顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真197
―ベラウン石―
産地:Coon Creek mine, Shady, Polk county, Arkansas, USA.(非売品).
Braunite ベラウン石
[組成] Fe3+6[(O,OH)4|(PO4)4]・6H2O
[結晶・形態] 単斜晶系.自形結晶は単斜板状・長板状・角柱状・
針状など.[100]面に条線あり.束状・ロゼット状・
簾状・繊維状・放射状・球状・ぶどう状集合などに
なる.結晶およびその集合は脆い.
[色] 淡褐色・黄色・茶褐色・赤橙色・黄橙色・臙脂色・
赤褐色・赤黒色など.
[光沢] 油脂光沢.劈開面上に真珠光沢.半透明―不透
明.酸化によって屈折率が高くなる.
[モース硬度] 3~4
[比重] 2.8~3.08
[劈開] {001}に明瞭.
[条痕] 褐色.
[原産地] Hrbec mine, Svatá Dobrotivá, Zaječov, Beroun
district, Central Hohemian region, Czech republic.
[名称] 原産地のフルベック鉱山近くのBeroun町に因む.
ひとつきぶりの顕微鏡写真シリーズです.今回はベラウン石にしました.深い臙脂色の結晶が折り重なって,良い感じの風格のある標本になる燐酸塩鉱物で,なんとなく名称に惹かれて購入した標本です.ルーペ下で見ると藍鉄鉱の酸化した結晶がベラベラついているようにしか見えませんが,顕微鏡下では撮影に耐えいい感じに写ってくれました.
鉄鉱石や鉱脈の二次帯,燐酸塩ノジュール,燐酸塩ペグマタイトの二次帯などから産し,暗緑色のロックブリッジ石や白色のストレング石などを伴って産するようです.
初めの画像の上の方の拡大.
黄色粉末状に見えるのはカコクセン石で,板チョコが並んで見える部分がベラウン石.上の方に映りこんでいる帯青暗緑色の襞状およびモコモコの部分はロックブリッジ石です.
別の産地のものをもう一つ.
産地:Moores Mill, Mount Holly Springs, Cumberland county, Pennsylvania,
USA.(非売品)
もう一つは露天掘りで採鉱していたという燐鉱床からのベラウン石です.煉瓦色をした堆積岩中を切っている褐鉄鉱の細脈の肥大した部分より産するようです.おそらく非晶質と思われる赤褐色ピッチ状の鉱物を伴って,鮮やかな赤褐色および臙脂色をなす自形結晶および放射状集合をなしています.
こちらのベラウン石は光沢がやや脂ぎったガラス光沢で,劈開面で光に反射してギラギラしています.黄色―黄白色繊維状および球状のカコクセン石をともなっていて,小さいながらも顕微鏡を通すとコントラストの良い画像が得られました.
別の部分の拡大.板状の結晶が観察できます.黄色粉状はおそらくカコクセン石.小さすぎて繊維状しているのか皮膜状なのかはっきりしませんでした.
本邦産のベラウン石ですが,神戸の堆積岩中の藍鉄鉱ノジュールから産するものが知られていて,以前まではベラウン石とラベルを付けていました.
最近(2022年)に再定義されたらしく,鉄が完全に酸化した種のみに適応するとか.Fe2+とFe3+の両方を含有し緑色を帯びた種に,フェロブラウン石という名称が適応されるという.神戸のベラウン石と云っていたものは灰緑色でフェロブラウン石にあたると思われるがどうだろう.本邦産のベラウン石はどちらになるのか判りませんが,一応,以前のままの定義での標本を撮影しました.
産地:兵庫県神戸市西区美賀多台.(非売品).
知人より提供された標本です.黄褐色のサンタバーバラ石(ケルシェナイトと呼ばれていた)中に,青緑色のレンズ状をなしています.表面の白色部はおそらく単斜燐鉄鉱です.