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鉱物の顕微鏡写真127 ―エジリン輝石―

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顕微鏡写真127

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真127

―エジリン輝石―

 

産地:Murunskii massif, Chara and Tokko rivers confluence, Alden Shield,

        Russia.(非売品)

 

 

 

Aegirine  エジリン輝石

(エジリン・エジル輝石・錐輝石)

[組成]    NaFe3+[Si2O6] 

                 FeがAlで置換されるとひすい輝石(Jadeite).

                 FeがMnで置換されるとナマンシル輝石(Namansilite)

                 普通輝石成分が固溶するとエジリン普通輝石(Aegirine-augite)

[結晶]    単斜晶系.自形は単斜柱状・針状・錐状など.束状・放射状・繊維

        状などの集合体になる.柱面に並行な条線がある.

[色]      黄色・灰黄色・褐色・赤褐色・淡緑色・灰緑色・緑黒色・黒色など.

[光沢]    ガラス光沢.

[モース硬度] 6

[比重]    3.5~3.6

[劈開]    {110}に2方向に完全.2方向の劈開が90度で交わる.

[条痕]    淡緑色・黄灰色.明帯黄灰色という文献もあった.

[原産地]   Låven, Langesundsfjorden, Larvik, Vestfold og Telemark, Norway.

                 Rundemyr,Øvre Eiker, Viken,Norway.

[名称]    北欧神話の海の神「Ægir」(エーギル)に因む.

 

 

 

ゼーマン石の次はエジリン輝石にしました.

 

 

  以前に普通輝石を紹介しましたが,海外産や国産の標本も含めて,普通の鉱物であるのに,標本数が揃わなくて苦労しました.今回のエジリン輝石は海外産のものがいろいろな母岩に普通に含まれていて,海外産は比較的楽でした.国産は変種扱いされているマンガンエジリンが,大多数で黒色のエジリンは数箇所しかありませんでした.

  ナトリウム(Na)と鉄(Fe)を主成分とする,イノ珪酸塩鉱物(輝石類)の一種です.鉄イオンが3+なので鮮やかな緑色とかにはならないようで,少しくすんだ緑色や褐色などになるようです.

  おもにアルカリ分に富んだ閃長岩にふんだんに含まれていて,黒っぽく細長い外観の鉱物はほぼエジリン輝石でした.実際にエジリン輝石の含まれている標本数が多く,顕微鏡下で撮影して見栄えのする写真を選びました.

  上の標本は数年前に購入した石で,紫色のチャロ石(Charoite)中に黒色のエジリン輝石が放射状集合をしているもので,トップはコントラストの良いこの標本の写真にしました.以下,他の産地の顕微鏡写真です.

 

産地:Aris quarrys, 2680m SE of Schildkröte mountain, Aris, Windhoek Rural,

        Khomas region, Namibia.(非売品)

以前の「マカタイト」,「トッパースツィア石」と「ヴィリオム石」の回で紹介した標本です.霞石を多く含むアルカリ岩類の響岩(Phonolite)の微細な空隙に,入っていたエジリン輝石です.濃緑色柱状をしています.

 

 

産地:Khan Bogd district,Ömnögovi province, Mongolia.(非売品)

 

 アームストロング石という希元素鉱物が,ラベルの表題になっていた標本に入っていたエジリン輝石です.世界最大級のアルカリ花崗岩体で様々な脈岩によって切られていて,その中にあるペグマタイトから産したいう.母岩はだいたいが曹長石のようで,霞石っぽいブロックも含まれているようでした.写真用になるべく結晶面が出ている部分を探しましたが,頭のついている箇所はありませんでした.

 

 

産地:Gordon Butte, Crazy mountains, Meagher county, Montana, USA.

   (非売品)

 こちらは以前の回で紹介した重土輝葉石についていたエジリン輝石の写真を転載しました.霞石閃長岩質ペグマタイト中のエジリン輝石です.灰緑色ガラス光沢を呈する繊維状をしています.繊維状の灰鉄輝石に似ています.

 

産地:Malosa mountain, Zomba district, Malawi.(非売品).

 

 標本市場に比較的よく出回っている産地の標本です.白色の長石に光沢の良い錐状の結晶がたくさんついていました.小さいほうが結晶がシャープなので,この部位を使用しました.この写真には写っていませんが,小さな結晶の左上に少しだけ写っているエジリン輝石の大きな結晶の根元に,黄褐色の八面体をなすパイロクロアを伴っています.

 

 

産地:Mont St-Hilaire, Quebec, Canada.(非売品).

 

 非常に多くの稀産鉱物を産することで有名な採石場のアルカリ閃長岩質ペグマタイト中のエジリン輝石です.母岩が方沸石と粉っぽいドーソン石を含んでいて,かなりボロボロで,素手で砕けるような軟弱な母岩についています.毛先が多少硬い歯ブラシでこすると,なんとか結晶面がはっきりとしたエジリン輝石が出てきました.2本ある結晶の延長線の空隙にカタプレイ石や菱マンガン鉱などを伴っています.

 

産地:Norra Kärr, Norra Kärr alkaline complex,Gränna, Jönköping,

       Jönköping county, Sweden.(非売品).

 こちらはユーディアル石やモサンドル石,ローゼンブッシュ石などのお供に入っていたエジリン輝石です.いままで挙げてきた写真の中でも色の淡い方です.産地名がダイアクリティカルマークがたくさん入っていて,タイピングに難儀しました.うしろのほうに入っている「Jönköping」はグーグルアースで検索すると「ヨンショーピング」と読むらしいです.

 

産地:Point of Rocks quarry, 1km W of Point of Rocks mesa mountain,

        Springer, Colfax county, New Mexico, USA. (非売品).

 

 こちらも以前に「ヴィリオム石」の回で使用した標本のお供についていたエジリン輝石です.上の方に劈開面が観察できます.母岩はたぶん響岩で粉を吹いた梅干しのようなヴィリオム石を伴っています.

 

 

産地:Rasvumchorr mountain, Khibiny massif, Murmansk oblast, Russia.

    (非売品)

  こちらは結晶ではなく,繊維状の集合で針状結晶が複雑に絡み合った集合をしています.この標本もラベルの表題はエジリン輝石ではなく,「星葉石」と「ユーディアル石」です.アルカリ閃長岩質ペグマタイト中のエジリン輝石です.

 

 

 

産地:Vøra, Vesterøya, Sandefjord, Vestfold, Norway.(非売品)

 以前に「エルピド石」の回で紹介した標本の一部についていたエジリン輝石です.首都オスロの南南西約60㎞くらいに位置する.グーグルアースで検索すると「海水浴場」と出てきました.閃長岩質ペグマタイトで2本の脈からなっているという.下の写真はどういう訳か,柱面の真ん中あたりから逆「く」の字のように曲がっています.母岩の灰褐色―暗灰褐色の部分は霞石です。

 

 

 

 

以下,国産のエジリン輝石の顕微鏡写真です.前述のとおりあまり国産の標本が集まりませんでした.

 

産地:愛媛県越智郡岩城島船越暮坂山.(非売品).

 杉石(Sugilite)の原産地で知られている,閃長岩質岩中に入っているエジリン輝石です.結晶の頭のついている部分が殆ど無く,顕微鏡下で探していると上の写真の部位がありました.かなり小さいですが,これを写真にとりました.母岩の白色部はペクトライトです.レンズのように入っているペクトライト中に埋もれていました.

 

産地:岩手県下閉伊郡田野畑村菅窪 田野畑鉱山.(非売品).

 各種の小珍しいマンガン鉱物を産することで有名な田野畑鉱山のエジリン輝石です.マンガンを少量含む「マンガンエジリン」と呼ばれる標本です.国産のマンガンエジリンの標本はなかなか結晶の頭が観察され辛いですが,この標本は頭がなんとか確認できます.母岩の若干ピンク色味がかかっている部分はセラン石です.

 

 

産地:福岡県福津市本木河内マンガン谷 宗像(河内)鉱山(非売品).

 塊状のマンガンエジリンです.おそらく三郡帯の結晶片岩中に胚胎するマンガン鉱床で,含砒素燐灰石やばら輝石,ブラウン鉱などを産しています.紅簾石も出ていますが,ごく微量で過去1度だけ現場で確認しています.

 

産地:和歌山県紀の川市西脇 飯盛鉱山(非売品).

 こちらは三波川帯の結晶片岩に胚胎する層状含銅硫化鉄鉱床に伴われるレンズ状の小規模なマンガン鉱床より産しました.ブラウン鉱を伴ったりばら輝石が近くにいたりしています.ブラウン鉱は母岩中の赤鉄鉱とよく外観が似ていて注意を要します.

 

 

 

産地:大阪府南河内郡太子町山田 竹ノ内峠(非売品).

 もとラベルは「エジリン輝石花崗岩」という名称がついています.この標本は岩石標本です.「アルカリ花崗岩」という名前もあって,何度か付近を探索しましたが,そのような岩石は見当たりませんでした.その代わりに工事中の土砂の中から赤~紫色にグラデーションしているホタル石を拾いました.上の標本はN社で購入した標本です.購入したときに詳しく伺うと,竹ノ内峠の北側付近とのこと.母岩は花崗岩というより閃緑岩ないし花崗閃緑岩に近いような感じの磨る岩石で,確かにエジリン輝石のような柱状の結晶がいくつも確認できました.

 一枚目の写真は若干黄色みの強い結晶です.2枚目は少し濃集した部分.最後の写真は左上に,光沢の強い磁鉄鉱の結晶を伴ったエジリン輝石の部位を撮影しました.

 

 


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