鉱物の顕微鏡写真75
―鉄礬石榴石―
産地:Granatenkogel north slope, Gaisberg valley,Obergugl, Gurgler valley,
Ötz valley, North Tyrol, Tyrol, Austria.(非売品)
Almandine 鉄礬石榴石
[組成] Fe3Al2[SiO4]3
[結晶系] 立方晶系.結晶は偏菱二十四面体や斜方十二面体.
[色]:淡紅色・赤色・褐赤色・帯紫赤色・濃赤色・黒色.
[光沢]:ガラス光沢.
[モース硬度]:7~7.5
[比重]:4.31
[劈開]:無し.変な方向に裂開があることがある.
[条痕]:白色~灰色.
次は石榴石にしました.何か普通に産する鉱物を,と考えたら石榴石になりました.鉱物をやり始めて野外で鉄礬石榴石に出会ったのは,始めて8年くらい経った大学生のころで,ペグマタイトにはまりかけていました.現場は市街地に近い長垂山で,当地はリチウムペグマタイトで有名な現場ですが,普通のペグマタイトもあって,リチウムのあまり入ってこないペグマタイトにかなりふんだんに入っていました.亜鉛スピネルや藍電気石,割れ目に燐灰ウラン鉱などが入っているペグマタイトで,野外に出てここで初めて出会いました.
母岩は花崗岩・花崗岩質ペグマタイト・デイサイトあるいは流紋岩・泥質ホルンフェルス・結晶片岩・安山岩・榴輝岩・グライゼン・砂岩などから産し,アルミニウムに富む岩石から産する傾向があるようです.
上の標本は海外産ではじめに入手した鉄礬石榴石の産地で,標高の高いところから(標高約2650m)産したそうです.母岩はプレカンブリアンの雲母片岩だそうで,細かい白雲母が観察すると入っていました.
産地:Bella Vista mine, Mitkof island, Petersburg borough, Alaska, USA.(非売品)
二枚目の写真は宝飾用のガーネットを産している鉱山のもので,粒が大きく光沢が強く,透明感もあって母岩から外れているものの深い赤色を呈しています.こちらも母岩は黒っぽい雲母片岩から産しているそうです.写真中央の結晶の直径は約12mm.
以下,本邦からの標本です.
産地:三重県伊賀市大山田 馬野渓.(非売品)
領家帯の花崗片麻岩中の珪長岩質の部分に密集していた鉄礬石榴石です.顕微鏡での撮影です.粒は最大約3mmと小さいですが光沢が強く,透明感もあり拡大するとなかなかキレイです.結晶の大きな石榴石もありましたが,汚いんです.灰白色は石英,白色部は長石です.
産地:三重県津市白山町山田野 白山鉱山(非売品)
こちらも領家帯の花崗岩―片麻岩中のペグマタイトより産した大きな結晶です.直径は約40mmあります.掃除が大変だった標本で,サンプリングしたときは二酸化マンガンに覆われて真っ黒でした.過酸化水素と塩酸でここまでキレイになりました.接写での撮影です.
産地:福岡県田川郡川崎町安宅小峠.(非売品)
学生のころ博多から電車を乗り継いで田川後藤寺まで行き,英彦山線に乗り換えてさらにバスで到達した思い出のある現場です.朝6時頃に出たのに現場についたのは10時ごろでした.当初はやはり当地の目玉ともいえる閃ウラン鉱を狙っていたのですが,一つサンプリングするとどういうわけか飽きてきて石榴石や鉄橄欖石・白雲母に変質した鉄菫青石の方に目が行って,石榴石もサンプリングしました.燐灰ウラン鉱が結晶のすぐ横に入っているというコントラストのいい標本になりましたが,今回は別のところで入手した標本を掲載しました.写真の結晶の大きさ手前のもので約8mm.標本はペグマタイト中です.顕微鏡下での撮影.
産地:茨城県桜川市真壁町山の尾(非売品)
有名なペグマタイトの山の尾の鉄礬石榴石です.関東のコレクターとの交換で入手しました.結晶の大きさ約8mm.顕微鏡下での撮影.
産地:京都府木津川市加茂町川原 通称 法花寺野.(非売品)
採石場がなくなってずいぶん経ちましたが,稼働当時の標本です.当地は南山城地域の中心的な鉱物産地のようになっていました.古くは珪岩中の変成マンガン鉱床があったそうで,採石中に下部の珪酸マンガン鉱体が出てきました.マンガンだけではなく,ペグマタイトや非マンガンスカルンも一か所に産する面白い現場でした.上の標本はのちに購入しました.母岩が堅くて割りづらい花崗岩質岩で,キレイに成形されている標本を探しました.この写真は接写で撮影しました.最大の結晶で約10mm.
産地:香川県さぬき市津田町雨滝山.非売品.
安山岩中に入っていた鉄礬石榴石です.四国に行ったときに近くを通りましたが,手持ちの文献に山登りを少ししないといけないようなことがあって,時間的に寄れませんでした.上の標本は購入品です.粒が小さいので顕微鏡下で撮影しました.直径約5mm.
産地:山梨県鳴沢村足和田山(非売品)
富士山の北側の河口湖に近い足和田山の鉄礬石榴石です.デイサイト中のものです.粒は小さいですが透明感のある標本です.関東のコレクターとの交換でオマケとして入っていた標本で,のちにお礼したところ「こんなもので喜んでくれるやつはお前くらい」って言われました.近畿地方の現場のものとは異なる産状をしていたので,今もしっかりと標本箱に入っています.結晶の大きさは約3mmで,顕微鏡下での撮影です.
産地:岐阜県恵那市笠置町河合鉱山(非売品)
小さい標本でしたが,ルーペで観察したところ透明度が高くかつ照りもいいので購入した標本です.現場は昭和のはじめに亜鉛鉱を目的として試掘された鉱山だそうで,硫カドミウム鉱を産出で知られています.母岩は非常に鉄とアルミニウム分に富んだホルンフェルス様の岩石で,鉄雲母・石榴石・角閃石からなっています.ほかの標本もいくつか見ましたが,ここまでキレイなものは無いようです.粒の大きさは約3mmで顕微鏡下で撮影しました.
産地:埼玉県吉見町北吉見根古屋.非売品.
片麻岩中の鉄礬石榴石です.交換で入手しました.粒はやや大きいのですが,風化に母岩が弱いらしくやや脆くなっています.色が薄いのでパイロープ成分も入っているのかもしれません.粒の大きさは最大約4mmで顕微鏡下で撮影しました.
産地:埼玉県東松山市東平新田.(非売品)
こちらも交換で入手した標本です.先方より「面白いのが,入っているから」と連絡を受けて入っていたのがこれでした.結晶片岩~片麻岩中の石榴石で苦礬石榴石成分の入っている石榴石とのことでした.11枚目の写真の標本とは異なり,母岩はしっかりしています.色がやや淡く,照りも抑えめになっています.黄色っぽい部分は割れ目にできた黄鉄鉱.接写で撮影.
産地:滋賀県湖南市三雲(字)畑.非売品.
田上山の盟主と云われた方から頂戴しました.変なホルンフェルスに入っている石榴石で,一部にコランダムも出たそうです.照りは強いのですが色がやや淡い感じがしてほかの成分に富んでいるのかもしれません.結晶の大きさは約1mmで,顕微鏡下での撮影です.
産地:熊本県八代市坂本 八幡滝.(非売品)
学生のころの採集品です.文献に「片状単斜輝石石榴石グラニュライト」という名称があって,名前に惹かれて訪問した時にサンプリングした標本です.熊本まで高速バスで行って,さらに3時間かかった覚えがあります.滝までは行きましたがどんな岩石かわからず,適当にサンプリングしたところ,最後の1つでヒットしました.成形すると一個しか標本に採れませんでした.見かけは四国の三波川帯で見るような石榴石片岩に見えますが,それよりもっと均質で全体的に色が淡いので,花崗岩とサンプリングしたときは思っていました.にわかにオレンジ色味を帯びた鉄礬石榴石で結晶の形があまりはっきりとしていません.入緑色部は単斜輝石です.石榴石の照りもあまりなく,鉱物標本というより岩石標本で登録しています.粒の大きさは1mm前後で,顕微鏡下での撮影です.
産地:奈良県香芝市穴虫.非売品.
大和川流域の砂鉱中の鉄礬石榴石です.広く産するので研磨材として利用されていました.粒の大きさは1mm以下で顕微鏡下で撮影しました.当地の鉄礬石榴石はネオジム磁石に引き寄せられ,笊を使用するよりも楽に集められました.ただ磁鉄鉱がなかり混入してきますので,あらかじめパンニングで選り分けてから選別しました.それでも少量のほかの鉱物が混入していて,写真でも灰白色で細長い輪郭をした珪線石が混じっています.