鉱物の顕微鏡写真82
―灰フォージャス沸石―
産地:Limburg quarrys, 300m WWS of Limburg mountain,
Sasbach am Kaiserstuhl, Emmendingen, Freiburg region,
Baden-Württemberg, Germany.(非売品)
Faujasite-Ca 灰フォージャス沸石
[組成]:(Ca,Na,Mg)3.5[Al7Si17O48]・32H2O
[結晶系]:立方晶系
[色]:無色・灰色・白色.
[光沢]:ガラス~亜金剛光沢.沸石類のうち光沢は強い方に思う.
[モース硬度]:5
[比重]:1.92~1.93
[劈開]:{111}に完全.
[条痕]:白色.
結晶は八面体になる.スピネル式双晶になることがある.
今回は沸石にしました.上の標本はリンバーグ岩の標本として購入しました.当初は津山市糘塚か,浜田市大糞山のものを入手しようと思っていたのですが,国産の標本が無かったので,海外産の標本を入手しました.リンバーグ岩と地殻とマントルの境界付近の岩石とされ,橄欖石と輝石の斑晶の目立つ塩基性の玄武岩質岩です.文献に長石は含まれないとされていて,ルーペで探しましたが,たまたまこの石に入っていなかったのか,もとの岩体から入っていないのかはわかりませんが,この石には肉眼的に入っていないようでした.
しばらく岩石標本として置いていたのですが,最近になって整理とラベルの書き換えに伴って鉱物標本にしました.産地は特に拘っていなかったのですが,リンバーグ岩の原産地でした.Limburg山の麓にある採石場群より産したとのことでした.
元についていたラベルの名称は「Faujasite-Ca」で,十字沸石・玉髄・方解石・チタン輝石などを伴う,とありました.ラベルを書き換えて写真を撮りました
(以下,顕微鏡下での撮影です.)
上の方にある尖った結晶が灰フォージャス沸石です.沸石自体は無色透明ですが,下地に黒色のリンバーグ岩か,内部に含まれる鉱物によって色彩が異なっています.
こちらはスピネル式双晶です.周りの沸石は灰十字沸石です.
黒っぽく見える部分が灰フォージャス沸石です.横に灰十字沸石を伴っています.表面に黄色い粉末状の物質がついていますが,掃除したときに取り切れなかった粘土状の物質です.
別の部分についていた灰フォージャス沸石です.周囲のザラメ状の沸石は灰十字沸石です.灰フォージャス沸石よりやや右下にある板状に見える鉱物は方解石でした.
5枚目の写真の拡大です.周りは灰十字沸石.
母岩のリンバーグ岩中の斑晶の拡大です.黒色結晶は普通輝石です.元ラベルにチタン輝石と入っていたもののようです.
灰十字沸石です.白色―無色透明の球状集合の断面のわかりやすいものを選んだのですが,どうでしょう.脇の黒っぽく見えるのは内包物によるものなのかはっきりしませんが,灰フォージャス沸石です.
こちらは,標本の裏面で,一番大きな孔を覆っている鉱物です.十字沸石か何かだったら良いのですが,断面を観察したところ玉髄でした.
玉髄の内包物として入っていた黒色鉱物です.他の部分も観察していたら,黒色の樹枝状の集合になっていたり,玉髄の表面を薄く覆っていたりします.若干赤みがかった鉱物で,文献で調べていると,轟石の名前がヒットしました.本邦の沸石産地でも見られることがあるので,上の写真の黒色鉱物は轟石かもしれません.小さすぎて判別できませんでした.
橄欖石です.上の方に写っている黒色部は普通輝石です.分解が始まっているのか,やけに黄色い橄欖石です.淡いところを探しましたが,この標本に入っている橄欖石はだいたい同じような色彩をしていました.