顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真183
― 園 石 ―
産地:京都府相楽郡和束町園(字)堀越 園鉱山(非売品)
Sonolite 園 石
[組成] Mn2+9[(OH,F)|(SiO4)2]2
[結晶] 単斜晶系.自形結晶は角柱状・粒状など.多く塊状や
脈状集合などになる.
[色] 淡黄色・灰黄色・黄褐色・赤褐色・灰紅色・桃褐色・桃
色・赤橙色・帯紫赤褐色・帯紫褐色・暗褐色など.
[光沢] ガラス光沢~やや脂ぎったガラス光沢.
[モース硬度] 5.5
[比重] 3.82~3.97
[劈開] 不明瞭.
[条痕] 白色.
[名称] 原産地名に因む.
[原産地] 京都府相楽郡和束町園鉱山.原著論文に同時に岩手
県花輪鉱山・茨城県鷹峰鉱山・栃木県加蘇鉱山・愛
知県田口鉱山など多数の産地が同時に記載されてい
た.
ほか,塩酸で可溶.
今回は園石にしました.
所有しているサンプルの数が多い種で,だいたい拳サイズ以上の大きさがあって,今回は顕微鏡下での画像はありません.すべて接写で撮影しています.
1963年に京都府園鉱山を原産地とした日本産新鉱物の一つです.熱変成を受けたマンガン鉱床の高品位鉱石を構成する鉱物で,本邦各地に産地がありました.Franklin mineのテフロ石を伴ったレンズ中の園石の標本があったはずで,更新に当たって探しましたが行方不明になっていました.今回は国産品の紹介です.
上の標本は18年くらい前に筆者がサンプリングした標本で,一部を欠かしてXRDで名前を決定した標本です.色の明るいキレイな赤色部はアレガニー石であることが多く,園石は層状集合のうち暗い赤褐色でみため汚い部分に入っていました.
現地は茶畑の裏山で何を焙焼したのか煙突が残っていて,コンクリの土台やズリが多少ありました.煙突の西側斜面にフェンスで囲まれた坑口があって,フェンス内にゴミが散乱していました.
ここまでは踏み跡があったのですが,上の石はそこから,向かって左上の斜面を登ったところに露頭を突いたような跡があって,ここより少量得ました.下盤は珪化した泥質ホルンフェルスで,盤際に薄くばら輝石とテフロ橄欖石が挟まっていて,脈は淡紅色の菱マンガン鉱とアレガニー石に一部に園石がありました.
黒色亜金属光沢のヤコブス鉱の脈が層に並行に入っていて,この部分は磁石を引き寄せました.園石をサンプリングしたのはこの回だけで,ほかに鉱石質のものはほとんどありませんでした.それからしばらく行っていません.
以下はそのほかの産地の標本です.
産地:京都府綴喜郡井手町多賀 多賀鉱山(非売品).
恵与品です.黒色や暗褐色粒状のマンガンスピネルーヤコブス鉱系鉱物がたくさん入ったあずき色炭マンです.画像中央部の暗い赤褐色塊状部が園石です.ほかに灰紅色の菱マンガン鉱や灰緑色油脂光沢のテフロ橄欖石などを伴っています.
産地:京都府相楽郡和束町別所 桜谷鉱山(非売品).
購入品です.俄かに赤色味を帯びたテフロ橄欖石からなる集合で,一部に園石がX線的に含まれているそうです.淡紅色は菱マンガン鉱.黒色部は二酸化マンガン.磁石が結構強く引き寄せられるためヤコブス鉱を含んでいるようです.
産地:京都府南丹市美山町向山 向山栗谷鉱山由利山鉱床(非売品).
以前に当ブログで紹介した標本です.随分前に画像中央より左にある赤褐色の脈に盤際を欠かして,分析したところ園石が含まれていました.あずき色部に黒い染み状になっているところはヤコブス鉱が含まれていました.隣接する赤褐色の脈はおもに満礬石榴石からなっていて,ほかにネオトス石が粒間を埋めていました.右半分は菱マンガン鉱からなっていて一部に珪岩が残っていました.鮮やかな赤褐色の部分は予想通りアレガニー石でした.
産地:山口県岩国市玖珂町谷津 蓮華鉱山(非売品).
購入品です.10年以上前に遠出して山口方面に行く際の準備で当地の標本を探したところ,上の石があったので購入しました.やや風化したような感じのあずき色炭マンで,広く酸化被膜に覆われていたため小ハンマーで酸化被膜を抉って取り去りました.石全体に磁石が吸い寄せられヤコブス鉱が含まれているようでした.画像中央の暗赤褐色のところに矢印で指示してあって,ここが園石でした.ほかに少量の閃マンガン鉱や菱マンガン鉱を含んでいました.
現地は蓮華山に至る登山道沿いに石垣が組まれていて,その上にズリと坑口がありました.硫化鉱物の塊がちょこちょこあって,内部は磁硫鉄鉱でした.マンガン鉱物は褐色味の強いばら輝石で,少量のテフロ橄欖石を伴っていました.珪岩には満礬石榴石の細かい粒が入っているものがあって,上のような高品位鉱はほぼ見当たりませんでした.
産地:栃木県佐野市飛駒 第二光鉱山(非売品).
関東のコレクターからの恵与品です.暗褐色~暗赤褐色の部分が園石だと教わりました.上の方についている黒色部は二酸化マンガン,灰白色―淡桃色部は菱マンガン鉱で二酸化マンガンの黒色の部分以外のところはヤコブス鉱が含まれているらしく磁石を引き寄せました.
産地:群馬県みどり市東町小畠鉱山(非売品).
購入品です.購入当時から一面研磨されていました.乾くと表面が分かりづらいので,改めて研磨しなおしました.帯黄赤褐色部が園石とのことです.灰桃色部は菱マンガン鉱.灰緑色部はテフロ橄欖石です.
産地:愛知県北設楽郡設楽町八橋 田口鉱山表山鉱床(非売品).
随分前に訪問したときに県道の脇の沢で拾った標本です.割ったところ黒っぽい石で,同行者に「これに園石が入っているよ」と言われて,それからずっと持っていた標本です.暗褐色部が園石でほかは菱マンガン鉱やヤコブス鉱―マンガンスピネル系の鉱物からなっていました.