鉱物の顕微鏡写真28 ―褐簾石―
産地:Trimouns Talc mine, Luzenac, Ariege, Occitanie, France.
(非売品)
Allanite-Ce 褐簾石
組成:CaCeFeAl2[OH|O|SiO4|Si2O7] 単斜晶系
ソロ珪酸塩鉱物.緑簾石類.
色:黄褐色・赤褐色・帯紫褐色・暗褐色・黒色.ガラス光沢—亜金
属光沢.
(メタミクトしたものは亜ガラス光沢―油脂光沢に近くなる)
形態:自形は柱状.塊状.
モース硬度:5.5―6.
劈開:[001]に完全.メタミクトの場合は劈開は鈍いか不明瞭.
比重:4.11
条痕:灰色・灰褐色.
ほか,弱い放射能がある.
最近になってこのシリーズは細分化されて,肉眼では判別がほぼ
不可能になってしまいました.この回は細分化される前の褐簾石で
紹介します.
花崗岩や閃緑岩・斑糲岩などの酸性岩中に副成分として,ほぼ常
に少量は含んでいる鉱物です.
ほかに脈性ペグマタイトやスカルンにも見られます.
上の写真は露天掘りで滑石を採掘しているそうで,母岩は花崗岩
では無く,白色の結晶は苦灰石(Dolomite)だそうです.
白色の苦灰石の結晶の上に褐色のシャープな結晶が付いていて,
小さなものですが鑑賞に耐える標本です.
(以下は主に顕微鏡写真)
上の標本の別の部分についている褐簾石です.
黄褐色の結晶の下についている結晶はパリス石のようです.
こちらも別の部分の結晶です.白色部は苦灰石の結晶.
ここからは国産ものです.
今まではかなりたくさんの産地のものを所有していましたが,
整理しましたので,現存する標本は少なくなりました.
京都市左京区粟田口如意嶽町の洞穴より.シャーペンの芯の
ような分離結晶がみられることで有名な産地のもの.微細なもの
ですがシャ―プな結晶をしています.(非売品)
拡大写真.
京都市左京区浄土寺 大文字山道. 筆者が中学生頃に初めて
大文字山に登った時に登山道で拾ったものです.花崗岩の副成分
として産する褐簾石の例です.写真中央の角閃石のように見える
柱状結晶です.(非売品)
大阪府四条畷市下田原 坂口鉱山の褐簾石です.
(購入品・非売品)
花崗岩質ペグマタイトより産する褐簾石の例です.メタミクト状態
で光沢もやや鈍くなっています.褐簾石の結晶に隣接する長石は
微量に含まれる放射能によって赤く着色しています.長石中の小
さな黒色部は,長石の割れ目に染みた二酸化マンガンのようです.