顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真163
―フォルノー石―
産地:Vekol mine, Sif Vaya area, Vekol mountains, Pinal county, Arizona,
USA.(非売品).
Fornacite フォルノー石(フォルナックス石)
[組成] Pb2Cu2+[OH|AsO4|CrO4]
[結晶] 単斜晶系.自形結晶は単斜長板状・短板状・角柱状・針状
など.ロゼット状・放射状・球状・皮膜状などの集合にな
る.結晶は脆い.
[色] 黄色・緑黄色・暗黄緑色・暗灰緑色・緑色・暗褐色・暗赤
褐色・黒褐色など.
[光沢] ガラス光沢.あるいは脂ぎったガラス光沢.
[モース硬度] 2~3
[比重] 6.27~6.30
[劈開] 無し.
[条痕] 灰緑色.
[名称] ラテン語のフォルナックス「炉」の意と
1911年当時のフランス領コンゴの植民地総督で地理学
者のLucien Louis Fourneau(1867-1930)に因む.
[原産地] Renevill mine, Renevill, Kindanba district,
Pool department, Republic of the Congo.
ほかの部分についていたフォルノー石の拡大写真.黄色い部分.
ひさびさの顕微鏡写真シリーズです.今回はフォルノー石にしました.
鉛(Pb)と銅(Cu)を主成分とするクロム酸塩鉱物で,砒酸塩基を含んでいます.砒酸塩基を燐酸塩基(PO4)で置換するとヴォークラン石になります.ヴォークラン石は数年前に本邦でも産出が確認されて,身近になりました.
上の標本は黄色―黄緑色の皮膜状の塩化銀鉱とフォルノー石の両方がラベルに記載されていました.塩化銀鉱は何となく判りましたが,フォルノー石がどの部分かがしばらく判りませんでした.いろいろ調べているうちに,暗緑色板状の部分が本鉱物と判りました.写真は柱状のように見えますが,斜交いから見ると板状で,細かい爪状の結晶も僅かにみられました.
フォルノー石は近くにモリブデン鉛鉱や緑鉛鉱に翠銅鉱などの銅鉱物や,ほかの鉛珪酸塩鉱物などを伴った産状で産する鉱物で,かつ周囲に皮膜状の二酸化マンガンを多く伴っていました.
本邦でも産するかもしれません.本稿を掲載した後に本邦新産鉱物としてよく出てくるので,今後の研究に期待したい.
以下,ほかの産地の標本です.
産地:Defence mine, 1.3km Western of Lockout mountain, Lockout city,
Lockout mining district, Argus range, Inyo county, California, USA.
(非売品).
もう一つの標本は,元ラベルに臭化銀鉱とフォルノー石の両方が記載されていた標本を購入しました.臭化銀鉱は赤黒―暗褐色の塊状に見える部分で,すでに黒変化していました.フォルノー石は緑色か黄色なので,周囲を詳しく観察していると,黄色の微細な集合があるのに気づきました.周囲に青緑色のブロシャン銅鉱を伴っていて,小さな石英の空隙に黄色の結晶をしていました.