鉱物の顕微鏡写真63
―パラピエロ鉱,アヴィセンナ鉱―
(正面)
(裏面)
産地:Loolout pass, Tallium prospect, Little valley, Sheeprock Mts,
Tooela Co., Utah, USA. (OY社で購入,非売品)
Parapierrotite パラピエロ鉱(パラピエロタイト)
(組成):TlSb5S8 単斜晶系
(色)黒色・鋼灰色.表面は錆びると青色味や紫色味を帯びてくる.
(光沢):金属光沢~亜金属光沢.
(モース硬度):2.5~3
(比重):5.07
(劈開):一方向に良好.
(条痕):黒色.
(名称)Pierrotiteに似ているところより.
PierrotiteはRoland Pierrot(1930-98)に因む.
Avicennite アヴィセンナ鉱
(組成):Tl2O3 立方晶系
(色):灰黒色・灰褐色・黒色.錆びると青色味や紫色味を帯びてくる.
(光沢):亜金属光沢.
(モース硬度):1.5~2.5
(比重):8.9
(条痕):灰黒色・灰褐色.
しのぶ石状や樹枝状の集合になりやすい.
(名称):中世中央アジアの学者,
Abŭ Alí al-Husayn ibn Abd Allāh ibn Sina(980-1073)に因み,
英語表記のAvicenna(アヴィセンナ)に依る.
10年くらい前によく解らず購入した標本です.見た目黒っぽい母岩中に鋼灰色に見える微細な鉱物と思っていました.調べていくうちに,カンブリア紀の有機質チャートということを知り,興味が湧いてきました.母岩をよく観察してみると,金属鉱物を含んでいる部分は脈のようになっていて,その周囲が玉髄質になっていました.見た目,珪化した黒っぽい凝灰岩のような石です.
表題のパラピエロ鉱とアヴィセンナ鉱はともにタリウム(Tl)を含むやや珍しい鉱物です.パラピエロ鉱は前述の通り鋼灰色でやや劈開の発達した金属光沢の鉱物で,母岩中に含まれている岩片を交代したり,やや粗くなった石英中に粒状で入っていたりします.
後者のアヴィセンナ鉱は母岩のチャートの割れ目にしのぶ石(Dendrite)様の集合している部分です.ほかに母岩の空隙に生えている細かい水晶の上をコーティングしたものもありました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
中央の鋼灰色金属光沢部がパラピエロ鉱です.一部が帯紅褐色の紅安鉱になっています.
中央やや右よりの俄かに青色味を帯びた金属鉱物がパラピエロ鉱です.本鉱物の左にある真鍮色部は白鉄鉱とのこと.腐ってこなければ良いが..
別の部分に付いているパラピエロ鉱.錆びたのか青色味や紫色味を帯びています.周囲にクリーム色の分解物を伴っています.アンチモンの二次鉱物とのことです.
こちらがアヴィセンナ鉱です.チャートの割れ目に染まるような感じで入っているものです.表面は錆びたのか青色や紫色に変色しています.
別の部分の拡大写真です.こちらは余り錆びていません.白色―淡黄色部はアンチモンの二次鉱物です.
こちらは,空隙に生える細かい水晶の上をコーティングしたアヴィセンナ鉱です.購入時に矢印で指示されていた部分です.
そのほかの鉱物.この標本の産地ではほかにいくつかのアンチモンの二次鉱物が産しているようです.そのうち判ったものを顕微鏡写真に撮ってみました.
アンチモンの二次鉱物の集合.方安鉱やヴァレンティン鉱,セルヴァンテス石などの集合とのことです.肉眼ではほぼ判別不可能です.
写真中央の小さな空隙に入っている橙色の粒の部分です.元ラベルにトリプヒー石が入っているようなことがあった.文献などで調べると,この粒がそうらしい.
更に拡大したものです.
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