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いくつかの研磨した石249

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研磨石

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつかの研磨した石249

 奈良県吉野郡川上村入之波栃谷 日の出鉱山(入之波鉱山)のテフロ橄欖石と菱マンガン鉱からなる炭マンを一面研磨しました.3~4年前の新春交流会で購入した標本です.この付近は5~6年くらい前?(ちょうど川上村の役場の北側が山体崩壊して通行止めになっていた頃)に探しに入りましたが,手前の川が増水していて渡れず,ダム湖の西側にある豊隆鉱山にだけ寄りました.標本はこの後に購入しました.

 秩父帯の堆積岩中に胚胎する層状マンガン鉱床で,若干の熱変成を受けているようです.元ラベルは「テフロ橄欖石」の名前で挙げられていて,括弧書きで(菱マンガン鉱中の灰色ならびに褐色の部分)と併記されていました.いつも見る丹波帯の層状マンガン鉱床で見るテフロ橄欖石の外観が,多少異なるので,裏面を一面研磨しました.

 

(研磨) ラベルの表題通り,見た目ではテフロ橄欖石をと菱マンガン鉱からなる炭マンで,軟らかいと踏んで磨り始めました.研磨面の中央がやや尖っていて,そこを中心に平滑にしようと思って試みましたが,前方・後方と傾いて段差が出来て,なかなか平滑になりませんでした.もともと軟らかい鉱物の集合でしたので,あまり苦にならず,あっち向けに磨ったり,こっち向けに磨ったりしているうちに,未研磨の面とだいたい並行になりました.

    上の写真の黒色部は相当軟らかいようで,二酸化マンガンか何かの染みと思っていたところ,試しにネオジム磁石を近づけました.すると強く引き寄せられました.黒色の部分は二酸化マンガンの染みではなく,ヤコブス鉱でした.ヤコブス鉱の黒い集合の中に,帯黄真鍮色金属光沢の部分があって,黄鉄鉱が含まれていました.

    荒砥ぎはここまでにして,中砥ぎに移りました.炭マンのような比較的軟らかい鉱物の集合は,目のやや細かい大村砥のような砥石で少し磨ったほうが,仕上げの時に光沢が出やすいという,なかば経験則のようなものがあって,今回も中砥に大村砥で少し研磨しました.ちょっと粒子が荒かったようで,岡山県の白水鉱山の南付近の県道峠の露頭で拾った,やや風化した凝灰岩に替えて,磨ったところ,若干光沢が出てくれるところまで磨れました.

    仕上げははじめに青砥でどんな感じになるか磨ったうえで,黄白色の砥石で仕上げしました.この集合でテフロ橄欖石の含まれている部分が硬いらしく,この部分だけ若干盛り上がったようになっていました.局所的でしたので,1000番手のペーパーで,盛り上がっているように見える部分を集中的に磨りました.まだ少し盛り上がっていたので,そこを多少風化の足りない黄色の砥石の木っ端で磨り上げました.

 

 

(以下,顕微鏡下での観察です)

 

 

 

 

 

 

 前述のとおり炭マンの中の黒い染みのような鉱物はヤコブス鉱でした.灰緑色や褐色の部分はテフロ橄欖石.灰色・灰白色・灰桃色部は菱マンガン鉱.

 

 

初めの写真の中央よりやや左に見える黒色部の拡大です.研磨しているときに若干の硫黄臭がしていて,黄鉄鉱か何かが含まれていると思っていたところ,やはり入っていました.ただこれだけでは量的に少ないので,普通ならほとんど臭いはしないはずなので,ほかになにか混じっているかも..と思っていたところ,ヤコブス鉱の塊状部の周りの霞がかったような灰緑色部をペーパーで少し磨ってみました.やはり若干の硫黄臭がしました.灰緑色部は微粒の閃マンガン鉱かもしれません.黄褐色に見える部分はテフロ橄欖石.灰白色は菱マンガン鉱.

 

 

 

黄緑色―灰色のテフロ橄欖石の部分の拡大です.黒色脈はヤコブス鉱からなっています.

 

 

こちらもヤコブス鉱からなる脈の部分です.褐色のテフロ橄欖石を伴っています.その脈を取り囲むようにピンク色の粒の粗い鉱物が脈中に挟まっています.

 

 

こちらの白色の脈は菱マンガン鉱でした.脈以外のピンク色部も菱マンガン鉱で,灰緑色のテフロ橄欖石を伴っています.

 

 

11枚目のヤコブス鉱の脈のそばを取り囲むように切っていたピンク色の脈の延長部を拡大しました.仕上げの砥石でこの部分が非常によく砥石にあたっていて,強い光沢が出ています.この付近が一番硬いので,別の鉱物と思っていたら,ばら輝石系の鉱物のようでした.以前まではこの手の石は単にばら輝石にしていましたが,最近になって,ヴィッティンキ石と鉄ばら輝石と本来のばら輝石に分けられてしまって,肉眼ではほぼ判別できませんので,ばら輝石系の鉱物という表現にしました.

 

 

 

 

 

 

 


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