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笠取鉱山 京都府宇治市西笠取

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露頭めぐり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笠取鉱山

京都府宇治市西笠取赤坂

 

 

 三段の滝を辞して,一度二尾方面にまわって,笠取鉱山に行きました.どういうわけか,今まで一度も行ったことがありませんでした.同じ流域の相月の旧坑や三宝鉱山には複数回行っていました.事前の情報が少なく,京滋バイパスの笠取インターからトンネルを二つ越えた先..という何十年も前に訪問された方から伺ったあいまいな情報でした.それでついつい後回しになってしまって,今回ようやく行くことになりました.

 

 笠取インター前のトンネルを2つ経て岩分第二トンネルの北口の東の斜面から取付きました.道らしいものが奥へと続いていましたが,それが消えて放置されて伸び放題になった茶畑のヤブのなりました.足元がよく見えないため,斜面を30mくらい駆け上がり,お茶のヤブを抜けました.

 ヤブの境界に沢が一つあって,ここがひどく抉れていて,降りるだけでも難儀しました.沢に沿って,出合まで行って崩土の先から滑って降りました.沢を渡って,しばらく川沿いに進んだところで,河原は消えて淵になりました.淵を巻くために背後の森林の中に入ると,沢の上の方にある堰堤を作ったときの作業道の跡に出ました.作業道の上の方は鉱山特有の雰囲気が無く,川筋の上流の方に進むと,禿地のようなところがあって,東面に大きく陥没したような跡がありました.その上の奥の方にチャートの壁が見えて,こういうところに坑口があるだろう...と思って近づいてみると坑口でした.川沿いの禿げたところはズリの様です.

 

手前の陥没したような跡と,奥の壁.

 

望遠機能で撮影したところ確かに坑口でした.

 

奥の壁にある坑口は左右にあって,いずれも下の方に掘り下っているような感じでした.底の方は土嚢でふさがれていました.

向かって右側の坑口.

 

向かって左側の坑口.壁に鉄錆びで染まっていて,露頭取りが出来そうな感じでしたが,坑口の確認の為だけに登ってきていましたので,ハンマーの類は一切持っていませんでした.フラッシュを焚いて内部を映しました.中には落盤のおそれもあって入っていません.というより案内無しには入りません.

 

正面からはこんな感じでした.

 

 鉱石は風化した外観がどんなものかはっきりしなかったため,付いていそうな石を探して右往左往しました.標本は割り出した石を一つ購入して持っていますが,風化面が付いていないうえに,高品位鉱のようで,母岩の頁岩やチャートのような岩石は一切付いていませんでした.

 坑口のある壁の真西に鉱山施設のコンクリの跡が残っていて(これはグーグルアースのストリートビューで対岸の府道から小さいですが確認できます.)その付近も探しましたが,はっきりしたものは見つけられませんでした.

 そこで,川に降りてみて,転石を探しました.高品位マンガン鉱を探す要領で持ってみて,サイズの小さな割には重く感じる石を持って回りました.ちょうど,ズリの禿地の突端の川に面する僅かな川原で,重晶石を一つ拾いました.

 

 笠取鉱山の鉱床は手持ちの資料をいろいろ漁ってみたのですが,はっきりしないようで,当初は海底噴気性鉱床のようなことが古い文献にはありましたが,今の文献では堆積性だとか熱水がどうこうとか少し触れられている程度でした.

 文献に丹波Ⅱ型相当の堆積岩(チャート・頁岩)中に胚胎する重晶石鉱床とありました.西日本ではバリウムの鉱床は著名なのは笠取鉱山だけのようなことも記述する文献がありました.

 重晶石が産する府下の現場は前出の海底噴気性鉱床の大和谷鉱山(船岡鉱山・銅盛鉱山)・同じく海底噴気性鉱床の吉富鉱山で黒鉱の一部に少し伴っているものを観察しています.ほかに丹波Ⅰ型の堆積岩中に胚胎する層状マンガン鉱床の脈石に多く伴われていて,なぜ高品位なのにズリに捨てられているのかと思っていたら割れ目に重晶石が入っていて,ということがよくありました.丹波のマンガン鉱床から産する重晶石はだいたい灰緑色~緑色に色づいていて,無色透明なのは,弓山鉱山狭間谷坑でみました.

 府下の重晶石を産する現場で母岩を黒色頁岩になっていたのは,京北町イモジ谷の重晶石で白色―黄白色で劈開の顕著な脈でした.付近は丹波Ⅰ帯とⅡ帯の境界付近で,破砕されて固まったような堆積岩や石灰岩などが普通に見られました.層状チャートに挟まれる重晶石脈もあって,笠取鉱山の重晶石に外観がよく似ていました.

 

 当地の鉱石の外観は南丹市の大和谷鉱山(船岡鉱山)の黄鉄鉱を噛んでいる重晶石に酷似していました.異なる点は大和谷鉱山の重晶石は部分的に褐鉄鉱に覆われているのは同じでしたがほとんど脈石鉱物(たまに赤玉が絡まっている)が無いのに対し,笠取鉱山の重晶石は石英脈や頁岩の破片を多く伴っていました.

 これを手掛かりに坑口まで戻って,探すと坑口のある大壁の西の縁に褐鉄鉱に部分覆われた石が散らばっていて,それが川に面する斜面に続いていました.

昔から持っている笠取鉱山の重晶石の標本.多少の母岩をともなっています.白色部が重晶石.

 

 鉱山跡が確認できたので,あとは戻るだけでしたが,元来た道を再度行くのは煩わしいので,対岸に渡れるところを探しました.上流は直線的な流路になっていて,中途半端な深さになっていてとても渡れるような箇所はありませんでした.淵の下流まで行って,川が蛇行する地点に転石が堆積した川原があって,その先から渡れそうでした.転石が堆積した川原だったので,何かないか探してみました.

 目につくのはチャートで灰色・白色・淡褐色・黄色っぽいものなど色は比較的淡いものがありました.層状チャートもそれなりにあって,暗灰色―灰色を呈していました.重晶石を伴う石は多少あって,サイズがでかく珪岩の端っこにちょっとついたような石でした.それからたぶん三宝鉱山から流れてきたと思われる菱マンガン鉱にヤコブス鉱を伴った丸っこいマンガン鉱が見られました.相月の旧坑は二酸化マンガンが主でしたので,炭マンはメガネ橋の奥の三宝鉱山だろうと思う.

 

 渡川は前述の箇所から簡単に渡れました.渡った先は先人が付けたと思われる踏み跡が府道まで続いていました.

 

一息ついて,次のところに向かいました.

 

当地で知られている鉱物は黄鉄鉱・赤鉄鉱・蛋白石・重晶石・アロフェン・粘土鉱物などで,今回,褐鉄鉱と石膏をみました.

 

 

 

 


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