顕微鏡写真
鉱物の顕微鏡写真119
―五水灰硼石―
灰桃色部.布賀に産した初期の五水灰硼石(非売品).
産地:岡山県高梁市備中町布賀 布賀鉱山(非売品)
Pentahydroborite 五水灰硼石
(1962年に記載された鉱物ですが,当初は結晶水が5つであると思われていたため,この名になった.のちに結晶水は2つに改められた).
[組成] CaB2O(H)6・2H2O
[結晶] 三斜晶系.
[色] 無色・白色・灰色など.内包物によって淡紅色・灰桃色・茶褐色・黒色
などの色になる.
[光沢] ガラス光沢.
[モース硬度] 2.5
[比重] 2.5
[劈開] 無し.
[条痕] 白色.
酸に可溶.
[原産地] Norofrolovskoye B-Cu diposit, Tur'insk Turya river,
Turinsk-Auerbakovsk ore field, Serovsky district, Sverdlovsk oblast,
Russia.
次は五水灰硼石にしました.
ロシアの首都モスクワから東北東約1000㎞ほどのシベリアの鉱山より発見されました.世界的には珍しい鉱物で原産地を含めて5箇所くらいで知られているようです.写真に撮るために原産地の標本を探したのですが,無かったので国産品を中心に写真に撮りました.
はじめの石は1978年ごろに採集された標本です.五水灰硼石の塊状標本でサイズの大きなものを探していたところ,この標本が知人より恵与されました.
灰桃色の大部分が五水灰硼石で,淡褐色のフロロフ石を伴っていました.灰桃色塊状の部分に接するザラメのような白色部は方解石でした.それとは別に標本の裏側に灰色―淡褐色の塊状の鉱物が接していて,灰緑色―灰黄色粒状のベスブ石を伴っていました.
灰桃色塊状の五水灰硼石と白色部との境界の拡大.
以前にこの白色部が気になってXRDでチェックしたことがあって,ゲーレン石に近い解析値でした.多分,岡山石だろうとのことでした.
2枚目の写真は通称「田邊露頭」と呼ばれる晶洞が見つかったあとで入手した標本で,深い青色の逸見石を伴っています.五水灰硼石は写真の右側を占める暗い半透明の結晶の部分です.左側に白く写っているのは方解石でした.
現場には過去3回入ったことがあって,巡検にも運よく参加できました.あのときにもっと坑内の写真を撮っておけば..と悔やんでいたのですが,数年後に再度入ることが出来ました.
右上の方に写っている暗褐色―灰褐色のレンズが五水灰硼石からなっています.産状はこんな感じで,周囲はザラメのような感じの大理石でした.
以下,顕微鏡下での拡大写真です.
いろいろな色の五灰硼石のセットにした標本です.深い青色の逸見石や淡褐色のフロロフ石などを伴っています.(非売品).
二枚目の写真の拡大です.深い青色が逸見石で,淡黄色に見える結晶が五水灰硼石です.
五水灰硼石は見た目の割には持ってみると軽い石で,国産の鉱物標本ではなかなか無い特徴があったので,面白く塊状のものばかりを集めていました.
はじめに掲載した写真の標本は産状標本として置いていて,今回これを更新するために掃除したうえで撮影しました.