鉱物の顕微鏡写真72
―ベスブ石―
産地:Sierra de Cruces, Mun. de Mojada, Coahuila, Mexico.(非売品)
Vesuvianite ベスブ石
[組成]:Ca19Al11(Mg,Fe)3[(OH,F)10|(SiO4)10|(Si2O7)4]
[結晶系]:正方晶系.
[色]:黄白色・灰黄色・黄緑色・褐緑色・青緑色・灰緑色・緑色・淡青色・茶褐色・
橙色・桃橙色・淡桃色・褐桃色・深赤色・赤褐色・赤紫色・黒色.
[光沢]:ガラス光沢.塊状のものは鈍くなるように見える.
[晶癖]:四角柱・四角錐・繊維状.ほか放射状集合や塊状になることがある.
[モース硬度]:6.5
[比重]:3.32~3.43
[劈開]:{110}に2方向に乏しい.{100},{001}二方向に不完全.
劈開無しの文献もあった.
[条痕]:白色.
[原産地]:Monte Somma,Somma-Vesuvias complex, Neples,Campania, Italy.
ほか,アイドクレース(Idocrase)ともいう.
顕微鏡観察シリーズを久々に更新します.今回はベスブ石にしました.以前にマンガン置換体のマンガンベスブ石を,色彩が美しいという基準だけで書きました.
この石との出会いは25年以上前で,中学生の頃でした.簡単な図鑑に大した元素も入っていないのに,やたら組成の長ったらしい鉱物が載っていて,なんちゅーもんやねん..と思っていました.いつだったか講演会である先生が,ベスブ石の組成を何も視ずに,板書されて歓声が上がったことを覚えています.
スカルン中に普通に産することが,野外へ出ているうちに判って,石榴石との判別が難儀な鉱物としてずっと引っかかっていました.今は色と光沢,スカルンの共存鉱物の感じで判別できるようになりました.
上の標本は5年くらい前の大阪ショーで購入しました.黄色の部分がベスブ石で,ほかに灰色の石榴石と紫色のホタル石を伴っています.色彩のバリエーションの多い鉱物ですが,全て紹介していたらきりがないので,野外で見かけそうな標本を選びました.
産地:Crestmore quarrys, Riverside county, California, USA.(非売品)
立派な結晶の写真は各サイトで紹介されていましたが,グレードの低い標本も掲載してします.二枚目の写真はUSAの砕石場からのもので,高温スカルンの鉱物を産しているところとして比較的有名のようです.理想的な結晶なら一目で判別できますが,こういうのを見ると石榴石との判別が難儀になります.
顕微鏡写真です.粒状のベスブ石はこんな感じで,見慣れないとなかなか判別できません.白色部は方解石です.一面研磨等で磨っていると,石榴石とは硬度がやや低いことで判別できました.
以下は国産の標本です.
産地:埼玉県秩父市 秩父鉱山石灰沢(非売品).単結晶で大きさは45㎜あります.時間をかけて希塩酸で処理した上,表面を掃除して出しました.結晶面がうまく写るように工夫しましたが,あまりうまく行きませんでした.
産地:岩手県奥州市江刺区伊手 赤金鉱山栄鉱床(非売品).塊状のベスブ石です.白っぽい部分はわずかにしかついていませんがフォシャグ石で,高温スカルンのところから産したようです.以前に一度,切断して研磨してみましたが,なんてことの無い,ウグイス色の出来損ないの羊羹のようになっていまいました.もっと色彩のきれいな緑色のベスブ石もあるらしく,標本を見たところでは,宝飾用に使用できそうな色合いでした.
産地:静岡県浜松市中区引佐町西黒田(非売品).塩基性岩を切る褐色の脈をなすベスブ石です.産状はスカルンだけでは無く,塩基性岩中にも出てきました.(写真は顕微鏡写真です).
産地:大分県佐伯市宇目藤河内 犬流れ(非売品).ベスブ石の標本の著名な産地として知られる岩戸銅山の標本を写真撮影用に探したのですが,いまひとつの標本で,大きさのある犬流れのベスブ石にしました.結晶面が腐食していますが,50㎜以上の大きさがあります.
産地:滋賀県湖南市菩提寺浪岩山(非売品).
15年くらいまえの採集会でサンプリングした標本です.3月の中旬ころの開催で,前が見えないくらいの花粉の症状の中,イライラしながら観察した思い出のある現場です.スカルン中から産した標本です.赤褐色の部分は灰礬石榴石で,ベスブ石は左端の方についている灰緑色―暗緑色部です.ベスブ石の近くの裂罅に紫外線で蛍光する玉滴石もついていました.
産地:京都府木津川市加茂町河原.通称,法花寺野(非売品).10年以上前にサンプリングした,珪岩中のベスブ石です.石灰質のレンズが含まれていてその周囲に赤褐色粒状のベスブ石が付いています.白色繊維状部は珪灰石.暗黒色―帯青黒色部は珪岩です.
産地:京都府亀岡市西別院町焼山(非売品).道路の拡張工事中に出た土砂の中から見つけたベスブ石です.付近は砂岩質のホルンフェルスですが,レンズ状で変質した石灰質凝灰岩を含んでいてその周囲に少量産しました.顕微鏡でかなり拡大しています.
産地:福岡県福岡市西区今宿青木 長垂山(非売品).学生の頃にサンプリングした標本です.リチウムペグマタイトで有名な現場ですが,スカルンもあったようです.リチウムのズリから出た標本では無く,上の方の石切場付近にありました.後で耳にした話ではトンネル掘った時に産出したとかで,よくも残っていたんだな~っと思っています.繊維状に見える部分がベスブ石です.ほかに方解石を伴っています.
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