顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真153
―カルコファン鉱―
産地:79mine, Chilito, Hydenarea, Banner district, Gila county, Arizona, USA.
(非売品).
Chalcophanite カルコファン鉱
[組成] (Zn2+,Fe2+Mn)Mn4+3O7・3H2O
[結晶] 三斜晶系(擬三方).自形は六角板状および菱面
体を基調とする立方体や粒状など.多く粉末状.
六角板状の結晶が集合してバラ花状,放射状,
球状・ブドウ状・皮膜状・鍾乳状などの集合にな
る.
[色] 黒色・鉄黒色・褐黒色・暗赤褐色など.青色系の
錆び色がでることがある.
[光沢] 金属光沢~亜金属光沢.
[モース硬度] 2.5
[比重] 3.83~4.0(3.907~4.1となっている文献
もあり.
[条痕] 暗褐色~暗赤褐色.
[名称] 空気中で加熱したときに出る色が,銅鉱物の錆
び色に似ていることから,ギリシャ語の
「Chalkos」と「Phainestai」による.
[原産地] Passaic pit(Marshall mine, Passaic mine),
Sterling Hill, Ogdensburg, Franklin mining
district, Sussex county, New Jersey, USA.
普通角閃石の次はカルコファン鉱にしました.熱水鉱床の酸化帯のうち,亜鉛の酸化帯によく見られる二酸化マンガン系の鉱物です.異極鉱や菱亜鉛鉱などの二次鉱物が近くに出来ていることが多く,はじめの写真の標本も,緑色ぶどう状の菱亜鉛鉱の空隙にあったカルコファン鉱です.
本邦でも亜鉛の酸化帯に産出しているとのリストに含まれていますが,現物がほとんどなく,あっても轟石や繊維状のパイロリュース鉱の誤認だったりしたことがありました.
産地:Esperanza mine, Kaminiza mines, KM3, Lavrion mining district,
Lavreotiki, East Attica, Attica, Greece.(非売品).
次は,最近出回っている産地の標本です.褐色の褐鉄鉱や菱鉄鉱からなるほぼ塊状の集合中に針状結晶が繊維状集合をなしたパイロリュース鉱を伴って,板状の結晶をなしています.ごくまれとのことですが,パイロリュース鉱・カルコファン鉱の集合と母岩の境界付近に,暗赤褐色透明の微細な針状で,砒酸塩鉱物のウォールキルデル石を伴っているとのことでした.ウォールキルデル石が付いているかもと,期待して顕微鏡下で詳しく観察しましたが,付いていませんでした.
2枚目の拡大写真です.繊維状になっている部分がパイロリュース鉱(軟マンガン鉱)です.その周りにやや暗い灰黒色の板状がカルコファン鉱です.
2枚目の写真の標本の別の部位の拡大です.左上の方に六角板状を思わせる外形が出ています.どうもカルコファン鉱の結晶の上にパイロリュース鉱の繊維状集合が乗っているようです.黒色の集合の中に黄褐色の粒状の鉱物が付いていました.撮影当初はゴミと思って再び水洗いしましたが,取れませんでした.細かい菱鉄鉱かもしれません.
以下,国産の標本です.ごく最近まで,当方所有の標本リストを作っていました.国産のマンガン関係の標本だけで 今のところ945点ありました.そのうちにカルコファン鉱も含まれていて,2点ヒットしました.どちらもずいぶん昔に分析をしたサンプルです.サンプルなので,顕微鏡下で見劣りしないか心配でしたが,雰囲気だけでも,と思って掲載します.
産地:静岡県下田市蓮台寺大沢 河津鉱山.(非売品).
金・銀・テルルの産出で有名は熱水鉱床の酸化帯に出たカルコファン鉱です.やや肉眼的な長柱状に見える部分は異極鉱です.カルコファン鉱はその上に乗っている黒色粉末状とのことでした.
産地:岐阜県関市 洞戸鉱山杢助坑.(非売品).
こちらも分析用のサンプルの一部だそうで,チップの表面に赤矢印で指示してありました.異極鉱や亜鉛を含んだ粘土鉱物の脈を伴う母岩の空隙にあった黒色部を拡大したところ,上の写真を撮影できました.菱面体から正方複錐に似たような結晶の部分もあって,何かほかの亜鉛の鉱物も伴っているかもしれません.