研磨石
いくつかの研磨した石248
大阪府池田市畑 秦野鉱山の緑簾石中の閃亜鉛鉱を含む集合を一面研磨しました.20年くらい前にサンプリングした標本です.秦野鉱山はスカルン系の鉱床で,明治中期くらいにはあったらしく沿革のはっきりとしない鉱山です.鉛を稼業していたという話もあって,古くは銀鉛山だったのかもしれません.おそらく別鉱山と思われるのですが,池田銀山というのがあって,この鉱山を指すものか,この鉱山を含む五月山の尾根一帯を指すのかは不明ですが,若干の方鉛鉱が見られるので,ここも含まれるのかもしれない.上の標本は石澄の滝への道と,鉱山への道の分岐近くの茂みにあった石です.緑簾石と閃亜鉛鉱のコントラストがキレイでサンプリングしました.しばらく標本箱の中にしまってありましたが,裏面が酸化被膜に覆われているうえ,平坦でしたのでこの面を一面研磨しました.
表面(未研磨面)の写真です.塩酸で少し処理しました.緑色柱状の緑簾石の自形が入っていました.顕微鏡下での撮影.
こちらも未研磨面の顕微鏡下での撮影です.緑簾石に包まれる閃亜鉛鉱からなる集合です.肉眼的にほかの硫化鉱物は含まれていないようでした.
(研磨)金属を含む集合なので,石英や石榴石の混入が肉眼的に含まれていないように見えたため,一気に磨り上げました.中途半端に石榴石が入っていてるとその部分だけが残ってしまうので,平坦にするのが大変ですが,この石には入っていませんでした.仕上げははじめ黄土色の砥石を使用していたのですが,思ったより光沢が出ず,青砥に替えて磨ったところ光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
黄緑色―緑褐色短柱状が緑簾石.赤褐色に見える部分は水酸化鉄か何かの影響で染みのようになっていますが,緑簾石でした.鉄黒色金属光沢部は閃亜鉛鉱.それらの粒の間を充填する白色部は方解石.白色部は2通りあるようで,一つは方解石,もう一つの繊維状になったものがあって珪灰石と思いましたが,酸による反応で発泡したため,霰石のような炭酸塩のようです.
緑簾石(Epidote).方解石に包まれる部分に周囲の緑簾石に対して比較的大きな(長さ約3mm)結晶がありました.
磨っているときには気づきませんでしたが,中央やや左の反射して光ったようになった部分に石榴石が入っていました.
こちらにも石榴石が.かなり小さいので,磨っているときの抵抗があまり感じませんでした.
閃亜鉛鉱の拡大です.ほぼ閃亜鉛鉱からなっていて,灰白色―暗灰色の細長い輪郭をしているのは割れ目を充填する方解石でした.部分的に磁鉄鉱を含んでいるようで,磁石を引き寄せるところがありました.
方解石中の緑簾石の小さな粒の周りを取り囲んで,緑黒色の針状の鉱物がまとわりついていました.ほかの部分にも著量入っていて,板状のところがありました.未研磨の面の一部を欠いて観察したところ,同様の鉱物が入っていて,スティルプノメレンでした.鏡下では海苔がへばり付いたような感じの鉱物で,スカルンの山ではちょくちょく見かける鉱物ですが,北摂ではあまり見ない鉱物です.あるところには大量にあって,結晶片岩から産するものなど大量にみられるものもありますが,産状が変わるとこんなものです.文献にはスティルプノメレンの記載がありましたが,現物は初めてでした.