いくつかの研磨した石202
京都府南丹市園部町口司 口司鉱山の菱マンガン鉱―アレガニー石からなる鉱石を一面研磨しました.口司鉱山は亀岡市との市境界にある八ヶ尾山の北斜面にあった鉱山です.南にある行者山花崗岩に近く,この付近の堆積岩はホルンフェルスになっているようです.鉱山の西にある国道477号の殿谷トンネルの工事中に,黒雲母ホルンフェルスが大量に出て,光に反射してキラキラしていました.トンネルの工事中は筆者の高校生の頃で,当時はまだ峠の旧道を通っていました.口司側のトンネル出口東側にトンネルから出た土砂が積んでありました.
現在はトンネル工事も終わり,峠を通っていた国道もトンネルの方になり,旧道はフェンスで封鎖されました.口司鉱山へは高校の時に2度探しに行きましたが,見つけることが出来ませんでした.そのあとしばらく経ってから見つかりましたが,上の標本を入手したため,いまだ訪問できていません.
上の標本は購入品です.サンプル(ロカリティサンプル)として一つは置いておこうという方針から購入しました.表面にラメのようにキラキラ反射する鉱物がついていて,ルーペで観察すると鉱石を切る石英脈中に白雲母がたくさん入っていました.グライゼンのような石英脈で,どこかに金属もいるかもしれないので,裏面を磨ってみることにしました.
(研磨)基本的に炭マンなので,石英が混入しているものの量が少ないことや白雲母を含んでいるため,容易に磨れそうと予想して磨り始めました.いつもは比較的平坦な面を選んで研磨するのですが,層状になった部分が1面しかなかった.凹凸の起伏があるがやむを得ず,おおきな凹凸のあるこの面を研磨しました.
はじめに一番尖って出っ張っている部分から,標本の正面と肉眼的に並行になるようにして磨りました.硬い鉱物の集合なら途中で頓挫してしまうところでしたが,この石は予想通り軟らかい石でしたので続けて研磨出来ました.
標本の左右から異なる方向へ磨ったため,中央に角が出来てしまいました.はじめからそれを予想していましたので,角を取って両端に研磨面が合うまで削りました.両端と真ん中の角の部分が合うと,標本の正面と肉眼的に並行になって粗削りを終えました.
仕上げは#2000のペーパーで軽く磨った後に,黄白色の砥石で磨ると光沢が出てくれました.
(以下顕微鏡下での観察です)
黄色っぽい白色は主に菱マンガン鉱からなっています.その中に灰桃色のアレガニー石を含んでいます.
さらに拡大しました.
ぼやーっと鱗状に見える淡桃色部が菱マンガン鉱です.アレガニー石は右上の端の方に少し入っていました.
黄鉄鉱です.どこにでもできる鉱物です.
かなり小さく,粒がはっきりせず写ってしまいました.肉眼的には劈開のある黒色の粒で,閃亜鉛鉱でした.周りの灰桃色はアレガニー石,白っぽく写っているのは菱マンガン鉱です.
鉱石を切る石英脈中の白雲母です.石英脈の中央にはあまり無く,鉱石と接する面に生えているように見えました.
以下は鉱石の研磨面ではない表面の拡大写真です.
灰桃色―淡褐色部がアレガニー石です.
金属は黄鉄鉱と閃亜鉛鉱だけかと思っていましたが,黄銅鉱もありました.銀白色に光って見えるのは黄鉄鉱.
閃亜鉛鉱.かなり小さいですが,劈開があったため閃亜鉛鉱と判断しました.
石英脈中のやや肥大した部分に入っていた肉眼的な白雲母です.白雲母はこの部分だけではなく,石英脈が切っている部分に普通に伴われていました.