いくつかの研磨した石214
岡山県新見市神郷町高瀬 高瀬鉱山上一号坑の塊状ベスブ石を一面研磨しました.4年ほど前の3月上旬ごろに積雪の中訪問し,サンプリングした石です.一番上の坑口のズリまでは,インクラインを利用して何とか登ったが,帰りはズリを直接下るという暴挙に出たうえ,最後の斜面を下らずに,インクラインを途中から,滑り台のように滑り降りた思い出のある現場です.その後も何度が見に行きましたが,ズリの頂上まで登ったのはこの回だけでした.
ズリからは展望がよく,北東方面に聳える花見山が真っ白でした.上の石はズリの頂上から少し下ったところにありました.かなりしまっていて重量感があったので,当初は石榴石かと思っていました.のちに橙色の部分はベスブ石と判った.橙色の重量感のある石で,標本にするときに半分に割って一つは残しました.上の石は残した方の石です.割易そうな腐った箇所があり,それに沿って割ると上の真ん中の空隙が出てきました.
空隙に緑色の鉱物がかなりたくさんついていて,粉状になっていたため,内部だけ丸箱に入れて別にしました.空隙内を掃除して,表面を一面研磨にしました.
(研磨)橙色の部分が石榴石なら研磨は大変ですが,ベスブ石なら硬度が低いので磨りやすいと踏んで,一気に磨り上げました.予想通りの展開なのでホッとしました.仕上げは#1000と#2000のペーパーで軽く磨った後に青砥でしました.
(以下,顕微鏡下での観察です.)
真ん中の空隙に沿って撮影しました.
磨る前は緑色の染みでした.磨っていくとだんだん黒くなって,金属鉱物が出てきました.黄銅鉱です.そのあとに再び観察したところ,錆びてきたので斑銅鉱が混じっているようです.
6枚目の写真の右手にある硫化の集合です.黄銅鉱と真ん中に帯桃真鍮色金属光沢部がありましたが,小さすぎて判別できませんでした.
色の濃いベスブ石からなる部分です.白い部分は曹長石で,標本の中央の空隙に単結晶があって判別できました.一種のロジン岩なのかもしれません.
空隙の内部の写真です.緑色部は緑泥石のようでした.白色部は曹長石.
割ったときに粉末状の緑色の鉱物がたくさん入っていました.それは孔雀石だったわけで,あとで丸箱に入れた粉末を塩酸で処理したところ全て溶けてしまいました.写真は残っていたところを撮影しました.
当初は石榴石と思っていたのがベスブ石でした.この集合の中で石榴石は肉眼的に入っていないようでした.ほかに異なる面に輝銅鉱類を含んでいました.