顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真152
―普通角閃石―
産地:熊本県菊池市原伊牟田 鞍岳(非売品).
鉄普通角閃石と苦土普通角閃石は肉眼での判別はほぼ不可能なので,一括して掲載します.
Magnesio-hornblende 苦土普通角閃石
[組成] □Ca2+2(Mg2+,Fe)4(Al3+,Fe)[(OH)2AlSi7O22] Mg>Fe
[結晶] 単斜晶系.柱面と庇面からなる柱状.長柱状・短柱状
などになる.例は少ないが繊維状や球状集合などにな
る.
[色] 緑色・暗緑色・灰緑色・暗褐色など.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 5~6
[比重] 3.10~3.28
[劈開] {110}に完全.
[条痕] 淡灰緑色・灰緑色.
[産状] 花崗閃緑岩・石英閃緑岩・斑糲岩・斑糲岩質ペグマタ
イト・安山岩・緑色岩起源の角閃片岩などの構成成分
として産する.まれにスカルン中にも産する.
Ferro-hornbelende 鉄普通角閃石
[組成] □Ca2+2(Fe2+,Mg)4(Al3+,Fe)[(OH)2|AlSi7O22] Fe>Mg
[結晶] 単斜晶系.柱面と庇面からなる柱状.長柱状や短柱状
などになる.
[色] 暗緑色・暗褐色・暗灰褐色など.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 5~6
[比重] 3.12~3.30
[劈開] {110}に完全.
[条痕] 淡灰緑色・灰緑色.
[産状] 花崗閃緑岩・石英閃緑岩・閃緑岩,斑糲岩・斑糲岩質
ペグマタイト・超塩基性岩・安山岩・デイサイトなどの
構成成分として産する.
アルミナ石の次は,造岩鉱物として比較的普通に含まれる普通角閃石にしました.広く火成岩・深成岩・超塩基性岩・変成岩に含まれていて,両者の判別は肉眼ではほぼ不可能なので,一括して取り上げました.
造岩鉱物で,あまり採集対象にならない鉱物だったようで,撮影するのに標本を探しましたが,なかなか良い標本がありませんでした.
始めの写真の石は,本来ハイキングに行ったのですが,阿蘇外輪山の北西にくっついている鞍岳の中腹でジャジャ降りに遭遇して,山頂を踏めなかった.その帰りに堰堤の上のようなところでサンプリングした普通角閃石です.現地に普通輝石もありましたが,サイズが小さくサンプリングしませんでした.角閃石の分離した結晶は小さいものほど結晶がシャープで,大きくなるほど行儀が悪くなるようです.
以下,深成岩中の角閃石です.
産地:大阪府柏原市国分青谷(非売品).
著名な青谷のスカルンに再訪した時にサンプリングした標本です.転石なので岩脈で入っていたものなのか,岩体で挟まっているのかはわかりませんが,内部が比較的新鮮でした.母岩は石英が肉眼的に少ないようで,閃長岩質のように見えました.角閃石は短柱状で,風化すると劈開の光沢が鈍くなってくるのですが,この標本はガラス光沢で光沢がありました.
顕微鏡下での撮影です.見た目黒っぽい角閃石ですが,顕微鏡下では濃緑色~帯青暗緑色で劈開面の光沢が強い印象の石でした.
産地:福岡県福岡市東区志賀島黒崎(非売品).
透輝石角閃石閃長岩の名称のラベルがついていたので購入した岩石標本です.福岡市の北東にある志賀島の東海岸に転石としてたくさんあった記憶のある現場です.学生時代に体力づくりのために海岸を歩いた時に小さなサンプルを一つだけ拾った.上の標本ももとは円礫だったのですが,表面がガサガサしていて内部が観察できなかったので,斫のハンマーでこぶしサイズに成形しなおしました.
顕微鏡下での撮影です.この範囲に石英がいなかったのはたまたまだったのか,肉眼的には含まれていませんでした.暗緑色ガラス光沢部が普通角閃石です.淡い緑色―灰緑色ガラス光沢で粒状の部分は透輝石.
産地:京都府京都市左京区八瀬花尻町(非売品).
ラベルに鉄普通角閃石と記載があったので,購入した標本です.全体として優白色の花崗岩質の岩石中に,黒色短柱状をなしています.
そのうちの一部に大きな結晶がありました.ここを顕微鏡下で撮影しました.結晶の周囲から緑泥石化しているような感じで,ガラス光沢を呈するのは中心付近だけでした.周囲の緑泥石化した一部に繊維状の緑閃石様の角閃石も見られました.
産地:京都府舞鶴市白滝 舞鶴鉱山暮谷鉱床(非売品).
斑糲岩質ペグマタイト中の巨大角閃石です.産地自体は明治~大正にかけてが最盛期で,昭和になってから横山鉱業部が操業した含銅硫化鉄鉱床で,塊状の硫化鉄鉱を稼業していました.斑糲岩質ペグマタイトは鉱山のある谷に多量にありました.黒色部が普通角閃石で,周囲の白色―淡紅色部は長石から変質した単斜灰簾石です.
産地:Canta district, Canta province, Lima region, Peru(非売品).
球状閃緑岩(Orbicular diorite)で,構成する鉱物に劈開の顕著な角閃石が含まれていたため,取り上げました.海外の産地の標本で,アンデス山脈の東側に点々と岩体が分布しているようで,この標本の産地もその一つなのかもしれません.暗緑色ガラス光沢の板状に見える部分が普通角閃石です.雲母のような質感の緑泥石や白色の長石,黒色板状の赤鉄鉱,黄緑色の緑簾石などを含んでいました.
産地:佐賀県多久市東多久相ノ浦(非売品).
海外産の球状閃緑岩をだしたので,国産の標本も掲載します.20年くらいまえに堰堤の転石としてサンプリングした石で,球の大きさは長いところで14~15cmありました.球の外側は普通の閃緑岩の部分もありましたが,全体的にはペグマタイト様になっていて,裏面にかなり大きな角閃石がついていました.
裏面.裏面の中央が水酸化鉄による茶褐色の染みがはいっていて,その中央付近に小さな晶洞があります.この中は茶褐色の水酸化鉄によって汚染されていますが,長石の半自形結晶で構成されていました.
斑糲岩質ペグマタイト中で一番長い角閃石の拡大です.一番長い角閃石は40㎜くらいありました.白色部は長石類です.