研磨石
いくつかの研磨した石230
京都府南丹市日吉町海老谷 地堂鉱山の炭マンを一面研磨しました.先々月に緑マンガン鉱をちょっと書いた時に,緑マンガン鉱が入っていた石の母岩です.ラッカーで吹いた石は鮮やかな緑色は全く失われていて,黒色の物質に変質してしまいました.上の石はあずき色の炭マンのレンズに未だ緑マンガン鉱の鮮やかな緑色が残っていて,研磨に耐えるかどうかわかりませんでしたが,試しに磨ってみました.
鉱山は海老坂峠に至る道筋にある玉岩地蔵尊の参道の西側にありました.文献では第一鉱床と第二鉱床があったそうですが,文献の第一鉱床というのが,ずいぶん探しましたが,見つけることができませんでした.上の石は第二鉱床の標本です.鉱石はカリオピライトや菱マンガン鉱を主とする炭マンがあって,これの高品位部にハウスマン鉱やヤコブス鉱,アレガニー石などの鉱物を含んでいました.稀にゲイジ石がありましたが,過去1回しか見ていません.
低品位のマンガン鉱石でパイロクスマンガン石と,見かけがばら輝石のものと2種類あって,後者の粗粒な集合中に方解石が充填しているものに,チンゼン斧石―マンガン斧石系の鉱物が少量見られました.硼素の鉱物が多少あるので,マンガン硼酸塩鉱物が多少あるかもしれませんが,今のところ硼珪酸塩しか見ていません.
二酸化マンガンの鉱物も多少あって,肉眼的に判別できる仏頭状の集合体で産するクリプトメレン系鉱物や,単斜柱状で表面が多少脂ぎって見え,すでにパイロリュース鉱になっていると思われる水マンガン鉱などがありました.
またマンガンとは関係がないと思われる鉱物に珪岩を切る石英脈に,長さ最大5㎝の水晶がありました.盤際に緑黒色鱗片状の緑泥石類が伴っていました.
(研磨) 菱マンガン鉱が大部分を占めていましたので,工業用砥石で一気に摺り上げました.中研に大村砥で軽く磨ったあとで,宮川砥で仕上げをしました.
(以下,拡大写真です.)
灰白色―淡紅色のレンズ状をなす菱マンガン鉱の部分の拡大です.灰白色―淡紅色部が菱マンガン鉱です.上の方の茶褐色はカリオピライト.菱マンガン鉱のレンズの周辺に鉱染しているのは黄鉄鉱です.顕微鏡下では暗緑色の緑泥石類が伴われていて,多少の熱水による影響があったのだろうと思います.見かけが高品位そうなのにズリに転がっていたのは黄鉄鉱が入っていたせいかもしれません.硫化は鉱山ではかなり嫌がったという話を聴いていました.黄鉄鉱が入っていたので鉱石から外れたのかもしれません.
ヤコブス鉱やアレガニー石,パイロクロアイトなどからなるアズキ色炭マンの部分の拡大です.断面はこんな感じに映っていますが,割った破面を見ると赤褐色でボソボソの物質になっていて,割りたては淡紅色でした.パイロクロアイトが部分的に残っていて,ほかはファイトクネヒト鉱になっているようです.茶褐色部はカリオピライト.あずき色炭マンとカリオピライトの中間に挟まる青緑色部はテフロ橄欖石.白色っぽく見えるのは菱マンガン鉱です.ヤコブス鉱は黒色筋状であずき色炭マンを切っていますが,かなり小さいようで,手持ちの磁石に弱く反応した程度でした.上の方に映っている緑色部は緑マンガン鉱です.この色がいつまで残っているのか..
研磨石の上の方にあったパイロクスマンガン石の小レンズの拡大です.ピンク色部がパイロクスマンガン石で右手に筋が幾つも重なってレンズ状に見える,淡紅色の菱マンガン鉱を伴っていました.パイロクスマンガン石の左手に茶褐色のカリオピライトが.カリオピライトから青緑色油脂光沢のテフロ橄欖石の薄層を挟んで,ヤコブス鉱+アレガニー石+菱マンガン鉱+パイロクロアイトからなる不定形塊状のあずき色炭マンが接しています.
このほか,標本の斜め右上から左下の黄鉄鉱の鉱染部までにかけて,白色―灰白色繊維状の石英脈が鉱石を切っていました.
以下は各部位の鉱物の説明です.こんな感じになりました.