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いくつかの研磨した石270

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研磨石

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつかの研磨した石270

 

  久々の研磨石です.兵庫県美方郡香美町村岡区 瑞穂鉱山の変質した凝灰岩を一面研磨しました.聞きなれない鉱山名ですが,地誌の方に記載があって,昭和21年頃までやっていた鉱山で,採算が合わなくなったとかで休山した,ようなことがありました.近くの山に金明鉱山や美方鉱山などの金銀鉱床があって,それと似たような鉱石だろうと思って,探していると上のような石がありました.

 安山岩質凝灰角礫岩の裂罅を充填した金銀鉱床のようで,そういう鉱石を随分と探しましたが,この手の鉱石はほとんどありませんでした.一番多い脈石は石英で,肥大した部分に長さ5㎜前後の水晶が生えた,扁平な晶洞が見られる脈でした.盤際に銀黒様の鉱物が入っていそうですが,ズリに転がっている石は脈の周囲はすぐに凝灰岩で,メノウ質にはなっていませんでした.

 上の石は鉱石を出したと思われる大切坑の上の岩場にある,露頭を突いたようなへこみの付近にありました.母岩の凝灰岩は絹雲母化しているようで,方解石などの炭酸塩が割れ目を充填して,その周りが珪化しています.金属鉱物は黄鉄鉱と細かい赤鉄鉱で,母岩の全体が赤っぽいのは赤鉄鉱によるものだろうとおもう.

 

1枚目の写真の未研磨面です.上の方にある褐色の脈は二次的に褐鉄鉱になった部分で,金が入っていそう.左側のへこんだ部分は細かい水晶の晶洞で,褐鉄鉱がかぶっています.ここを柔らかいブラシで褐鉄鉱をこすり取って掃除してみましたが,金粒はいまのところ確認できていません.

 

以下,研磨面の拡大写真です.

やや強く珪化した部分の拡大です.黒色は赤鉄鉱と思っていたのですが,研磨中に伸びたような感じが出て,急遽顕微鏡で観察したところ,閃亜鉛鉱に少量の銀鉱物を伴っていました.銀鉱物名は小さすぎて判別できませんでした.

 

黄鉄鉱の多い部分の拡大です.白く四角形に反射している部分が黄鉄鉱です.かなり小さいですが,黄鉄鉱の結晶の中に,黄銅鉱の小粒と硫砒鉄鉱が少量含まれていました.細かい黄鉄鉱の鉱染したところに産する金は坂越大泊鉱山で見ていて,こちらはもっと母岩が蝋石化していました.

 

こちらは未研磨面の拡大です.濃い褐色部は菱鉄鉱,白色のレンズ状は方解石,上の方の茶褐色の脈は酸化帯で褐鉄鉱です.この標本で最も粒の細かい部分で,ボケた黒色―灰色の部分は閃亜鉛鉱と銀鉱物の集合のようで,やや青色味がかっています.割れ目に樹枝状に集合する「しのぶ石」もありましたが,これとは産状を異にしました.

 

前出の細かい水晶からなる褐鉄鉱がかぶった晶洞の拡大です.肉眼的な鉱物に黄鉄鉱が酸化した「桝石」が晶洞の表面に生えていました.(写真中央よりやや下にある暗褐色の粒)

 

 

 瑞穂鉱山の鉱石はいまだどういうものなのか不明で,前述の地誌にも掲載はありませんでした.上の石が鉱石の一部だったら,あまりにも低品位で,採算が取れなくなって止めた,という話もわかるような気がします.北但地域にいわゆる「山陰型金鉱床」が随所にあって,いずれも大量の赤鉄鉱を伴い,風化して砂状になった赤鉄鉱を椀掛けしたところ金が得られたような話は,浜坂町から鳥取県岩美町あたりでよく,耳にした話です.

 瑞穂鉱山の周辺に古く鉄山をやっていたというような記述があって,タタラや鍛冶場という地名も残っているようです.鉱山の下の河原の砂を調べましたが,磁鉄鉱の細かいのはほとんどありませんでした.江戸時代の中期に公儀に注意されて,すべて休山したような話もあるらしいので,金も多少は出たのかもと,推測しました.

 当地で確認した鉱物は,黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・銀鉱物類・硫砒鉄鉱・石英・「桝石」・「褐鉄鉱」・赤鉄鉱・方解石・菱鉄鉱・絹雲母・緑泥石などでした.

 

 

 

 

 


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