鉱物の顕微鏡写真65 ―コフィン石―
産地:Ambrosia Lake area, Mining sub-district, McKinley Co., New Mexico,
USA.(非売品)
Coffinite コフィン石
組成:(U,Th)[(OH)4X|(SiO4)1-X] 正方晶系.
色:灰色・灰黒色・黒色・褐黒色.
光沢:鈍い金剛光沢とある文献もあるが,肉眼的には土状光沢ないし無光沢.
晶癖:多く鉱染状で土状.結晶は稀.粒状は薄片下で観察できるよう.ほか腎臓状・ぶどう状・繊維状があるらしい.
モース硬度:5~6.
比重:5.1
条痕:灰黒色―帯灰黒色.
強い放射能がある.脆い.
見た目,アスファルトの塊のように見える鉱物です.強い放射能があり,ルーペで直接観察したくない鉱物の代表です.当方が所有している鉱物の中ではトップクラスの強さがあり,なんとなく怖いので,普段は下のような感じで保存しています.
この標本は20年くらい前に,某所でソ連製のガイガーカウンターを購入した時に,検査用としてほかの店で購入したコフィン石です.当時はガイガーカウンターと云ったら廉価なものは,胡散臭いソ連製のものしかありませんでした.
5年ほど前にその胡散臭いソ連製のガイガーカウンターの液晶が壊れたので,国産に買い替えました.今回,これを書くに当たって,久々に封印していたこの石を間近で観察しました.石の内部に含まれる硫酸イオンの所為で,小袋に入れていたのが,ボロボロになっていて,これを新しいのに交換するときに始めの一枚は撮影しました.
それから新しく購入したガイガーカウンターで簡易的に計測してみました.
やっぱし 強い値がでてきました.さっさと顕微鏡観察をして封印することにしました.
鉱物的にはジルコン(Zircon)のグループの鉱物だそうで,類似の鉱物にトール石(Thorite)やトロゴム石(Thorogummite)があってこちらも放射性鉱物です.組成的には色の入るような元素は入っていないので,純粋なコフィン石には色が無いはずです.炭素物質を交代したり,吸着されたりして産しているので,いろが黒くなるようです.主にコロラド型ウラン鉱床と呼ばれる堆積性の鉱床に産出します.上の標本も同じタイプに入るようです.砂岩や泥岩中に鉱染するタイプで,一部は明らかに膠着物質として産しているように観察できました.ほか鉱脈鉱床からも産しています.このタイプの鉱床には蛍光鉱物の燐灰ウラン鉱やアンダーソン石・リービッヒ石などの含ウラン鉱物が伴っていそうですが,短波紫外線で確認したところ上の石には,含まれていませんでした.
(以下,顕微鏡下での撮影です)
コメントをしようが無い顕微鏡写真となりました.灰黒色―黒色の煤のような部分がコフィン石です.母岩は砂岩のようです.顕微鏡写真の3枚目の写真の比較的まとまった白色の部分は,内部に含まれる黄鉄鉱などの硫化鉱物の分解物です.
比較用に国産標本も掲載します.
産地:京都府京丹後市弥栄町須川露頭.(購入品で非売品)
凝灰岩質砂岩の裂罅に着く炭素物質に吸着されるコフィン石です.写真の上部の黒色部に含まれています.標本にはほかに短波紫外線灯でレモンイエローに蛍光する燐灰ウラン鉱も含まれていました.
上の写真の拡大写真です.右上の黒色部に含まれています.量が少ないのか放射能は殆どありません.
産地;京都府京丹後市弥栄町等楽寺露頭(知人より提供された標本で非売品です)
こちらも須川と同じような産状の標本ですが,炭質亜炭に吸着されるコフィン石です.諸所に白いのが入っていますが,少量の硫化鉄による分解物です.
拡大写真です.石炭にしか見えません.これを拡大しようと試みたのが失敗でした.黒っぽい塊状にしか見えません.
勢いで2枚撮ったので,ついでに掲載します.この石は含まれている量が多いのか,多少の放射能がありました.