林道をひたすら歩く。だらだら歩いていると方向感覚がマヒしてくるので、尾根に取り付きたいが、昨日の雨で足元が悪いため地形図とにらめっこしながら先へ進む。山ばかりの展望を楽しみながらようやく八丁林道との出合になった。
八丁林道は相変わらず通行止めで、崩土の部分もあるようだ。これから目指すコシキ峠方面は頑丈な鉄門に阻まれて、さらにその先は路面を広く積雪が覆っているため、鉄門すぐ南の尾根から独標770m峰方面に取り付く。手前の峰はやや痩せた尾根で少々ヤブっていた。一度鞍部に下り、登り返すとそれらしきピークに着いた。ここは下草もない明るいピークだがここでも北風が強く一気に通り過ぎる。
独標770m峰。かつてはササヤブだったはず。野鹿に食われて禿げてしまったようだ。
林道まではわずかな下りだった。またここから林道歩きだが距離はそんなになかった。林道が大きく南尾根を巻く手前のカット面から再び取り付くと砥石を掘ったような平坦な面が南斜面に広がり、その先やや緩く登ると鴨瀬谷山(778m)に着いた。地形図には「鴨瀬芦谷山」とあり別の資料では「シライシ」、地元では「砥石山」と聴いた。この山の主稜線はふもとからどこが山頂か見分けがつきにくいと思われるため、特定のピーク名は曖昧のような気がする。
「シライシ」は明らかに独標770m峰のほうが似合っていて、尾根の入り口から頂上部まで白っぽい珪質岩の破片が非常に多くみられた。
鴨瀬谷山山頂部は手前に砥石を掘ったような平坦地があった。やはりここは「砥石山」のようだ。
山頂の三角点に軽くタッチして、山頂を後にした。林道のカット面は地形図の破線を横切っているとふみ、もと来た道を戻る。予想した通り、南の尾根の破線部の道は大きくカットされていた。
この破線は八丁大道で廃村八丁に至る街道で、予定通り分岐を右に採った。
八丁大道分岐。分岐から南の尾根しばらくは展望のよい造成地で、先ほど登った鴨瀬谷山やコシキ峠の奥にソトバ山が見えていた。
林道造成でできた展望のよい台地から山林にはいるとかつての峠道が現れた。ここから尾根を伝って千谷山まで足を延ばすつもりでいた。東塚谷峠まで足元が緩いため何度も滑ってこけた。峠から610m等高線尾根に取り付く。ここもぬかって歩きにくい。この610m等高線尾根を過ぎると千谷山まで600mを超すコブは無いようで、楽を望んで足が速くなった。
標高600m前後の尾根は東西に細長く、ヤブは少ないものの歩く人が少ない所為か歩きにくい。尾根が南向きになったところで下りになった。少し下ったところで気になる凹地が南の斜面にあるのを見つけた。二酸化マンガンの坑口だった。ここで予定を変更して坑口探索になった。
二酸化マンガンの坑口。手前にやや硬質の二酸化マンガンが転がっている。
坑口は上に一つと支尾根を下がったところに2つあった。(写真は下の坑口。写真では見にくいが2つ並んでいる。)まだあるはずと思い、直接谷に下った。鴨瀬谷山の南尾根を西に下ったので、八丁林道のどこかに出ると思い、行けるところまで行くことにした。
予定を変更して下山を試みたこの支尾根、とんでもない支尾根で斜度50度を超すような斜面になり、谷に消えていた。しっかりした若木も少なく、まばらに生えた持ちやすそうな木にへばりつきながら、再三の注意を払いやっとの思いで谷に下りた。谷も当然道などは皆無で細い淵になったところや巻けそうもなさそうな急な渓流瀑もいくつも越えた。濡れることなんて脳裏にはすでになく気付いた時には、足元は泥だらけだった。二酸化の坑口から無理やり谷に下りて本流と思われる沢と合流する少し手前の左岸にやや立派な層状チャートがあり、ここに炭マンの坑口があった。
炭マンの坑口。写真右手が東の方向、左は西の方向。左右2つあいていてすぐ下が沢だった。坑口の北側にも一つ坑口を確認した。
鉱石は少なく、2つの坑口のすぐ下で赤鉄鉱の赤い染みを帯びた部分のある脈状の菱マンガン鉱を一つ拾った。さらに下の支流の合流地点(2つの坑口から約20mくらい進んだ川原)でモンスター級?のお化け緑マンを採集できた。
お化け緑マン。炭マンに伴うチョコレート鉱がそのまま緑マンガン鉱になったような石。内部まですべて緑マンガン鉱だった。割っているときすでにその兆候は出ていて、割り端が緑色になっているのが不思議だった。
お化け緑マン。帰ってから洗ってみた。中央は一円玉。もう少ししたら本物のお化けのようにこの美しい緑色はきえてしまう運命だ。
ただ緑マンガン鉱を含むような高品位マンガン鉱石はこれ一つだった。沢をさらに下りていくと2つ真新しい堰堤が二つ出来ていて、工事用の道を下ると八丁林道の簡易水道の前に出た。鉱山名は今のところ不明で、沢の名前を探そうと思い、真新しい堰堤のプレートを視たがわからなかった。
下山予定時刻(いつも午後4時)ほほちょうどで八丁林道の入り口に着いた。迎えのTellを入れ、小浜街道をだらだら歩いて南下する。
八丁林道入口。やはり通行止。途中の伐採地の横では路肩が崩れていて電柱が川に横たわっていた。
迎えの車に出会ったのは、下中の郵便局の手前だった。