昨日の続き.
湯井の給水塔から行者堂を経て,山頂に立った.山頂は展望は悪いが風が通って幾分涼しい.30分ほどしか登っていないのに汗が噴き出してきて,特に背中はベタベタ.少し乾かそうと思い,陽だまりを探してウロウロするが見つからない.素っ裸になって表面だけでもと思い,肌着を脱ぐ.幸い登山者は筆者だけだったのでよかった.10分や20分で乾くとも思わず,仕方なく気持ち悪い上着を着て,堂徳山へ向かった.
堂徳山は地形図に掲載は無いものの,この尾根では最高地点で,このあたりの地籍の3境界点になっている.ここを過ぎれば一旦車道のあるオオタワに出て,この先の尾根には名前のある山はおろか道すらない.
山頂から小さなこぶを2つほど越えると堂徳山に着く.標高点は無く等高線が440mまで記載されているので,それくらいはあるのだろう.
行者山は狭い山頂だったが,こちらは広い山頂で雑木が多いもののスペースはある.尾根道のてっぺんに地籍の境界を示す石柱があり,以前はなかった山名プレートが数枚見られた.展望は無く,薄暗い感じがする.
堂徳山(約440m)山頂.赤く塗られた石柱が地籍の3境界を示す.
適当に休憩をとって元来た道を戻り,行者山山頂から南の尾根を辿る.三角点からは一気に高度を下げ,気分のいい尾根道になってきた.尾根の両側は深く抉られたような地形が多く,このあたりから石切場群の入り口のようだ.
尾根道.このあたりの山は赤松が多く,松茸シーズンは全山立入禁止になる.
風化が進んでいる所為か,尾根は痩せてきて,この尾根も木の根っこだらけになってきている.
ヤブ山を覚悟していたが,尾根道ははっきりしていて石切場が現役のころから変わっていないことを帰ってから親父に聴いた.
昔は下草を刈って半ば公園のようにきれいにされてたそうだが,「いまはヤブになっていてハメがいるから入るな」とよく子供のころに言われていた.ヤブの程度は軽く,この程度なら苦にもならない.
新緑が映えていい尾根になっていた.
尾根が3方向に分かれるところで少し休憩をとった.東の尾根を採ると古いどこかの会社発行の地図に載っていた「牡丹餅山」に至るはずだが,今回は地形図を携行しておらずやめておいた.
「牡丹餅山」の先の尾根にも「丸山」があって,こちらも未訪だ.尾根が抉れているところに石切場があった.
平坦な尾根の直下まで石切場があり,クサビの痕がはっきり残っていた.
石切場のクサビの痕.
尾根からの搬出は木馬道のようなものを作って,ロープあるいはワイヤーで滑らせておろしていたという.(昭和30年代頃)
裏に大谷鉱山が稼業していて,10トン車が行きかっていたのを尾根から見ていたことも後から聞いた.
尾根は雑木から一部植林に代わり,金岐山(かなげやま)を越したことに気づいた.尾根の東麓は金岐という地名が南北に3つ連なっていて,古墳も多く,妙見宮まであり,金属との深いかかわりがあると思われる.また,丹波国国府跡の比定地の一つがこの北にあり,国府があったような小字が残っている.
子供のころ金岐にあった祖母の畑の下を耕すと,カラミ(鉱滓)が出てきたことがあった.このあたり一帯は古代の製錬所跡だったのかもしれない.
尾根を南下し,いったん鞍部に下る.小高いピークが地形図の288m地点のようで,これの手前に変な地形があった.石切場でもなく,鉱山の旧坑でもない.おそらく城跡の郭の一部のようだ.今回下山予定の太田集落の北側に城跡がいくつかあるのでこれもそれの一部かもしれない.
主郭か?. 尾根を切るように段になっている.手前のコブにも似たような地形があり,288mピークの次のコブにも曲輪のような地形が残っていた.
城跡?から下っていくと少し視界が開けて,在所の建屋が近くなってきているのに安堵感を覚える.地籍調査の赤テープを頼りに下っていくと,また石切場がたくさんでてきた.尾根上にあったものよりも規模が大きく,石垣が組んであった.そばにある石は黒雲母花崗岩のようで,粒が細かい.鉱物をやっているものにとっては粗いペグマタイトのようなもののほうがいい.転がっている廃石は粒が細かいのであまり面白くなく,写真を撮ってしばらく眺めていた.
太田在所の裏にある石切場跡.写真奥が少々突っついてあった.この写真休憩しているときに撮ったものではなく,着いてすぐに撮ったためピンボケしている.
石切場の下の方はヤブになっていたが,建屋が近くに見えているため,突っ切ってみることにした.ハメのたくさんいそうな竹藪で,慎重に下っていくと神社の裏に出た.参道のようなものは無く,民家横の径を探して下ることができた.
迎えの連絡をして,吉川の運動公園まで歩いて今回の山行を終えた.不思議なことに,従来ハメ(口丹波でマムシの意)の多いこの山域で,今回はヘビを全く見なかった.3月の涅槃日にハメ除けはいつも戴いてくるのだが,これのおかげにしておきたい.
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