顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真177
―苦 灰 石―
産地:Stolzembourg Cu mine, Stolzembourg, Putscheid, Canton Vianden,
Luxembourg.(非売品)
Dolomite 苦 灰 石
[組成] Ca2+Mg2+[CO3]2
[結晶] 三方晶系.自形結晶は菱面体・角柱状・板状など.結晶
は脆い.いくつかの双晶が知られている.爪状・ 豆状・繊
維状・皮膜状・ザラメ状・薔薇状・球状・塊状集合などにな
る.
[色] 無色・白色・灰色・灰白色・淡黄色・黄褐色・淡褐色・褐色・
淡紅色・赤橙色・淡青色など.微量に含まれる元素によっ
色彩が変化する.
[透過] 透明~半透明
[光沢] ガラス光沢・亜ガラス光沢から樹脂状・油脂状・真珠光沢
まで.
[モース硬度] 3.5~4
[比重] 2.84~2.86
[劈開] {1011}に3方向完全.
[条痕] 白色.
[名称] フランスの鉱物学者・地質学者
Déodat Guy Sylvain Tancréde Gratet de Dolomieu
(デオダ・ギー・シルヴァン・タンクレード・グラーテ・ドゥ・
ドロミュー 1750~1801)に敬意を表して命名.
ほか,物によって青白く燐光を発するものがある.摩擦発光するものがある.熱した酸に可溶.冷酸に不溶.産地によって紫外線で白色・青白色・淡黄色・ピンク色・濃赤色に蛍光するものがある.
マケドニア石の次は苦灰石にしました.試薬や農業用の肥料など幅広い用途に使用される鉱物の一つです.見てくれや産状が幅広く,どの標本を使用しようか,迷ったうえでついつい後回しになってしまっています.
上の標本は25年くらい前に入手した標本です.古そうなラベルがついていて,現表記がおそらくドイツ語で,筆記体で書かれていたので,産地を特定するのに手間がかかりました.中世から銅を採鉱された古い鉱山跡で,現在は博物館になっているそうです.
裏面はこんな感じで水酸化鉄?による褐色のシミが全体に入っていました.当地の苦灰石は含鉄苦灰石だそうで,もともとアンケル石と呼ばれていたもので,含鉄苦灰石とはあとからわかったそうです.元ラベルにもアンケル石と記載がありました.
産地:Dreislar mine, Winterberg, Saueland, Rhine-Westphalia, Germany.
(非売品)
白色タイプの苦灰石です.顕微鏡写真シリーズの黄銅鉱の回で使用した標本にびっしり白色の苦灰石が付いていました.コントラストのよさそうな部分を選んで撮影していました.
産地:Canal damp, Niagara falls, Niagara region, Ontario, Canada.(非売品).
淡紅色タイプの苦灰石です.現地はナイアガラの滝の水力発電所を工事した際に出たズリ石の堆積場とのことです.菱型に近い粗い結晶の隙間に,淡い真鍮色金属光沢の柱状結晶が付いていました.白鉄鉱の結晶だそうで,このあとの顕微鏡写真シリーズ用に顕微鏡写真を撮っておきました.
産地:長崎県長崎市大瀬戸町雪浦(非売品).
黄色タイプの苦灰石です.爪状の結晶が集合しています.この標本の一部に石英脈が入っていて,脈の盤際に針ニッケル鉱がちまちま入っていて,ラベル名は針ニッケル鉱にしています.
産地:京都府宇治市志津川龍ヶ壺.(非売品).
以前に三段の滝に行ったときに,滝の落水口から少し上流の露頭でサンプリングした苦灰石です.風化した表面が褐色でガサガサした感じになっていて,冷塩酸で発泡せず,熱塩酸で溶けたため苦灰石にしています.一部に方解石を伴っているらしく,冷塩酸で発泡した部分がありました.