鉱物の顕微鏡写真62
―セチアイト,チェルヴェット石―
(標本の正面)
(標本の裏面)
産地:Posepný vein outcrop, Vrančise, Příbram district,
Central Bohemian region, Czech. (OY社で購入.非売品)
Čechite セチアイト
(組成):PbFe[OH|VO4] 直方晶系
(色):黒色・黒褐色.
(光沢):亜金属光沢~油脂光沢.
(モース硬度):4.5~5
(比重):5.88
(条痕):黒色.
アデル石―デクロアゾー石グループ.
Chervetite チェルヴェット石
(組成):Pb2[V2O7] 単斜晶系
(色):無色・灰色・白色・褐色.
(光沢):絹糸光沢.
(モース硬度):2~2.5
(比重):6.3~6.49
(条痕):白色.
数年前の京都ショーでよくわからず購入した標本です.全体的の黒っぽい標本で,矢印が付いていなければ肉眼的にわかる鉱物は赤鉄鉱くらいでした.
目視で全体的に多く入っている鉱物は前述の通り赤鉄鉱で,目的の鉱物は矢印の先の黒色粒状の部分と,その周りにある白色繊維状でした.
産地の現場は花崗岩らしい岩石の中の鉱脈鉱床の露頭のようで,いろいろな二次鉱物を産しているようです.後述しますが,結構たくさんの鉱物がこの標本にもついていました.
ともにヴァナジン酸塩の鉱物で鉛(Pb)を主成分にしています.二次鉱物の割には大きい比重があり量が少ないためか,手に取ってみるとその重さはそんなに感じなかった.
(以下,顕微鏡下での拡大写真です.)
かなり拡大しています.黒色粒状がセチアイトです.(この部分に矢印の先が来ていました) 白色部はチェルヴェット石.
こちらは標本の裏面についていたセチアイトです.褐色は酸化被膜かヴァナジン鉛鉱.下の方に写っている黒色金属光沢部は赤鉄鉱.
写真中央部の繊維状部がチェルヴェット石です.黒色のセチアイトを伴っています.
5枚目の写真の拡大です.
ほかの部分に付いていたチェルヴェット石です.俄かに黄色味を帯びています.
そのほかの鉱物.
セチアイトとチェルヴェット石以外に,目視では赤鉄鉱が多いようだと前述しました.判りやすい赤鉄鉱です.
赤鉄鉱.同心円状に集まった赤鉄鉱が腎臓状の集合をなすものです.
こちらも断面の見える赤鉄鉱です.
ほか肉眼的な鉱物は脈状になっている部分ですが,見た目でドロマイトか方解石だろうと思っていました.夜中に短波紫外線灯で暗い中遊んでいたところ,
この標本があり,試しに照射してみました.
こんな感じに蛍光しました.セチアイトやチェルヴェット石のある部分は殆ど蛍光がありませんでした.主に蛍光している部分は自然光で白色や灰色・淡紅色を呈している,ドロマイトや方解石だろうと思っていた部分でした.
裏面です.
資料を漁っていると短波紫外線灯で蛍光している部分は濃赤色が方解石,そして橙色はヘディフェン(Hedyphane Pb3Ca2[Cl|(AsO4)3] 六方)という鉱物でした.ミメット鉱の鉛の一部をカルシウムに置換したような組成の鉱物です.それがこんなにキレイに蛍光するとは思っていなかった.大部分はこのヘディフェンという鉱物のようでした.
短波紫外線灯で遊んでいると,見慣れない黄緑色の蛍光する部分があって,これも写真に撮ってみました.
写真の下の方に少しだけ見える黄緑色に蛍光している部分.
Web上で調べていると当地にも珪亜鉛鉱(Willemite)の産出があり,ヘディフェンと一緒に蛍光している写真が幾つも投稿されていた.産状から珪亜鉛鉱のようだ.
それからラベルを新調した時(ついさっき)に補足的に調べていると,ほかにヴァナジン鉛鉱や閃亜鉛鉱も入っているようで,顕微鏡で改めて確認すると,粉みたいな褐鉛鉱と,赤鉄鉱に少し石英を混入したような部分に閃亜鉛鉱が入っているのを確認しました.
いろいろな鉱物が入っていてなかなか楽しめた標本でした.
(追記)
それからようやく,Åのような発音用の記号が出せるようになりました.今まで出てきた鉱物に少しづつ直していきたいと思っています.