顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真181
テフロ橄欖石(マンガン橄欖石)
産地:滋賀県高島市朽木地子原 立戸鉱山(非売品)
Tephroite テフロ橄欖石(テフロ石・マンガン橄欖石)
[組成] Mn2+2[SiO4]
[結晶] 直方晶系.自形結晶は庇面・柱面からなる角柱状・短
柱状・長柱状・板状など.結晶は脆い.通常見るテフロ
橄欖石は塊状.ほかに束状・簾状・レンズ状集合などに
なる.
[色] 灰色・灰白色・淡緑色・帯青緑色・灰緑色・帯緑青色・
黄褐色・緑褐色・暗黄褐色・灰紅色・帯紫赤色・赤褐色
など.(本邦のものは灰緑色や青緑色のものが多い)
[光沢] ガラス光沢~油脂光沢・脂肪光沢.脂ぎった質感があ
る.
[モース硬度] 6
[比重] 3.87~4.12
[劈開] {010}に1方向に良好.{001}1方向に不完全.
[条痕] 淡灰色・白色など.
[名称] 1893年にギリシャ語のTephros テフロス(=灰色)から
名づけられた.
[原産地] Sterling mine, Sterling Hill, Ogdensburg, Franklin
mining district, Sussex county, New Jersey, USA.
ほか,塩酸に可溶し残渣.
2023年はじめの顕微鏡写真シリーズはテフロ橄欖石にしました.橄欖石の仲間で,関東北部や近畿北部のマンガン山では比較的普通に産する鉱物の一つです.こうなると掲載する標本数の候補が非常に多くなってしまって,選択するのに時間を用してしまうのですが,顕微鏡写真用に撮影した画像はあまりにも少なかったため,急遽とりなおしました.
文頭の画像の標本は,以前にも触れました.半自形結晶をなすテフロ橄欖石です.一応XRDで破片の一部を過去にやってもらいましたが,テフロ橄欖石でした.帯紫褐色のアレガニー石,黒色金属光沢のハウスマン鉱,いわゆるチョコレート鉱と呼ばれる茶褐色の鉱石を構成するハウスマン鉱, 白色の重晶石などからなる比較的高品位のマンガン鉱石中に,白色ガラス光沢を呈するやや粗粒な重晶石中に埋もれて産しました.
画像中央左の結晶は劈開面で一部が欠けているもののほかの柱面とか庇面は顕微鏡で確認できました.
海外産で結晶は無いものかと探していたところ,購入していました.
産地:Franklin mine, Franklin mining district, Sussex county, New Jersey,
USA. (非売品).
黄橙色のテフロ橄欖石の自形です.下地は真っ白なサセックス石だと思っていたところ,短波紫外線灯下で青白く蛍光し,どうもフルオボライトらしい.母岩は白色のマンガン方解石や珪亜鉛鉱・ハーディストン石などを伴い,短波紫外線を照射すると非常に賑やかな石でした.赤い紅亜鉛鉱や黒色のフランクリン鉱は蛍光しませんでした.
産地:Sterling mine, Sterling Hill, Ogdensburg, Franklin mining district,
Sussex county, New Jersey, USA.(非売品)
赤色タイプのテフロ橄欖石も購入していました.原産地標本で黒色の二酸化マンガンの染みた母岩に,白色のマンガン方解石や黒色金属光沢のフランクリン鉱などを伴っていました.紅亜鉛鉱も入っていそうでしたが,肉眼ではわからず,短波紫外線灯下で珪亜鉛鉱とマンガン方解石は蛍光して判別できました.
テフロ橄欖石は上の方についている赤褐色~帯橙赤色柱状部で,劈開に沿って割れていました.
以下は国産品です.幅広い変成度で出現する鉱物で,近畿地方の標本をおもに掲載します.(というより,その名称のラベルにしている標本が無い)
産地:京都府京都市北区鷹峯護法ヶ谷 吉兆鉱山護法谷鉱床(非売品).
18年くらい前にサンプリングした標本です.当地ではテフロ橄欖石やばら輝石の類の鉱物はほとんど無くて,この標本もさんざん探して見つけたサンプルです.帯青灰色油脂光沢部がテフロ橄欖石で,褐色のカリオピライトを伴い,一部にパイロクスマンガン石を伴っています.
産地:大阪府豊能郡能勢町倉垣 小和田鉱山(非売品).
同じく18年くらい前にサンプリングした標本です.鮮やかなピンク色のばら輝石の上の方に青緑色塊状の部分がテフロ橄欖石です.油脂光沢が顕著にうかがえるのですが,画像でははっきりとしませんでした.
産地:奈良県吉野郡川上村入之波 日の出鉱山(非売品).
研磨石シリーズで使用した標本を転載しました.下の方の灰緑色部がテフロ橄欖石で,上の方にもちょくちょく入っています.褐色のカリオピライト,ピンク色のばら輝石に白色っぽい色の菱マンガン鉱を伴っています.端の黒色部は二酸化マンガンの酸化被膜です.
産地:兵庫県丹波篠山市遠方奥山 サカラ谷旧坑(非売品).
研磨石シリーズで使用した石の片割れをテフロ橄欖石の標本にしていました.灰緑色部がテフロ橄欖石で,茶褐色のハウスマン鉱,赤褐色のカリオピライトを伴っています.
産地:和歌山県田辺市龍神村小又川 龍神鉱山桑畑鉱床(非売品).
14年くらい前にサンプリングした標本です.割れ目に白色の重晶石を伴っていて,この脈がいたるところに入っていて,思わないところから割れてしまい,成形に失敗しました.木っ端の一部を研磨したのが上の画像です.白色部は菱マンガン鉱に見えるのですが,重晶石で,菱マンガン鉱は中央よりやや上の淡いピンク色をした部分です.灰緑色~帯紅緑色の部分がテフロ橄欖石です.茶褐色の部分はハウスマン鉱です.