさの更新です.今回は石墨にしました.
古くから使用された鉱物で,硬度が低く条痕の黒色が出やすいので,粘土や蝋と混ぜて鉛筆の材料にされていました.おもな産状は片麻岩・結晶片岩などの広域変成岩,変成ペグマタイト,結晶質石灰岩,粘板岩,閃緑岩類,ある種の斑レイ岩,玄武岩類,石炭の変成産物,半花崗岩,変成マンガン鉱床,隕石中などからの産出が知られています.
はじめの標本は, タンザナイトの表面に六角板状をなす石墨です.石墨のつく母岩はどういうわけか,白と黒しかないようで,カラーで撮影してもモノクロで撮影しても同じような写真になってしまう..コントラストがよくなるような標本を探していたところ,タンザナイトに着く石墨の標本がありました.産地は現在市場に出回っているタンザナイトのもので,同様の産状でヴァナジウムを含有し緑色を呈し「ツァボライト」と称する石榴石の標本にも,同じような石墨がついていました.
以下は国産の標本です.いろいろな産状のものを集めてみました.
産地:奈良県大和郡山市山田町 松尾山.(非売品).
領家帯の花崗片麻岩質の岩石を母岩とする石墨です.灰白色のやや目の細かい石英についていました.
全体をみるとこんな感じで白米に黒ゴマを振りかけたような感じです.
産地:埼玉県比企郡吉見町北吉見観音.(非売品).
こちらも,片麻岩質の母岩中の石墨です.多少緑泥石化しているようで,全体が緑色味のある岩石です..白色部は石英で,多少黄ばんで見えるのは水酸化鉄鉱物による染みのようです.
産地:富山県富山市山田高清水 高清水鉱山(非売品).
石墨を稼業対象にして採鉱されていた鉱山の石墨です.こちらも片麻岩類を母岩をしていますが,この標本は多少の長石を含むほかはほぼ石墨からなっています.
産地:富山県富山市小原 千野谷鉱山.(非売品).
片麻岩中の石墨鉱床の標本です.高清水鉱山の石墨よりも多少青色味がかっています.灰色部は石英で,灰白色―白色部は長石です.
産地:岐阜県飛騨市河合町二ツ屋楢峠(非売品).
こちらも片麻岩質岩から産した石墨です.灰白色の長石が溶脱した空隙にあった鱗片状の結晶の集合体です.光沢のある白色部は石英.多少黄色味がかっている白色部は粘土鉱物です.
産地:北海道広尾郡広尾町音調津 音調津鉱山(非売品).
斑レイ岩質の母岩中に豆状の集合をなす,有名な音調津鉱山の石墨です.豆状の集合は通常1㎝内外の大きさですが,上の方に移っている石墨は約28㎜ありました.母岩の灰緑色部は角閃石類,白色は長石類です.
産地:三重県名張市赤目町長坂.(非売品).
赤目四十八滝で有名な赤目の単純スカルン中に産した石墨です.光線の加減か多少青色味がかっています.純白に近い結晶質石灰岩中に六角板状をなす石墨で,遠目でみると劈開面で反射してキラキラして見えました.この写真はかなり拡大して撮影しました.
産地:京都府京都市右京区京北塔町弓山鉱山清水谷鉱床.(非売品).
マンガン鉱床から産した石墨です.準石墨と呼ばれるもので,非晶質だったりするものですから,非晶質炭素物質といわれることもあるようです.母岩は層状チャートを切る緻密な石英脈で,その隙間に不定形塊状をなしています.
産地:山口県美祢市厚保熊ノ倉.(非売品).
まるで石炭のようです.持ってみると見かけより軽く,ほかの鉱物はほとんど伴っていません.石炭の鉱床が花崗岩などの熱源によって切られたときに,揮発成分などが飛んで,石墨になったという産状の石墨です.
条痕を試してみました.この石墨はやや硬いらしく,2H程度の濃さでした.