研磨石
いくつかの研磨した石268
兵庫県神戸市西区押部谷の燐酸塩ノジュールを一面研磨しました.この標本は20年くらい前に知人より頂戴した石で,シュツルンツ石という名前のラベルがつけられていました.筆者の標本に「マンガン鉱物標本」いうカテゴリーを作っていて,ラベルの表記にもなっている鉱物名を調べると,マンガンを主とする鉱物でしたので,改めて掃除いたうえで標本にするつもりでした.直径62mm×高さ28㎜のガラス蓋付丸箱に収納しようとしましたが,わずか2mm前後の突起があって入らず,底を安定させるために裏面を一面研磨しました.
(研磨)藍鉄鉱が分解して,二次鉱物の集合体となっているので,軟らかいと踏んで,一気に磨り始めました.水を含むと端の方がポロポロと崩れていく難物で,力を籠めず,砥石の上を滑らせるように研磨しました.時間はかかりましたが,平滑な面が出てきましたので,目の細かい砥石で中砥をしました.表面は褐鉄鉱と黄色の粘土からなっているようでしたが,研磨が進むにつれて,内部より濃緑色の小さな球状の鉱物が出てきました.この色と質感ならリプスクーム石とロックブリッジ石の混合物のようです.小さな球がいくつか出てきたところで,中砥を止めました.仕上げは青砥で磨っていたのですが,光沢が出ず中途半端に風化したホルンフェルスの板でゆっくり研磨したところ光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です.)
明るい黄褐色部は藍鉄鉱が分解した二次鉱物です.サンタバーバラ石という鉱物でできているとか.暗い黄土色の部分は粘土のようで,乾くと粉がポロポロと出てきました.濃緑色部はロックブリッジ石とリプスクーム石の混合物(ラベルにあった)だそうです.
以下は濃緑色小球状になった部分の拡大です.
濃緑色板状に見える部分がロックブリッジ石か,もしくはただの藍鉄鉱か.研磨したので比較的新鮮な部分が出ていて酸化する前の藍鉄鉱に似ている.周りの淡黄色―帯黄白色は単斜燐鉄鉱のようです.
いくつかある濃緑色の小塊状の部分の拡大です.七枚目の写真の中央右の緑色の球があって,濃色の部分との境界の少し下に正方形に近い輪郭の鉱物があった.これがリプスクーム石かもしれない.海外のサイトでは結晶質のリプスクーム石は光沢の鈍い正方複錐の鋭錐石を思わせるような結晶.色彩は黒色や灰緑色・黄褐色・灰緑色を呈し,球状集合体や粒状になったりしているようです.
淡い緑色部の一部に柱状に見える部分もありました.鉱物名は小さすぎてわかりませんでした.
こちらは未研磨の部分の拡大です.
分解し黄褐色の鉱物の集合になった藍鉄鉱です.
左手にさきほどのリプスクーム石とロックブリッジ石の集合があって(こちらは研磨前に赤矢印で指示してありました),下の方に青緑色のベラウン石が付いています.
これが,シュツルンツ石だそうです.青矢印で指示してありました.矢印の先に白色―淡黄色の短柱状の鉱物が付いています.非常に小さな集合をしています.
ラベルに手書きで,シュツルンツ石は黄褐色のもあると付記されてました.