顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真159
―ヴェーラー石―
産地:Barkevicastranda, Barkevica, Barkevik area, Langesundsfjorden,
Lavik, Vestfold, Norway.(非売品).
Wöhlerite ヴェーラー石(ウォーレル石)
[組成] NaCa2(Zr,Nb)[(O,OH)2|Si2O7]
[結晶] 単斜晶系.自形は単斜板状.短冊状集合などになる.
[色] 淡黄色・黄灰色・黄色・黄橙色・黄褐色・褐色など.透明~
半透明.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 5.5~6 結晶は脆い.
[比重] 3.40~3.44
[劈開] {010}に明瞭.{100},{110}に貧弱.
[条痕] 帯黄白色・淡黄色など.
[名称] 1828年にベリリウムの単体分離に成功したドイツの化学者
フリードリヒ・ヴェーラー(Friedrich Wöhler 1800-1882)に
因む.
[原産地] Løvøya, Langesundsfjorden, Porsgrunn, Vestfold og,
Telemark, Noeway.
本邦未産.
セレンセン石の次はヴェーラー石にしました.もともとのラベルに「ウォーレル石」と記載されていました.鉱物名の「O」の上の点々(ウムラウト)が付いていてそれを飛ばして普通にローマ字読みになっていたようです.ラベルを書き換えるにあたって,いろいろ調べていたところ,「ヴェーラー」と読むらしいです.
1828年にベリリウム(Be)の単体を分離した有名な化学者だそうで,その名を冠しているため,ウォーレル石ではなく,ヴェーラー石と表記しました.ちなみに「ö」はHTML表示にして「ö」と打ち込むと出てきます.
ヴェーラー石は霞石閃長岩質ペグマタイト中より産するようで,母岩は灰白色―白色の長石,黒色の黒雲母,赤褐色―暗褐色油脂光沢の霞石からなっています.その長石や雲母の劈開の境界や内部にくさび石に似た,黄色板状ないし長板状をなして入っていました.産状はこれの他に霞石玄武岩質岩の空隙からも出ていて,いままで蒐集した標本からも出てくるかもしれません.
風化し溶脱された部分の拡大です.自形結晶が出ているかと期待しましたが,
劈開で割れて,ごちゃごちゃした状態になっていました.黒色部は黒雲母,
灰緑色針状はエジリン輝石.
こちらは大粒の結晶片です.結晶が大きくなると行儀が悪くなるのはこの石も同様のようで結晶がルーズになっていました.
長板状の部分.黄色―黄褐色の部分がヴェーラー石で,左下に赤褐色の同じような鉱物ですが,別鉱物かもしれません.ヴェーラー石は数種のグループ名になっていて,その中に似たような外観の鉱物がいくつか知られているため,はっきりしませんでした.ちなみに本邦で稀産の部類に入るクスピディンも含まれるそうです.
こちらは,ヴェーラー石を含む霞石閃長岩質ペグマタイトに含まれてい赤色の鉱物で,「オレンジ石」というそうです.文献によるとオレンジ石はトール石(Thorite)だそうで,試しにガイガーカウンターで測定してみましたが,量が少ない所為かほとんど検知しませんでした.