いくつかの研磨した石205
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兵庫県朝来市(旧朝来町)納座 金里鉱山のばら輝石を一面研磨しました.地名は「かなさと」ではなく「かなり」と読むらしい.地形図上で旧朝来町納座の卍(お寺マーク)の南東直距離約1190mの谷付近にあった鉱山です.近くに同じような鉱床の青倉鉱山があるらしいのですが,位置がはっきりしませんでした.青倉神社の直下の旧参道に別の青倉鉱山があり,こちらは生野鉱山に似た金属鉱床で,自然銀や斑銅鉱・閃亜鉛鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・石英・灰重石などを産しました.別の文献で青倉鉱山の項にマンガン以外に銅鉱床もあるというような記述があり,ややこしい.青倉神社の直下にある青倉鉱山ではマンガンは全く見当たりませんでした.あるのは金属ばかりでマンガンの気は感じられませんでした.金里鉱山はこの青倉鉱山と尾根を挟んだ至近の距離にあり,かつては青倉鉱山のマンガン鉱床として鉱山の一部に時代もあったのかもしれない.
現場は汚いばら輝石ばかりでした.金属はマンガンの絡みのない塊状の磁硫鉄鉱がありました.同じ坑道から出たのかは不明で,鉱山の前の沢筋は古い峠道のようで,前出の青倉鉱山を鉱石の搬出路にあたったのかもしれません.
上の標本は初めて行ったときにサンプリングした石です(1回しか行ってませんが).繊維状のばら輝石でしたので非常に堅く成形しづらい石でした.裏面に二酸化マンガンの酸化被膜が一面に覆っていたのでこの面を研磨しました.
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繊維状のばら輝石(部分拡大しています).繊維の粗い部分はやはり堅いので歪な形になってしまいました.
(研磨) 肉眼的にばら輝石だけの集合なので,非常に硬いと踏んで磨り始めました.磨って行くと案外柔く菱マンガン鉱が混入しているようでした.試しに破片を熱塩酸で炊いたところ激しく発泡したのを確認しました.菱マンガン鉱のようです.粒の粗いばら輝石の粒間を菱マンガン鉱で埋めているような産状でしたので,もっと粗いものを探して塩酸で炊いてみると結晶が得られるかもしれない.次回の探索で課題としたい.
炭酸塩が入っているので,平滑にするのはそんなに時間はかかりませんでした.平滑になったので,中削りで#1000の砥石で少し磨ったあとで,仕上げに取り掛かりました.
いつも使用している黄白色の砥石で磨っていたのですが,明らかに砥石が負けているので,中途半端に風化した硬い青砥に替えて磨り始めました.
青砥に替えてから多少時間を要しましたが何とか光沢が出てくれました.細かく表面を観察すると,粗いばら輝石の部分だけ光沢が出て,間隙を埋めるように入っている菱マンガン鉱が凹んでいるようになっていました.見た目にはまっすぐになっているように見えるんですが,細かくみるとムラができていました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
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ばら輝石(帯褐紅色)と菱マンガン鉱(淡桃色)が主体のようです.菱マンガン鉱はやや光沢のないボヤーっとした淡紅色で,不定形塊状で入っているようでした.黒色部は割れ目に染みた二酸化マンガンです.諸所に鉱石を切る脈は石英で,かなり細かい雲母類を伴っていました.
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この鉱物の集合の一部にかなり結晶質なばら輝石の部分がありました.結晶の間に二酸化マンガンに染みが入り込んでいます.
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こちらも結晶質なばら輝石の部分の拡大です.上の写真のすぐ近くにありました.
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磁硫鉄鉱です.黄鉄鉱はこの石には,たまたまとは思いますが入っていませんでした.