週の中ごろに岡山中部地方に連れて行ってもらいました.中小規模の銅鉱床を巡るツアーでした.
国鉄津山線沿いの鉱床2つと兵庫県境の鉱床1つの3か所でした.すべて緑色岩中の含銅鉛亜鉛石英脈で,黄銅鉱や閃亜鉛鉱・方鉛鉱・磁硫鉄鉱などが見つかりました.いづれも戦後まで稼業されていた鉱山なのでほとんど二次鉱物は見られませんでした.
その一つ県境付近の鉱山では,布賀の4F坑に匹敵する大きな坑口がありました.
この鉱山のズリでは黄銅鉱と磁硫鉄鉱からなる鉱石と,黄銅鉱石英脈の二つを拾いました.前者は黄銅鉱と磁硫鉄鉱からなる塊状鉱石で,持ってみるとずっしりと重い.後者は石英脈中の黄銅鉱塊で脈石の一部に光沢の異なる部分があった.帰ってから確認のため紫外線を当ててみると強く蛍光する部分と
ボヤーっと蛍光する部分があった.前者は周りの風化部に黄色い粉を吹いていて,改めてこの部分に照射すると黄色い粉末部のまわりも強く青白く蛍光した。前者の強く蛍光する部分は灰重石のようだ.
後者のボヤーっと青紫に蛍光する部分は,光沢を改めて確認するとどうもホタル石のようだった.光沢を確認後改めて照射してみるとこの部分がボヤーっと蛍光した.ホタル石だろう.この手の鉱石にホタル石が多いらしく,手持ちのほかの鉱石も試しにやってみたら,石英の一部が同様に蛍光した.この鉱山ではこの手の鉱石を良く見るので,探し方によってはかなりの量のホタル石があるのかもしれない.
岡山県内を3か所とほかに探索が岡山県内で1か所,兵庫県内で2か所まわりました.
それから今週の初め,久々に船岡鉱山の採集会に参加してきました.40名以上の参加でした.先月に独自資料の制作をしていたところ,何度も行っている船岡鉱山の写真が見当たらなかった.写真だけ撮りに行くのは億劫なので,
今月採集会があるのを利用しようと思って参加した.
こういう採集会ではかなりの確率で雨天になることが多く,雨天で流れたらいつ行けるかもわからなかった.この鉱山で採集できる鉱物は主に二次鉱物で,
あまり興味が無いためにしばらく足を向けていなかった.約8年振りの訪山だった.
国鉄船岡駅前に集合.筆者は車で駅前まで送ってもらった.隣町になるのだが,ウラ道を駆使すれば30分ほどで着けるため,電車はほとんど利用したことがない.
少し早めに着いたが,すでに顔見知りが来ていたので時間をつぶすことができた.誰もいなかったら時間まで近くにある「諏訪山城」と「太鼓山城」に行くつもりだった.
電車がなかなかこないのがあって,聞いてみると一時間に1本あるかないかだということらしい.園部駅から奥は単線なので本数が少ないのも納得できる.
ようやく電車が来て,見慣れた顔見知りがたくさん下りてきた.
目立たないように裏でゴソゴソしていたら,先攻で指導員のカードを持ってきた.免れるのかなと思っていたが,考えが甘かった.
次からは独りでこよう.
採集するつもりで来たわけではなかったので,非常にまれなことに弁当を持って(いつもは昼飯をする時間がもったいないので何も食べない)来ていた.
いつも使っているボロいでデジカメと,石の端を欠かす程度しかできない小割り用のハンマー(主に露頭で比較用に持っている),いろいろなことに使用する古新聞などしかもっていなかった.
急遽ルーペを探したら,妹のお下がりの許容量の大きい筆箱に緊急用のルーペが入っていた.細かいものを見るときは必ず要るものなので,いつもたいてい持っている.
国鉄の高架を越えて,鉱山に向かう.列の中ごろから歩き出したが,結局歩くのが遅いので,最後尾近くにまでなってしまった.
久々の訪山で,鬱蒼とした外観がずいぶん変わっていた.林道終点のやや暗いイメージは払拭されていて,周りの植林が伐採されていた.それでも選鉱所の建屋や火薬庫があった,台地の手前の竹藪は健在していてその手前で
この時期ふつうに見るシマヘビのでかいのを見た.1mくらいはあるだろう.
はめ(マムシ)は太短いヘビで駆除の対象になるが,こいつはカエルを良く食っている.以前に蜷局を巻いてトノサマガエルを丸呑みしているところを見たことがある.
この鉱山に行かなくなったきっかけが,ちょうどこの時期で石垣の下あたりで
マムシとアオダイショウ,ヤマカガシ,シマヘビと相次いで見たからだった.
「こんな蛇の多い山は行けない」と言って足が遠のいていた.
途中にある石垣は、10年ほど前までは左岸の岩場に丸太の橋が架かっていて鎖もしっかり付けてあったのだが,大水で流されて,鎖だけになってしまった.更に多くの人が登ってくるので,鎖場の入り口がスラブ状のズルズル場になっていて滑落の危険がある.
巻道も右岸の奥からあるのだが,道が不明瞭なうえヤブになっている.大水の後は石垣の右岸の詰めから足をかけて直接登っていた.
石垣の上も大水の所為で深く抉られていた.大水の後にこの抉れたところから石膏に伴ってサーピエリ石の産出をみた.局所的で今は見られそうもない.
以前までは大量にあった酸化鉄を含み朱赤色を呈する碧玉がほとんど見られない状況になっていた.登っていくにつれて先行者の割り残しがでてくる.
山神社が見えてきてホッとした.神社の周辺は在所の人によって整備されているが,ズリはやや放ったらかしのようだ.ズリの手前の割り残しの二酸化マンガンからTodorokite 轟石がたくさん入っていた.素人目には二酸化マンガンの鉱物などは分かりづらいが,ここのものはやや結晶質で羽毛状になっている.
Todorokite 轟石.ふつうに接写で写してもきれいに繊維が見えないため双眼顕微鏡で拡大できるだけして,横から強い光源を当てて撮影したもの.やや赤みがかった黒色繊維状部が轟石.右方の赤い部分は酸化鉄を含んだ碧玉質の母岩.
坑口は奥にあり,最近行って入った人によれば坑内に藍銅鉱があったらしいのだが,古い坑道うえ落盤の心配もあるため入りたくないが,以前は坑口の前が平坦でズリの下の方に沢があったのだが,今は坑口の少し手前から深く抉れて沢になっていた.
坑口の手前にあった亜鉛の酸化帯は深く抉られたことによって断面が露出していた.この辺に異極鉱や水亜鉛土などがあって,少量のソーコン石や亜鉛孔雀石などが見られるのだが,人が多いため探してみようと思わなかった.
ズリの状況を見るために一回りして,昼食にした.いつも持参する弁当はコンビニの握り飯を2つほどしか持ってこない.山でゴミを出さない工夫で,握り飯がないときは,だいたい食べない.握り飯なら包装している袋くらいでゴミがかさ張らない.
昼食後,鉱物鑑定の量多くなってくる.ほとんどが珪孔雀石か含銅アロフェンであまり面白みがない.ほかは孔雀石か水亜鉛銅鉱。
ここではちょっと珍しい鉱物にPseudomalachite 擬孔雀石(燐孔雀石)がある.
この鉱山から日本ではじめに記載された鉱物だ.少し特殊な産状をしていて,二酸化マンガンに覆われた赤褐色の母岩中に,鍾乳状の孔雀石様鉱物
として裂罅に挟まっていた.ほかの銅の二次鉱物をほとんど伴っていない出方だった.今回はそれらしい石はいくつか見つかったそうだ.
初成の鉱物は上のズリにはほとんどなく,石垣付近から選鉱所跡にかけて転石で見られる程度で,主要鉱石鉱物は,黄銅鉱・閃亜鉛鉱・黄鉄鉱・重晶石などで稀に斑銅鉱を伴う黒鉱が見られる.今回は見ている暇がなかった.
帰りは河谷林道を経由した.林道に抜ける手前に炉材珪石の試掘坑があってついでに見学するという趣旨だった.事前の調査で試掘鉱区があるとの情報は得ていたが,鉱山名ははっきりとしない.森山珪石とか船岡珪石とか大向珪石の鉱区がたくさんあってよくわからない.
鉱床は林道脇にあって山道がズリを横切っている感じだった.ここからは林道をだらだら下っていく.神社の前で知人と少しダベッて駅まで送ってもらう.
帰りによっていくところがあるとのことで,道案内を兼ねてうまく便乗できた.
京都亀岡で天然鉱石の販売ならミネラルショップたんくら