いくつかの研磨した石85
今回も標本整理をしていた時に出てきた,観察面が表から伺えない
標本の裏を一面研磨してみました.人によっては一面研磨を嫌がる人も
いますが,現場で観察対象物がたくさんある場合は,拳サイズの標本に
できるのですが,少ないところや何時間探しまわって数個しか見つけられ
ないような現場のものは,どうしてもサンプルが小さくなってしまいます.
石の中央から半分に割る程度のことしかできず,標本として残せなくな
るのを防ぐため,酸化被膜に覆われている部分を一面研磨してなんとか
標本として見れるようにしています.また微細な鉱物や共存鉱物種に気
づくことができる良い面もありました.
今回は,以前にも取り上げたことがある,当方から近い亀岡鉱山の
ヤコブス鉱・閃マンガン鉱のラベルが付いた層状炭マンです.鉱山の前
が国道372号に面しているという非常に交通の便がいいところにありま
した.交通の便がいいところは,鉱石が残っていないところが多く,この
標本も16年ほど前に訪問した際に探し回ってようやく1個だけ得たサン
プルです.鉱山に接する尾根の上方は室町時代後期の城跡で,それ
らしい地形のみが残っていました.日本のマンガン鉱床補遺後篇に当地
の記載があり,二酸化マンガン鉱を主として操業されていたようです.
(研磨)石英脈やレンズなどを肉眼的にはほとんど観察できない石でした.
比較的柔らかいと踏んで一気に磨り上げました.仕上げは青砥でしま
した.特に磨り上がりが悪いわけではなかったので,このままにしました.
(以下顕微鏡下での撮影.)
当初は閃マンガン鉱が入っているのは筆者は判らなくて,主に丹波地域の
マンガン鉱床を研究されているT氏に指摘されて,ラベルに追加した経緯が
あります.今ほど詳しくなくて単に現場を見てくることに重点を置いていまし
た.灰緑色部が閃マンガン鉱と伺ってラベルに追加したのですが,一面研磨
してさらに顕微鏡で拡大してようやく閃マンガン鉱の存在が判りました.
閃マンガン鉱の入っている部分の拡大.閃マンガン鉱は新鮮な時は鋼灰
色金属光沢ですが,空気中でただちに酸化して褐色―褐黒色に錆びるため
永いこと置いていたこの標本では,割れ目をいくら観察しても存在すらよく
判りませんでした.拡大してようやく磨った面は新鮮なので観察できました.
おしらせ
本日 HP通販用商品を
2点追加更新しました.