いくつかの研磨した石122
京都府亀岡市高村鉱山のハウスマン鉱―ヤコブス鉱からなる,比較的高品位マンガン鉱石の裏表を両面研磨してみました.当地へは26年ほど前に自転車で訪問した.当方が初めて鉱物採集した思いである現場です.上の標本は大切坑のあった真谷と呼ばれる谷の左岸でサンプリングしました.もともとパイロクスマンガン石や菱マンガン鉱などの金属マンガンを多産した鉱山で,古くは尾根筋の酸化帯の二酸化マンガンを盛大に稼業したと伝わっています.国道筋からも近く自転車しか移動の手段が無かった頃はよく通っていました.上のサンプルは大切坑の前でたった一つだけ拳サイズの大きさのものを拾っただけです.それを小割して持っていました.つい最近になってその一部が出てきましたので木っ端の一部を両面研磨してみました.
裏面の写真です.
(研磨)石英などの硬い鉱物は肉眼的に含まれていませんでしたので,一気に磨り上げました.鉱石を成形したときに出た木っ端なので,磨る前は表面も裏面も二酸化マンガンの酸化被膜に覆われていました.層状鉱石特有の縞状鉱が出てくれればと思って磨り始めたのですが,うまく層状構造が出てくれました.仕上げは青砥でしました.あまり軟らかい砥石で磨ると砥石が負けてしまうので,今回は青砥でしました.
(以下,顕微鏡写真です)
赤褐色の部分がハウスマン鉱です.チョコレートの塊状に見えるので「チョコレート鉱」の鉱石名があります.白色部は菱マンガン鉱です.鉱脈鉱床の脈石に産する菱マンガン鉱は宝飾に利用されたりするピンク色の美しいものですが,マンガン鉱床から産する菱マンガン鉱は一般にこういう感じです.ハウスマン鉱を切る黒色の脈はヤコブス鉱です.やや強い磁力があります.見た目では黒色っぽい筋状に見えるのですが,濃集すると磐城鉱のような俄かに緑色がかった黒色金属光沢をするようです.それに近いものが磨っていたらこの石にも少し入っていました.(下,写真参照)
中上部の暗い赤褐色の脈にレンズ状に似た集合で入っている帯緑黒色部.
この鉱床では,石墨・黄鉄鉱・磁硫鉄鉱・石英(玉髄・水晶)・緑マンガン鉱・ハウスマン鉱・ヤコブス鉱・横須賀石・クリプトメレン・パイロクロアイト・菱マンガン鉱・ホルダウェイ石・石膏・重晶石・テフロ橄欖石・アレガニー石・パイロクスマンガン石・カリオピライト・ネオトス石などがみられました.また一部の文献に電気石の記載がありますが,確認していません.
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