研磨石
いくつかの研磨した石246
兵庫県美方郡香美町本見塚 弘仙鉱山の銀黒を一面研磨しました.当地はテルル銀鉱やテルル鉛鉱などのテルル鉱物を産することで著名な,竹野鉱山や金銀鉱床の金原鉱山の町界尾根を西に越えたところにある,似たような金銀鉱床です.どうも古くから稼業されたらしく,当地にいたる川筋にカラミが見られ,文献で追跡したところでは,明治30年頃まではあったようです.上のサンプルは,10年くらい前に探索に行った際に,ズリなのかただのガレなのか判別できないくらい荒れた斜面にいくつか引っかかっていた鉱石質のサンプルです.ガレの上の方に坑口らしきものが見えたのですが,斜面が急で滑落が怖いので止めておきました.サンプルはこれと拳サイズの黄銅鉱で,後者は黄銅鉱に少量の黄鉄鉱伴い,石英脈に埋もれていました.前者のサンプルは泥に覆われていましたが,石英中に黄鉄鉱がチラっと見えたので回収したに過ぎず,帰ってから洗い流すと,銀黒っぽい石が帰ってからわかりました.当地への訪問はこれ1回きりで,兎に角ヤマビルが多く,このときも何箇所かやられました.
最近になって整理していたところこの石が出てきて,水酸化鉄による染みに覆われた面を研磨しました.
(研磨)前述のとおり,水酸化鉄鉱物に覆われた面を一面研磨しました.マッチ箱サイズの石でしたが,水酸化鉄を取って石英の見えるところまで磨ってみると,大きさは半分以下になっていました.石英の内部にチラっと方鉛鉱の粒が見えたので,途中でしたがここでやめておきました.仕上げは青砥で十分光沢が出てくれました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
凝灰岩か何かを交代したような石英脈です.河原に落ちていた石は主に花崗岩と安山岩ないし安山岩質凝灰岩で,玄武岩が変質したような緑色岩も多少ありました.大粒の黄鉄鉱の筋に伴われる灰黒色の筋が銀黒様の部分です.
銀黒様の筋の部分の拡大です.黄色は黄鉄鉱.方鉛鉱らしき輪郭の粒が見られ,ほかの粒は判別できませんでした.
中央右上に輝銀鉱らしき粒が.小さすぎてよくわかりませんでした.多少青色味がかっています.
こちらは,研磨面のすぐ裏側(未研磨面)の割れ目にあった自然銀です.研磨中に端の方が振動でパラパラ割れてしまい,中途半端に罅が入っているのにくっついて取れない部分があって,ヘラを使ってはがしてみました.はがした面に微細ですが,自然銀がついていました.
黄鉄鉱の多い部分の拡大です.
銀黒様の部分は単に硫化物の集まりの可能性は捨てきれませんが,肉眼的な銀鉱物を含んでいましたので,銀鉱石なんだろうと思います.母岩のほかの面に,方解石と灰緑色の緑泥石を含んでいました.