顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真132
―アルデンヌ石―
(表面)
(裏面).
産地:Salm-château, Vielsalm, Luxenbourg, Wallonia, Bergium.(非売品).
Ardennite アルデンヌ石
[組成] Mn2+4(Al,Mn3+,Fe3+)6[(O,OH)6|(As5+,V5+)O4|(SiO4)2|Si3O10]
Ardennite-VはV>As
[結晶] 直方晶系.自形は直方柱状ないし板状.柱面に条線が発達
するものがある.簾状および放射状集合などになる.
[色] 灰黄色・黄色・黄褐色・黄橙色・橙色・赤褐色など.
[光沢] 亜金剛光沢~ガラス光沢.
[モース硬度] 6~7
[比重] 3.69~3.75
[劈開] {010}1方向に完全.{110}に明瞭.{001}方向に裂開.
[条痕] 淡褐色~白色.
[原産地] As種:Salm-château, Vielsalm, Luvenbourg, Wallonia, Bergium.
V種:Sparone, Metropolitan city of Turin, Piedmont, Italy.
[名称] はじめに発見された原産地であるベルギーのアルデンヌ山地地
域に因む.
次は,アルデンヌ石にしました.
25年くらい前に購入した標本です.当時は今ほど鉱物に詳しくなくて,白っぽい下地に,黄色い(劈開で)キラキラした鉱物と云った印象で,永らく標本箱に眠っていました.掃除を兼ねて整理していたところ古いラベルのまま,なかば放置したような感じで,古新聞に埋もれていました.産地を調べてみると原産地標本のようで,改めて標本にするため掃除して,次いでに顕微鏡で拡大写真を撮影しました.
アルデンヌ石は現在,Ardennite-As(砒アルデンヌ石)とArdennite-V(ヴァナジンアルデンヌ石)に分けられていて,肉眼ではどちらの種か判別できません.今回は分けずに紹介します.
1872年に発見されたベルギー南東部の原産地付近は,標高200m~500mくらいの山地で結晶片岩が分布しているようです.原産地ではマンガンに富んでいる赤鉄鉱片岩を切る石英脈中に産したとのことで,上の標本の黒色部も赤鉄鉱でした.ほかの産状は無いようで,どこの産地の標本も結晶片岩中に入っているようです.色は黄色系統と赤色系統があるようで,光沢は亜金剛光沢とかなり強い方です.顕著な劈開があって,これが簾状に集合して,光の反射でキラキラして見えます.
共存鉱物は赤鉄鉱・石英・満礬石榴石・ブラウン鉱・紅簾石・雲母類など.
以下,顕微鏡下での拡大写真です.
黄褐色―黄色の板状部がアルデンヌ石.黒色粒状は赤鉄鉱です.
黄色―黄褐色板状部がアルデンヌ石です.黒色粒状は赤鉄鉱.濁った感じの灰白色―白色ガラス光沢部は石英です.
次に国産の標本です.本邦では主に,中央構造線の南側や関東北西部などに分布する三波川帯の結晶片岩中より産地が知られています.このほか長崎帯の変成岩中にも知られています.マンガンに富んだ紅簾石片岩中に黄色―黄褐色の層をなす産状で,この層に沿ってうまく割ると,繊維状のアルデンヌ石が観察できます.
産地:群馬県藤岡市鬼石三波川月吉(非売品).
ヴァナジンアルデンヌ石という名称のラベルが付いた標本です.三波川帯の紅簾石―石英片岩中に黄色―黄褐色の層をなしています.繊維状―簾状の晶癖を見るために,層に沿って割ったのですが,晶癖はあまりはっきりしませんでした.
産地:長崎県長崎市琴海戸根町戸根郷 戸根鉱山(非売品).
こちらは砒素アルデンヌ石という名称で購入しました.10枚目の写真がそうで,11枚目の繊維状の晶癖が出ている写真の標本は19年くらい前,筆者が学生のころに訪問してサンプリングした石です.上下の黒色金属光沢部はブラウン鉱です.
産地:長崎県長崎市三重田町杉谷川河口北露頭.(非売品).
こちらも19年くらい前に,長崎市向郷のヨチギレ海岸に行ったときに,西樫山海岸に出ているアラレ石の産地に行く途中で,河口付近をぶらついていた時に見つけサンプリングした標本です.すぐ横の露頭から外れたようで,マンホールくらいの大きさの転石になっていました.
夏休みで帰省した時に,判定してもらったところ,アルデンヌ石だろう.とのこと.ラベルをアルデンヌ石にしました.夏休みのあとしばらく雨天で訪問できずに,冬休みまで放置していました.あとで訪問したところ転石や露頭も行方不明になっていました.
写真は黄色―黄褐色の繊維状に見える部分がアルデンヌ石で,黒色部が赤鉄鉱,赤色の部分は紅簾石(あるいは含マンガン緑簾石).白色部は石英です.
12枚目の標本の裏側についていたアルデンヌ石です.右下の方にも少しついています.柱状の晶癖がしっかり出ていたので,撮影しました.