鉱物の顕微鏡写真46
―Siderite 菱鉄鉱―
産地;Roxbury Iron mine, Mine Hill, Roxbury, Litchfield Co.,
Connecticut, USA.(非売品)
Sideirite 菱鉄鉱
[組成] Fe[CO3] 三方晶系
[色]:黄色・黄白色・黄灰色・黄褐色・淡褐色・灰褐色・赤褐色・帯赤褐色・
帯緑褐色・暗褐色・黒褐色・灰黒色・黒色.
[形態]:結晶・球状・ノジュール・皮膜状.
[光沢]:亜ガラス光沢―絹糸光沢.
[モース硬度]:3.5~4.5
[比重]:3.96
[劈開]:3方向に完全.(1011)
[条痕]:白色.
塩酸に可溶.
名称はギリシア語の鉄(Sideros)の意より.
顕微鏡写真の画像を整理していたら,炭酸塩鉱物のみ未だ紹介していないのに気づきました.多くある炭酸塩鉱物のうち,纏まって標本数のあった菱鉄鉱にしました.標本を引っ張り出して,接写できるものはそのまま接写し,顕微鏡下で撮影しないとならないものはのちに顕微鏡下で撮影しました.菱鉄鉱は産状が広く,観察に出かけるとちょくちょく顔を現すのでストックしていました.色彩が暗い所為か人気のない鉱物のようで,いい標本にはあまり出会いませんでした.それでも古い標本が出て居れば購入していました.上のの写真は古くから出回っている産地のもので,方解石に似た劈開があり色彩も教科書通りなので取り上げました.
[以下は顕微鏡写真で,国産の標本です]
産地:岡山県久米郡久米南町塩之内(非売品).かなり変質した凝灰岩質岩を切る炭酸塩の脈の空隙に入っている菱鉄鉱です.母岩の多くが粒状や球状ですが,空隙に最大2㎜の自形結晶が入っていました.
産地:京都府福知山市大江町河守鉱山3号坑(非売品).大江山・河守超塩基性岩(主に蛇紋岩からなる)に胚胎した正マグマ性鉱床の脈石である蛇紋岩の割れ目にできた菱鉄鉱です.一見してほかの珍しい鉱物と思ってXRDで確認したところ菱鉄鉱でした.表面が錆びているのか見る方向によって虹色のような色が出る石です.
産地:京都府京都市北区鷹峯護法ヶ谷 吉兆鉱山護法谷鉱床(非売品).丹波Ⅰ型の堆積岩中に胚胎する殆ど熱変成を受けていない層状マンガン鉱床より産した菱鉄鉱です.当初は色彩と共存鉱物,繊維状の晶癖からカーフォル石などの小珍しい鉱物と思って期待しましたが,菱鉄鉱でした.写真中央部の黒っぽいところが菱鉄鉱の晶洞で,表面に二酸化マンガンの染みを伴っていますが,菱鉄鉱の結晶が生えています.
産地:滋賀県湖南市岩根花園 吉山石切場跡(非売品).野洲花崗岩(主に優白色の花崗岩類からなる)の石切場跡より産した菱鉄鉱です.あまり晶洞の無いタイプの花崗岩のようで,この石はちょっとした空隙の長石の表面についています.
産地:奈良県奈良市三笠山水谷川(非売品).奈良公園の背後にある三笠山安山岩中の空隙に産した菱鉄鉱です.随分古い標本で島津の標本部の標本だそうで,大きさとコントラストの良さから気に入って購入しました.母岩の部分にもちょっとした隙間があれば菱鉄鉱ができていて,周りに必ずと言っていいほど,白色の玉髄を伴っています.
産地:長崎県東彼杵郡東彼杵町虚空蔵山の林道法面露頭(非売品).こちらも火山岩の空隙にできた菱鉄鉱です.葡萄の房のような球状集合体をしています.一部に割れた面もあったので拡大してみました.同心円状をしています.
産地:石川県白山市(旧吉野谷村)瓢箪谷(非売品).凝灰岩中の空隙に細かい水晶と一緒に晶出した菱鉄鉱です.色彩がキレイでお気に入りですが,サイズが小さく顕微鏡でないとわからないのが欠点です.変わった産地名で購入したものです.
産地:栃木県鹿沼市引田鉱山(非売品).表面はやや酸化して褐色になっています.
産地:千葉県南房総市和田町五十蔵(非売品).いわゆる「鉄丸石」とか「へそ石」と呼ばれるノジュールです.形が気に入り購入しました.ラベルには「菱鉄鉱」の名前が記載されていました.表面に鉄錆が付いていてそれらしいと思っていましたが,苦土の多い方解石が主成分でほかに石英が混入したものであると,のちに知りました.保田層群の堆積岩中に挟まっているものだそうです.
産地:高知県室戸市室戸岬(非売品).数年前の大阪ショーで以前に安陪川流域の鉄丸石を購入した店で,室戸岬の鉄丸石があったので購入しました.安陪川のものは瓢箪のような形で面白いですが,こちらはもっと硬質で重みがあるようでした.以前に菜生層に挟まっている亜炭を採鉱していた炭鉱に行ったときも,泥岩中にこういう形のノジュールが入っているのを観察しましたが,どういうわけかサンプリングしておらず手元にありません.こちらの鉄丸石は炭鉱とおなじ菜生層の泥岩中より出るそうです.
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