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鉱物の顕微鏡写真120 ―鋭錐石―

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顕微鏡写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉱物の顕微鏡写真120

―鋭 錐 石―

 

 

 

産地:京都府京丹後市峰山町鱒留大呂 磯砂鉱山第一鉱体(非売品).

 

 

 

Anatase   鋭 錐 石

[組成]  TiO2

[結晶]  正方完面像.自形は正方複錐・正方板状.しばしば両錐になる.あま

      り大きな結晶は無い.双晶面ε{112}の接触双晶がある.

[色]    無色・白色・灰色・灰黄色・黄色・黄褐色・帯緑黄色・淡褐色・帯桃褐

      色・橙褐色・赤橙色・暗橙色・赤色・暗青色・灰黒色・黒色など.

      表面が錆びたような色になることがある.

[光沢]  亜金剛光沢~金属光沢・ガラス光沢.

[モース硬度] 5.5~6

[比重]  3.79~3.97

[劈開]  {001},{011}3方向に完全.

[条痕]  白色・淡黄色.

[同質異像鉱物] 板チタン石(Brookite 直方),ルチル(Ritile 正方),

           赤荻石(Akaogiite 単斜),リース石(Riesite 単斜)

[原産地] Saint-Christophe-en-Oisans, Grenoble, Isère, Auvergne-

             Rhône-Alpes, France.

ほか,酸に不溶.加熱して冷却するとルチルになるらしい.

 

 

 久々の顕微鏡写真シリーズです.

 

 二酸化チタンの鉱物で,結晶がシャープで結晶が小さいながらも人気のある鉱物です.いくつかの多形(同質異像)鉱物が存在する鉱物で,一般的にみられるのが板チタン石とルチルです.あと赤荻石とリース石が多形の鉱物としてあって,どちらも隕石の衝撃で変成された,インパクタイト中より見つかった鉱物だそうです.ほかに2種類くらい名前のついていない鉱物があるようです.

 ページの先頭は海外産の標本を使用したかったのですが,肉眼サイズの結晶が北欧から出ていて,サンプルとしては所有しているのですが,結晶が大きくなると輪郭がルーズになるようで,写真写りがあまりよくありませんでした.今回の先頭の写真は大呂(磯砂鉱山)の鋭錐石にしました.当地は宮津花崗岩中の脈性ペグマタイトで,長石や珪石が稼業された現場です.ペグマタイト質の珪岩の一部に熱水の通ったようなところがあって,その一部やいわゆるザンソチタン石に伴って多産しました.写真に使用した標本は白色の粘土を伴う短い水晶の表面についていました.黄色っぽい板状の鉱物は板チタン石で,多少の粘土が残っています.

 

ほかの産地の標本です.今回はすべて顕微鏡下で撮影しました.

 

産地:Hopffeldboden, Hopffeld area, Neukirchen am Groβvenediger,

       Zell am See district, Salzburg, Austria(非売品).

 

 大きな結晶がルーズであるために海外産を割愛しそうになりましたが,小さな結晶で,表面が錆びたような鋭錐石がありましたので顕微鏡下で撮影しました.当地は標高2200m~3050mくらいの山地の谷間にある現場だそうで,ミアロリティックな晶洞を伴う片麻岩中より多々の鉱物を産しているようです.白色部は石英,青色味を帯びた黒色,条線が観察できる結晶が鋭錐石です.そばにくっついている黒色板状は雲母類です.

 

産地:京都府京丹後市久美浜町布袋野 カンナ山金山.(非売品).結晶の大きさは上下約1.5㎜.

 

 以前にも少し触れました.府県境に近いところに位置するカンナ山金山の鋭錐石です.白雲母を多量に伴うグライゼンのような岩石より産しました.この石は標本成形時に打撃で外れた結晶を回収したものです.強い光源のもとで撮影したところ緑色味を帯びていました.

 

産地:京都府亀岡市畑野町千ヶ畑西山 通称「広野」(非売品).

 

 購入品です.ミアロリティックな晶洞を含む花崗岩中より産しました.筆者も現場に赴いたことがありますが,初見だったため購入しました.灰緑色―暗灰緑色鱗片状の緑泥石上に黒色の粒状をしています.結晶自体は非常に小さいものです.

 

産地:京都府京都市左京区浄土寺大山町堰堤の横(非売品).

 

 筆者は学生時代にサンプリングした標本です.現場は銀閣寺の裏あたりで,非常に多くのハイカーが通り過ぎる道の近くでした.花崗岩質の母岩に上下約2㎜の光沢の強い結晶が入っています.強い光源のもと観察したところ俄かに青色味を帯びていました.黒色部は緑泥石類.白色は長石.灰白色半透明は石英.

 

産地:長崎県対馬市厳原町西里白河 成相鉱山(非売品).

 

 購入品です.鉱山は珪化した頁岩中の銀に富む方鉛鉱粘土石英脈を大正年間に操業されたそうです.白色の母岩の割れ目のようなところを脈状に赤色の粒が集合していて,沿って割ると,赤色の鉱物が出てきました.当初は赤い鉱物はルチルと思っていました.いろいろ文献で見ているとこの赤い鉱物が鋭錐石であるという記載があって,改めて顕微鏡下で観察したところ先の尖った両錐の鋭錐石を見つけました.あまり本邦では見たことがなかった産状でした.以下はほかの部分の拡大写真です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結晶がかなり小さいので,撮影に難儀しました.白色の母岩上の赤色―赤褐色部が鋭錐石です.ほかに少量の黄色を呈するくさび石,灰緑色の緑泥石などを伴っていました.

 

 

 

 


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