研磨石
いくつかの研磨した石242
和歌山県紀の川市西脇 飯盛鉱山の結晶片岩中のマンガン鉱のレンズを一面研磨しました.もともと切断された状態で入手して,真ん中が妙に凹んでいるために,研磨が後回しになっていました.やや時間をかけて磨っていたところ,おおむね平坦になったことを確認し,青砥で仕上げをしました.
当地は和歌山県内有数の銅鉱床で,有名な別子銅山と同じ型の含銅硫化鉄鉱床です.中央構造線の南側に広く分布する三波川結晶片岩中に胚胎し,含銅硫化鉄鉱中の銅を稼業対象にしていました.やや規模の大きな鉱山なので,含銅硫化鉄鉱だけではなく,上のようなマンガン鉱も産しました.
レンズを取り囲む結晶片岩は,暗灰緑色―灰緑色を呈する角閃石類と石英で構成されていて,黄色味の強い橙色の満礬石榴石を伴っています.中央の褐色部は見た目でテフロ橄欖石と思っていたのですが,黄色の満礬石榴石のほかにマンガンエジリンがあるらしく,細かい黄鉄鉱と磁硫鉄鉱の微細な粒が集合していて,このような色をなっているようです.ピンク色の部分は全体的に「ばら輝石」ですが,割れ目を観察すると劈開の感じが異なところがあってパイロクスマンガン石を混入しているかもしれません.またこの「ばら輝石」を切って淡桃色―白色の菱マンガン鉱が入ってきていました.
(以下,顕微鏡下での観察です)
標本の中央部にあった褐色の不定形塊状部はやはり,満礬石榴石に黄鉄鉱や磁硫鉄鉱の微細な粒による鉱染のようでした.
マンガンエジリンの部分の拡大です.茶褐色―赤褐色部がそれで,僅かに傾けて光に反射させると,硬度の違いでなんとなくその存在が判りました.石を切る白色っぽい脈は菱マンガン鉱.
黄鉄鉱の拡大写真です.白色―桃色部は菱マンガン鉱.黄色は満礬石榴石.ピンク色は「ばら輝石」類です.
こちらはマンガン鉱のレンズと母岩の結晶片岩との境界付近の拡大です.青緑色に見えるのは石英.その左にある赤褐色と銀白色金属光沢に見えるのは赤鉄鉱.さらに外側に黄色の満礬石榴石.結晶片岩の側にも石榴石があって,レモンイエローに近い色彩をしています.その中に白っぽい金属光沢の鉱物があり,こちらも赤鉄鉱でした.
角閃石片岩の部分の拡大です.青緑色の角閃石を主とし,黄色系統の石榴石を伴っています.赤褐色部は赤鉄鉱.
この鉱床からマンガン鉱物として,ブラウン鉱や吉村石などの鉱物の報告があるようです.当地の吉村石も所有していますが,もっと粗いマンガンレンズに入っていて,角閃石をたくさん伴っていました.この石には入っていないようでしたが,下の不明鉱物がありました.
不明鉱物.赤褐色粒状の部分です.黄色は石榴石.淡桃色は菱マンガン鉱のようです.粒が小さすぎてよくわかりませんでした.