テフロ橄欖石の結晶?
最近も,店の二階を片付けていっています.要るものと要らないモノを分けて処分して行っています.
微細な黄鉄鉱を含む硫化の集合などは含水硫酸塩を吹いて分解していて,廃棄処分にしました.現場で細かい黄鉄鉱の入っているものはだいたい置いてきているのですが,硫化の集合となると少量は必ず入ってくるので現場での判別は難しい.マンガン鉱は新鮮だった破面はくすんでしまい,古新聞に包まれてても色は長持ちしないようです.大きさのある石だけ選別しました.
そのなかに滋賀県の立戸鉱山の高品位マンガン鉱があって,台風直後に訪問した旨が箱の側面に書いていました.数10㎏はありそうな小豆色炭マンで黒色金属光沢粒状のハウスマン鉱とチョコレート色塊状をなすハウスマン鉱が,アレガニー石と菱マンガン鉱からなる集合中にレンズをなし,それが全体に散らばっているような高品位マンガン鉱石でした.
箱の中に袋に入れたサンプルもそのままになっていて,「ブラウン鉱」と「ハウスマン鉱」「不明鉱物」の3つがありました.「ブラウン鉱」は前述の黒色粒状のハウスマン鉱で後日にXRDでハウスマン鉱であることが確かめられました.
チョコレート色のハウスマン鉱をサンプル用に分けていたのをすっかりわすれていたので,こちらと「不明鉱物」の方をサンプルとして残すことにしました.
「不明鉱物」はアレガニー石と菱マンガン鉱からなる小豆色炭マン中に,粒の荒いテフロ橄欖石?があり,この集合の一部に白色の重晶石が充填しているところがありました.白色で劈開がはっきりと確認できる重晶石で,当初は方解石と思っていました.
ほかの石を洗う時に,別のサンプルについていた白色の方解石様の鉱物を熱塩酸で処理したところ,赤褐色粒状のガサガサしたアレガニー石と海綿状に溶けた菱マンガン鉱,その空隙に充填した重晶石はそのまま残っていました.
粒の荒いテフロ橄欖石?は,成形の時に出た木っ端を熱塩酸で処理したところ,灰緑色だった部分は色あせて白色のゲル状の物質になりました.灰緑色粒状のはやはりテフロ橄欖石でした.
「不明鉱物」走り書きのあるサンプルの重晶石についた粒状部分が,不明鉱物の部分のようでした.上記のことから粒状をテフロ橄欖石かと思いましたが,暗い室内で判別できず,表面を少し洗ってから顕微鏡で観察することにしました.
双眼顕微鏡下での撮影.(非売品) 白色部は重晶石.暗灰緑色部はテフロ橄欖石.淡紅灰色はアレガニー石+菱マンガン鉱の集合.
顕微鏡を覗くと粒状と思っていた部分は結晶で,橄欖石族の鉱物なら苦土橄欖石と同じような結晶をするはずなので,結晶図を引っ張り出して面を確認しました.
少し拡大.中央の大きな粒の左横にも小さな結晶が2~3ついていました.小さな結晶の方は四周完全な結晶のようでしたが,小さすぎて結晶面の判別はしませんでした.
さらに拡大.この方向から見たときに結晶面に見える正面の面は,光の反射を試してみると,劈開面のようです.この劈開が{010}なのかはわかりませんでしたが,写真中央からやや右にある縦に入る線から顕微鏡のレンズ側の部分が欠如しているように見えました.
母岩を少し傾けて撮影した写真です.結晶図を見ながら面を確認してきました.021面と101面,欠損して半分以上が分かりづらくなっていましたが110面も残っていました.
角度を変えて撮影しました.中央の三角形に見える面がおそらく101面です.少し欠損していますが,反対側の面が残っていて101面のようです.
テフロ橄欖石の検索をしていると,ほぼ例外無しに国産の標本は灰緑色油脂光沢の上,塊状の標本が掲載されいました.海外の標本は結晶していて本邦と海外の差を感じられました.今回のこの結晶は多少の欠損はしているものの照りも良く,透明感がありました.他の現場でもこういう結晶がありそうなので注意してみていきたい.で,掃除して標本にした際に写真に撮りましたので掲載しました.