研磨石
いくつかの研磨した石294
京都府南丹市美山町原 宮島鉱山のレンズ状炭マンを一面研磨しました.当標本は以前に緑マンガン鉱としてサンプリングし,成形したうえで以前に掲載した標本ですが,緑マンガン鉱の色が消えてしまい,一面研磨にリメイクしたものです.
もともとの緑マンガン鉱の画像.
2枚目の画像の標本を斫り用ハンマーで黒変化した部分を削り取りました.そのうえ,平滑に近くなるまで小割用ハンマーで成形しなおしました.中から未酸化の緑マンガン鉱が出てくるのを期待していましたが,出てきませんでした.チャート中のレンズ状の炭マンのようで,磨ってみたら面白そうなので,研磨しました.
(研磨)チャートとレンズ状の炭マンとの硬度差がかなりあって,うまく平滑になるか賭けでした.荒砥で先にチャートの部分を中心に荒削りしました.それから中央にあるレンズ状の炭マンの方を研磨しました.
高さを合わせて磨いたつもりでしたが,緑マンガン鉱があった部分が特に軟らかく,そこだけ凹んでしまいました.ペーパーの粗いもので暗褐色の周りを磨りこんで,高さを合わせました.
中研ぎははじめ本山を使用していたのですが,砥石が負けているので青砥で磨りました.光沢が出てくれそうと期待したのですが,青砥でも納得行くような仕上がりにはなりませんでした.
番手のもっと高いペーパーを使用してさらに磨りました.中央の暗褐色部に光沢が出たのを確認して,周囲を磨りました.チャート中に黒色の部分があって大部分が二酸化マンガンと思っていましたが,顕微鏡で確認したところ準石墨(あるいは非晶質炭素物質)で,極端に軟らかく,先に磨りきれて穴になっていました.もっと早く気付くべきでしたが,納得がいくくらいの光沢が出るまで研磨してしまったため,ここは無視しました.
(以下は顕微鏡観察です)
この2枚の画像は接写で撮影しました.研磨面のひび割れを隠す目的で水滴を垂らして撮影するのですが,今回の石は光が反射するくらいの鏡面に近いところまで研磨したため,水滴が乗らず弾いてしまうため,接写で撮影しました.
暗褐色~暗赤褐色のレンズ状の部分の周囲は桃褐色のアレガニー石で囲まれていました.それより外側に黄褐色―茶褐色のカリオピライトと淡紅―灰白色塊状の菱マンガン鉱の集合があって,そのさらに外側にチャートが接していました.
中央の暗褐色―暗赤褐色のレンズ状の部分の顕微鏡下での撮影.肉眼で見ると暗い褐色でしたが,鏡下で横から別の光源を使用し照射したところ,黄褐色や赤褐色に写りました.分析をしていないので何とも言えずパイロクロアイト系の鉱物だろうと思う.多少分解しているようなので,ファイトクネヒト鉱も混じっていると思われる.白色に見える部分は菱マンガン鉱.緑マンガン鉱は,残っていませんでした.
こちらは,暗褐色―茶褐色のレンズ中に,菱マンガン鉱のレンズがあって,そこの拡大です.白色に見える菱マンガン鉱中に茶褐色の鱗片状の集合が入っていました.初めに磨ったときに淡い灰紅色をしていたので,パイロクロアイトかもしれません.
暗褐色―暗赤褐色のレンズの周囲の拡大です.淡黄色―黄褐色のカリオピライト中に金属鉱物が見えて,拡大すると黄鉄鉱でした.黄鉄鉱は金属鉱床のほか堆積岩やペグマタイトなどにも産する普通の鉱物で,この鉱山にも産出していました.
暗褐色―暗赤褐色のレンズとほかの部分との境界の拡大です.暗褐色―暗赤褐色のレンズのすぐ外側にピンク色のアレガニー石が接していました.本邦のアレガニー石は塊状のことが多く,ガラス光沢を呈するのはまれなようで,丹波帯からは2箇所くらいからガラス光沢のアレガニー石を確認しています.ほかはだいたい塊状で帯紫暗赤褐色や赤褐色を呈しています.
各鉱物の部位はこんな感じになりました.