いくつかの研磨した石84
京都府亀岡市下矢田町鏡岩 稲荷山鉱山のアレガニー石および
菱マンガン鉱からなる鉱石を一面研磨してみました.市役所の南に
ある安行山山頂から東に張り出す196m峰の西の谷にありました.
安行山は京都縦貫道亀岡ICの北側の山で,ICより南が丹波Ⅱ型
相当の地層群,北側の安行山が丹波Ⅰ型の地層群と地質図では
そうなっている.山頂に安行山磐栄稲荷宮と称する神社があり,周
辺は公園になっています.
この山の付近は比較的早くからマンガン鉱山が開かれていて,
中山鉱山が明治30年代,亀岡鉱山・稲荷山鉱山が戦後に開発され
たようです.標本は当方が学生のころ,約17年前にサンプリングし
たものです.日本のマンガン鉱床補遺後篇に多少詳しく掲載されて
いてこの文献を頼りにして行った覚えがあります.
サンプルは手元に残っているものは上の写真の石一つで,ほか
はぼそぼその二酸化マンガンが多少見られた程度でした.
写真はその時のサンプルです.
研磨:炭マンなので柔らかいと思っていましたが,石英や珪岩の部分
が多く,なかなか削れてくれませんでした.合成砥石では曲面がどう
しても出てしまうようで,研磨面の方向を考慮して,さらに粒子の粗い
と思われる大村砥で粗削りしました.使い込んだ砥石で中央部に凹
んでいるため,石の中央がどうしても膨れてしまう.合成砥石の角付
近を使用して中央の凸部を修正しながら研磨しました.
仕上げは初めに宮川の青砥でやっていたのですが,どうも辷りが
悪く研磨面に光沢が出なかったので,次は中途半端な青砥で磨っ
てみました.この砥石でも思ったような光沢が出ず,半分分解した
青砥(兵庫県草山温泉の西にある高王山西峠の泥質岩)で試しに
磨ってみました.以前に磨ったことのある長瀬鉱山のパイロクスマン
ガン石は思ったような光沢が出てくれましたが,今回はこの砥石でも
光沢が出てくれませんでした.
最後に鴨瀬谷山の砥石で灰黄色―灰色の中途半端な砥石で試し
てみたところようやく思ったような光沢が出てくれました.
(以下顕微鏡写真)
研磨面についていた鉱物はこんな感じです.2~3不明な部分もあり
ました.顕微鏡で観察していると黄銅鉱を伴っているあたりの脈に
空隙があるのを確認しました.この硫化を伴う部分は主に石英からな
る脈で黄銅鉱・閃亜鉛鉱に少量の菱マンガン鉱を含んでいました.
空隙にはかなり微細な黄銅鉱および閃亜鉛鉱の半自形結晶が入っ
ていましたので,写真を撮ってみました.
黄銅鉱の半自形結晶.細かいためこれが限界でした.
こちらは閃亜鉛鉱です.
この鉱山では,石墨・黄鉄鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱・石英・(水晶)
・水マンガン鉱(おそらくパイロリュース鉱に変質)・菱マンガン鉱・
石膏(珪質岩の割れ目)・テフロ橄欖石・アレガニー石・緑泥石類
などが確認されています.