研磨石
いくつかの研磨した石238
先日,滝巡りのついでによった山中鉱山の通洞らしき坑の前に落ちていた,熱水交代した凝灰岩質岩を一面研磨しました.現場付近の地名は鉱山の南に県道が大きく蛇行するカーブのところに,森林の字名の掲載のある看板に,「山中」と記載されていた.もともと沿革のはっきりしない鉱山で,わずかに1885年頃に福岡与助という人が開発し,その後すぐに休山したという.昭和の初めにも追って開発されたというが,はっきりしない.地名は兵庫県丹波市山南町阿草山中カネガヒラで,坑口の前が確かに平坦な地形になっていました.阿草から丹波篠山市味間奥に抜けるお地蔵さんのある「小峠」という峠を切り開いた時も南北に坑を穿ち探鉱されたとか,奥右衛門谷と呼ばれる谷に鉱脈が出ているなどの記載がありました.小峠は峠付近にそう言った坑のようなものは吹き付けをされている所為か,見当たりませんでした.別の文献で,味間奥に小峠の坪というところと水坂というところで採鉱を試みたという記述があった.後者は明治17年頃に試掘を始めたが良脈に当たらず私財を浪費したような記述があって,石英中に黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱などを産したという.
山中鉱山に話を戻して,前々回くらいに滝巡りの際に寄って坑口内部の写真を掲載しました.その坑口の上5mくらいのところに大きな掘り下りの竪坑があって,それの北延長にも掘り下ったような跡がありました.鉱石は過去数回の探索で,掘り下りの竪坑の北北東の延長に大岩があって,その下付近で,角礫状の変質岩中の礫間を黄銅鉱で充填し,閃亜鉛鉱や方鉛鉱・銅藍などが含まれる比較的高品位な銅鉱石が多少ありました.
それを研磨すればいいのですが,硫化の部分だけ極端に柔らかいため,平滑にならないと考えて,上の写真の変質岩にしました.全体的に黄色味がかっていて,随分前に研磨して更新したすぐ近くにある「金山鉱山」の鉱石によく似ていた.
(研磨)変質岩なので,やわらかいと踏んで磨り始めました.石英を多く含んでいるところがやはり硬く,緑泥石を含んでいる部分が柔いため先に擦り切れてへこんでしまいました.硬い部分に再度砥石を当てて優先的に磨って高さを合わせるのに難儀しました.仕上げは青砥でしました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
水酸化鉄による影響なのか全体的に黄色っぽい石でした.
割れ目系の肥大部に黄銅鉱が含まれていました.やや輪郭のはっきりしている粒状の金属光沢部は黄鉄鉱です.
中央左の礫中に黒色の閃亜鉛鉱が含まれていました.褐色は水酸化鉄で染みた部分.
黄鉄鉱の多い部分の拡大です.外形がややはっきりしていて黄色みが薄い感じがしています.黄鉄鉱の多い部分は閃亜鉛鉱などの鉱物を伴っていましたが,黄銅鉱はこの石では少ないようです.